112527 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

第6章・ハチャメチャ、だけど勝負決す。

【19】PK勝負・最後の決戦へ
…というわけで、なんともトリッキーな形で同点に追いつかれてしまった日本。
川口、(そりゃないだろう…)という顔で、うつむき加減にゴールポストから出る。

「ズルいぞ!!」と、怒り心頭のラモス爺。「お前『大和魂』を知らんのか!?」思わず手にした太刀を抜こうとする。
慌てて後ろからカズ達がラモスを抑えにかかった。

「ヤマトダマシイ? はは、そんなもの知っている筈がないだろう」とジダン。
「ルールを守って、それを最大限活用するのがプロの俺たちの使命だ。ここで決められなかったら、何のためにはるばる日本くんだりまで来るものか!!」

「そうたい!」とマラドーナ。「ルールば守って決めたジダンが正しか!」(慧先生、長崎弁これでよかったでしょうか?)
「何だと!? お前が勝手に決めたルールだろうが!!」
「きったねーぞ、こらア!」ウルトラス・シニア達もいきり立つ。

そこに「静かにして!」と中田英。一同、中田英に注目。
「次は俺の蹴る番だから。俺は今、皆の前で最高の結果を出す。だから皆、力をくれ!」
クールな英にしては珍しい、熱いコメント。
「うぉーーーーーーーッ!!」湧き上がる会場。
「そうじゃないんだ!!」と再びウルトラスを制する英。
「静かに、胸に手を当てて、念じてくれ。俺のゴールゲットのために!!」
スタジオが、一瞬にして水を打ったようにシーンと静まり返る。

チラベルト、ゴールマウスへ。
中田英、ボールを額に当てて、しばし目をつぶる。まるでボールを抱きしめ、いとおしんでいるかのようだ。かつて、このあとヘンな登場の仕方をしたあと、このお話のラストを仕切る「神様」と呼ばれた男がやっていた仕草と、まるでオーバーラップしているかのようだ。
さあ、ボールがセットされた。審判のホイッスルが鳴った。


【20】「フェイント返し」決まった(!?)
チラベルトは、考えていた。
(ナカタは、果たしてジダンのような真似をしてくるのだろうか? …いや
、奴に限ってそんなことはしない筈だ。日本の昔からのファンもいる手前、それは絶対するまい。よし、そう信じよう!)

そうなると、今度は彼の蹴り込んでくるコースだ。
(コースは、右か、左か…、奴の動きは…)チラベルト、中田英の目線を追う。
英の目線は、走りこむ瞬間ゴール左隅をチラリと見た。
(よし!左だ!)チラベルト、咄嗟の判断で左(キーパーから見ると右)へジャンプ!

と、ボールは何と、ゴールマウスの真正面へ! 40過ぎという年齢を感じさせない、「これぞ世界のプロ」といわんばかりの弾丸シュートが、ものの見事に突き刺さった!!

「ゴーーーーール!!!中田やりました!!ゴールゴールゴールゴゴゴゴゴ…」元日テレの山下アナ、ここで舌がもつれ、泡を吹いて卒倒。先ほどジョン・カビラを運び出した担架が、再び用意された。

「やった! ヒデ!!」笑顔で迎える川口、ほか同年代を戦ってきた選手たち。
スタジオは再び大変なパニック状態となった。
中田、かすかな微笑みを浮かべつつポツリと一言「俺の足にも『目』はあるんだよ。これがホントのフェイントさ!」目線でチラベルトを幻惑し、ものの見事に決めた「フェイント返し」。
この喧騒の中、チラベルトの耳にも中田の声は聞こえたらしい。
チラベルト、思わず苦笑、むしろサバサバした表情でゴールマウスをあとにした。

さて、これで2-1で日本リード。
だけど、何か前に不吉な予告があったような…。
もしこれでロナウドが決めたら…。同点だよな。
ラモス爺は相変わらず神妙な顔つきで、大太刀を手に構えているし。
ホントにあの予告は行われてしまうの?

