KILKERRAN
かつてウィスキーの蒸留所が建ち並び、業界の中でも一大産地だったといわれるキャンベルタウン。現在は随分とカズが減って有名どころとしてはスプリング・バンクくらいになってしまいました。私の持つ印象ではメロウでソルティーという、いかにも玄人好みのウィスキーができる場所という印象で、スコッチウィスキー産地の聖域的な性格を持つ場所と捉えています。そんなキャンベルタウンのなかで、面白いのがあるというので、さっそくいただいたのが「キルケラン」です。最近流行の、蒸留所名がついたシングルモルトではなく、蒸留所名のオフィシャルボトルとは違う名前を付けた、まったく別の個性を特徴とするウィスキーです。ちなみに、こちらはグレンギール蒸留所が作ったヘヴィ・ピートタイプの原酒をシェリー樽でフィニッシュさせたもの。アルコール度は46度と理想的です。飲んでみると、最初はもちろんピートがガツンと来ますが、その後はキャンベルタウンのメロウさとソルティーさがゆっくりと流れてきて、シェリーはあくまで全体をコーティングするようなバランス。繊細かと言われればそうでもありませんが、だからと言って大味ではなく、ひとつひとつの味わいをしっかり伝えながら、姿かたちの印象を変えていく、まるで上手な役者さんの演技を見ているかのような味わい。こういうウィスキーは、作り手の遊び心が満載で楽しいウィスキーです。コンテストで金賞を受賞したとか、ピートやシェリーがどうだとか、モルトウィスキーの分野は、色々と細かい能書きが多い世界ですが、所詮楽しむために飲む酒なのですから、美味しかったり楽しかったりすればいい、という諒解を持っておく見識がここにあります。珍しい1本なので、なかなか手に入らないようですが、家飲み用の一本としては最適ではないでしょうか。感謝!