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テーマ:乳がんのお話(1270)
カテゴリ:日々のこと
九年前、乳がんが見つかった。ステージⅢ。癌の大きさは直径8cm。リンパにも転移していた。 告知を受けたとき、私は「もう長くは生きられないかもしれない」と思った。 ちょうどその頃、元アナウンサーで、歌舞伎俳優の配偶者が乳がんで亡くなったばかりだった。連日の報道を見ながら、がんとは命を奪う病気なのだと強く印象づけられていた。 だから、自分が乳がんだと知らされたときには、目の前が真っ暗になった。 ところが、主治医の言葉は私の予想とは違っていた。 「今は、がんでなかなか死なない時代です。その代わり治療は長く続きます。お金もかかりますよ。仕事は辞めないほうがいいです。」 そのときは、その意味がよく分からなかった。何よりもまず、生きられるのかどうかが気になっていたからだ。 しかし九年経った今、あの言葉は驚くほど正確だったと思う。 私は今も病院に通っている。 入院したのは手術の前後だけだった。生命保険の給付金も、その期間に対して支払われた分だけである。 けれど治療はそこで終わらなかった。 診察、検査、薬の処方。再発していないか確認しながら、長い時間をかけて病気と付き合ってきた。 振り返ると、仕事を辞めなくて本当によかったと思う。 治療費のためだけではない。 実際にはそうではなかった。 仕事をし、家事をし、友人と会い、季節の移ろいを楽しむ。その日常の中で、ときどき病院へ行く。 私の生活の中心にあったのは、がんではなく暮らしだった。 九年前、私は「がんになったら死んでおしまいだ」と思っていた。 けれど実際には、がんと共に生きる時間が始まったのだった。 長い通院生活は決して楽ではない。それでも、仕事や家事に追われながら病院へ通う日々を重ねてきたおかげで、私は病気だけに自分を支配されずにすんだ。 今日もまた診察の日が来る。 けれど私にとって病院は人生のすべてではない。 病院の帰りには買い物をし、家に帰れば夕食の支度をする。 そんな当たり前の日常の中に、九年続く治療がある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2026.08.22 21:39:30
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