
小学生のころ、学校へ行く近道があった。
大人は通れないような、細い細い路地裏の先、ドブ川の縁をたどる道だ。舗装もされていないその場所は、足を滑らせれば落ちてしまいそうで、けれど子どもの体にはちょうどよく馴染んだ。
その川べりには、シャガが群れて咲いていた。春になると、薄紫とも水色ともつかない花が一面に広がり、道なのか花の中なのか分からなくなるほどだった。
私はその中を、かき分けるようにして進んだ。花を踏まないように気をつけながら、それでも少し急ぎ足で、学校へ向かう。誰に教えられたわけでもない、子どもだけが知っている通り道だった。
危険というほどではないが、大人は通れないすごく細い道。けれどあの細さも、足元の不確かさも、ドブ川の匂いも、すべてがひとつの秘密のようだった。
今思えば、あれは近道というよりも、子どもにだけ許された時間の抜け道だったのかもしれない。