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2026.06.09
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カテゴリ:日々のこと




公園に赤いバラが咲いている。「赤い」といえば思い出すことがある。
私が幼稚園に入園する前の頃の記憶である。

家には、赤いワンピースを着た人形がいた。名前はゆりちゃん、背中にボタンがついていて、それを押すと、ぎこちない声で喋り、そして歌う。子どもにとっては、それはただのおもちゃではなく、小さな友達のような存在だった。

けれど、ある夜を境に様子が変わった。

誰も触れていないはずなのに、人形がひとりでに喋り出し、歌い始めるようになったのだ。静まり返った夜の中で、その声は妙に響き、家族を何度も目覚めさせた。最初は偶然かと思われたが、それは一度きりではなかった。

同じ頃、私には夢遊病のような症状が現れ始めたという。夜中に起き出して歩き回る、子どもには珍しくない現象だ。

今になって思えば、人形の異変もただの接触不良だったのだろう。古い電池や内部の不具合で、勝手に作動してしまうこともある。夢遊病もまた、成長過程における一時的なものだったに違いない。

夜は、誰も触らないようにタンスの上に置かれたり、押し入れに入れられたりしたが…

その人形は電池を抜いても歌うので、両親の手によって捨てられてしまった。

私にとっては、寂しい出来事だった。怖かった記憶よりも、一緒に過ごした時間のほうが、なぜか強く心に残っている。

赤いワンピースの人形は、今でもときどき、記憶の中で、かすれた声で歌っている。



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最終更新日  2026.07.05 18:59:52
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