スタジオはそれどころではなく、大騒ぎ、司会の川平慈英は口をパクパクさせている。口読みで「いいんでしょうか?いいんです!」といっているのは何となく見えるのだが、声は全く聞こえない。


【21】次蹴るの誰??そうそう,ロナウドだった。
いよいよ世界選抜3人目のキッカーはロナウド。
カナリア軍団の猛者は手をつないで登場だ。
手をつないでいるのは,なんとあのジーコ。
そう,日本サッカーの案内人。開拓者。Jリーグのダンテ。
ゴールマウスの前まで2人手をつないでやってくる。
まるでマイムマイムのような動きだ。
バック音楽も
『チャ~ラ~ラララ~,チャ~ラ~ラララ~,チャッチャッチャッ』
と,流れている。
と,突然2人が!!
『チャーチャーチャーチャー,チャチャッラ,チャ,チャッ,チャッ』
と手をつないでそのままゴールマウスのほうへ寄って来た。
ホントにマイムマイムを踊っている。
このままキックか?
いやそんなアホではないらしい。これは何かの儀式??
ひとしきり儀式も終了したところでさぁ,いよいよ運命のキック。
ボールに祈りを込めるロナウド。その前でおまじないをするジーコ。
餅つきの爺と婆の様だ。いきもぴったり。
『ゴホッゴホ。』→『大丈夫かい?爺さんや』
→『いつもすまないねぇ』→『それは言わない約束でしょ??』
と,二人で仲睦ましく語り合っている。ほほえましい光景だ。
『じゃあ行くとすっかね』と,ロナウドがいよいよセットアップ。
身構える川口。付き合ってられるかと真面目振りを発揮し,完全に戦闘体制。
静まり返る場内。これから起こる事に皆が期待している。
あの天才ストライカー復活のゴールなるか??

と,突然ロナウド両手を大きく広げて目を閉じた。
ロナウドは静かに,しかし確かな声でこういった。

『地球のみんな。みんなの元気を・・・。
おらにみんなの元気をほんのちょっとずつで良いから分けてくれ!!』

さぁ。いよいよ運命のキック。『元気だま』炸裂か!


【22】それでも地球は回る(!?)
さぁ,いよいよ運命のキックオフ。
ジーコも懸命に何かを唱えながら,ボールを拝んでいる。
『げ~ん~気~だ~ま~。&キ~~~~~~~~~~~ン』と,絶叫しつつ間抜けにも助走開始。ブラジルでは今ごろ鳥山明ブームなのか!?
しかし,そのとき!!
ジーコの祈りの声に木霊するかのようにボールが光り輝く。
そして運命のシュート。黄金色に輝くボールは勢いよく??

あろうことか,そのボールはこの盛り上がりの最中,何食わぬ顔ですしを食っていたマラドーナ会長の下へ。
『やっぱ寿司ネタはアボガドに限るね~』等と信じられないような味覚を披露している。
『ヘィ。神様ッ。危なくないかい?危ないんです!?』と沸け分からない慈英の実況。
『ぬっ。!?』
さすが神の手を持つマラドーナ!!
その手に寿司とムラサキ(醤油ね)を持ちつつ,重力無視のオーバーヘッド!!
なぜか醤油は一滴もこぼれない!!見事に蹴り返した。
さらにボールは・・・。えっ!?

静かに瞑想中・介錯のときを待っていたラモス爺の方へ。
『シャキ~ン。シャキン。シャキ~ン。』
えっ,斬ったのか!?そう,ボールは見事に真っ二つ。
当人は『またつまらぬ物を斬ってしまった。』等と,ルパン3世の石川五右衛門のようなことをのたまうている。

『ピピィ!!退場』審判の(なぜかズボンの隠し)ポケットからレッドカードが!
怒り浸透のロナウド。
ジーコは念力を使い果たしたのか髪も抜け,老衰していた。
『俺の元気だまを!貴様ら~~~っ!!』
ミスキックを誤魔化すためか。ホントにあそこから曲がって来たのかこうなっては誰も分からない。
『邪魔者は斬る!!日本人やろ!?』と自信満々のラモス爺。
『心配せんでよか。全責任は俺が取る!』これしか日本語知らないのか?
言い訳にならないことを堂々と言い張るマラドーナ。
ウルトラス達も事の成り行きを静かに・・・と思いきやどうでも良いような表情だ。
『このおっさん達やる気あんのか!?もう帰りたい!?ママァ!?』

お構いなしに言い争う3人。かれこれ1時間は経っている。
『日本人やろ・・・!?』『よかよか。責任は・・・』『おらの元気だま・・・』
会話になっていないのが分からないのか??3人は同じ言葉を繰り返す。

『ヘイ。能活。こうなった以上しょうがないだろう。引き分けだな!?』
ここぞとばかりに(良かった死ななくて)と,いう表情ありありで,なぜか偉そうに言うチラベルト。
『もうどうでもいい・・・』能活は涙目で,そうつぶやいた。その去り行く姿はどこか物悲しささえ感じる。
そしてスタジオを出る間際にこう言った。
『それでも地球は回る・・・って確かガリレオの言葉だっけ??』

目次へ
次のページへ
前のページへ


© Rakuten Group, Inc.