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カテゴリ:節約お弁当記録
窓を開けても風はもうぬるく、ご飯の炊ける熱で部屋はさらにむっとする。エアコンをつけた方がいい。何もしなくても汗ばんでくる。そんな朝でも、弁当だけは作らなければならない。とりあえず冷蔵庫を開けるところから一日が始まる。 今日は冷凍の焼売にした。 こういう日は、もうそれで十分ということにする。レンジの中で光に照らされながら温まる焼売をぼんやり眺め、その間にコーヒーをひと口飲む。 空きっ腹にコーヒーを飲むたび、「これが胃に良くないんだよな」と頭では分かっている。それでも朝の一杯だけはやめられない。 作り置きのきんぴらを詰め、きゅうりは浅漬けの素でもむ。最後にプチトマトを入れる。一応、緑と赤は確保できた。 弁当というものは、油断するとすぐ茶色くなる。 茶色はおいしい色なのだけれど、見た目はどうにも地味だ。だからほんの少しだけ色を足す。それだけで「ちゃんと作った感」が出るのだから不思議である。 高校生のころ、友達のお弁当が少しうらやましかった。 小さなハンバーグには旗みたいなピックが刺さっていて、卵焼きはきれいな四角。ブロッコリーは鮮やかな緑で、色とりどりの具を巻いた海苔巻きは、お花畑みたいに見えた。 それに比べて、うちの弁当は茶色かった。 ある日、軽い気持ちで母に言った。 「うちの弁当、茶色いんだよね〜」 すると母は、思っていた以上の勢いで怒った。 「じゃあ自分で作れば!?」 その言葉どおり、本当に翌日から自分で弁当を作ることになった。 当時は理不尽だと思った。 炊飯器の前でぼうぜんと立ち尽くし、「卵焼きって、どうやって巻くんだ」と途方に暮れた記憶だけが残っている。 でも今なら分かる。 母も朝から仕事へ行く人だった。眠くて、暑くて、時間にも追われていたはずだ。そんな中で毎日弁当を作っていたのだから、「茶色い」と言われれば腹も立つ。 あのころの私は、そんなことを考えもしなかった。 最初に作った弁当は散々だった。 卵焼きは崩れるし、ご飯は変な形に寄るし、箸を入れ忘れる日もあった。それでも毎日続けているうちに、人間というのは慣れるものらしい。 気づけば、それなりに見栄えのする弁当も作れるようになっていた。少し可愛らしいおかずを詰めたり、彩りを考えたり。高校生のころから始まった弁当作りは、そのまま今まで続いている。 だからといって、朝の台所が好きになったわけではない。 できることなら、もう少し寝ていたい。 今日の弁当は焼売の湯気と、ごま油の香り。浅漬けの少し酸っぱい匂いが混じる、いつもの弁当だ。 豪華でも映えるわけでもない。 それでも、冷蔵庫の残りものを見て、色を少し足して、蓋を閉める。その繰り返しで今日まで暮らしてきた。 思えば人生も、案外そんなものなのかもしれない。 毎日たいしたことはしていないようで、小さな手間を積み重ねながら、なんとか次の日へつないでいく。 少し茶色くて、少し地味で、それでもちゃんと腹は満たされる。 私の毎日は、たぶんそんな弁当に少し似ている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2026.07.28 15:18:11
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