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玉藻

玉藻

日記の家

日記の家~中世国家の記録組織~

松薗 斉氏著(吉川弘文館)
(平成9年8月1日・第一刷発行 平成12年10月1日・第二刷発行)



【内容】
「日記の家」の成立と構造
  「日記の家」の概念化
  貴族社会と家記
  家記の構造
  藤原宗忠の家記形成
「日記の家」の展開
  天皇家
  持明院統天皇家の分裂
  摂関家
  勧修寺流藤原氏
中世国家の記録組織
  外記局の変質と外記日記
  中世の外記



「日記の家」の成立という観念から、多くの史料を網羅し、様々な表や簡潔な引用文、そして何より専門の教育を受けていない者にもわかりやすい解説がとても親切に感じました。
第一章では、「日記の家」の成立の背景や、それに携わった人の具体的な動き、どういう人が「日記の家」の人であるかという線引き、遺産としての日記の価値などを、解説なさっておられます。
第二章は、各流派の家についてより具体的に検討されていて、天皇家の家記形成という提示が新鮮で引き込まれました。
流出する家記の価値が落ちることで、家に伝わる文書の秘密化が進んでいくこと、またその一方で勧修寺流のように、実務に則した利便性を考えて日記の貸し出しや書写を許す傾向もあったことがわかります。
次第に家記の価値が高まるにつれ、重代の日記は原本主義となり、家の財産とまでなっていくことは、興味深いことでした。
第三章では、下級官人である外記の「外記日記」の変遷。外記局の分化。中原氏と清原氏の考察や大外記・局務のありかたにスポットをあてて、形骸化していく中世の政の中で、外記には実際の職務としての器量や知識を求められた様子がよくわかりました。
総じてたいへん平易な表現で、日記にかける多くの記主の多大な努力と、家形成に不可欠だった家記の存在が理解でき、今一度日記に向かう思いを大切にしたいと思いました。



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