Harmony

先日、突然教頭先生がＡ中（仮名）へと転勤されました。
そんな時期ではないのにどうして！？　
誰もが思ったことです。
原因は、ある小学校の校長の退職でした。
その校長は問題を起こし停職処分となっていたのですが、辞職されたそうなのです。
そのためＡ中の教頭先生がその小学校の校長となり、
教頭がいなくなったＡ中に、うちの学校の教頭先生が行くことになったのです。

みんな唖然としていました。
教頭先生は、誰もに愛されていました。
私達３年生と同じ時期に赴任してこられ、それから一緒にこの中学校ですごしてきた。
毎朝運動場を走って体力をつけられていて、駅伝大会のときもアドバイスをしてくださいました。
地域のマラソン大会にも出場したり、部活の指導をかって出てくださったり・・・
数学の授業をしてくださったこともありました。
教科担当ではないけれど、質問をしにいくといつも親身になって教えてくださいました。
その指導はいつもどれも丁寧で的確で、私達はどの分野でも
教頭先生にお世話になっていたと思います。
とてもユーモアがある方で、話をするのもとても楽しかったです。
３年生を見送られないのだけが後悔だ。見送る前に見送られてしまった。
教頭先生は、そうおっしゃっていたそうです。
こんなにも私達のことを思ってくださっている。
それはとても嬉しいことでした。

教頭先生は、私達に転勤のことを伝えられた次の日にはもうＡ中へ行かれていました。
あまりに突然のこと。伝えられてから行くまでに少なくとも３日くらいはあったはずです。
それをぎりぎりまで言わなかった。それは教頭先生の責任感の強さなのかも知れません。
きっと私達が知れば異議申し立てをするだろう。
そうなればまたややこしくなる。そうなるのを避けるため、自分が移動すれば済むだけの出来事に、
教頭先生はされたのかも知れません。

退任式の日。
教頭先生の姿が目に入る。それから後は、１度も先生の顔を見ませんでした。
見たら、絶対涙が止まらなくなるから・・・
転勤される先生の紹介、色紙・花束贈呈、生徒代表お礼の言葉、そして教頭先生のお言葉・・・
もう生徒代表お礼の言葉のあたりで、涙が頬を伝っていました。
式が終わった後はみんな泣いているか涙目か、「危なかったー」と言っているかでした。
１年間しか一緒に居なかった１年生も。
それは教頭先生がどんなに大切な存在だったかを物語っているようでした。

昼休み、歯磨きをしている最中に教頭先生が歩いてこられました。
「教頭先生！」と口にし、みんなすぐに話し始めました。
Ａ中ではどういうことをしたとか、うちの学校のことが気にかかるとか、その会話のひとつひとつが
なぜか淋しい。
もう毎朝走る先生の姿は見えなくなり、授業中に草を焼く、あのゴーという音も聞こえない。
体育館に入ればいつも目にしていた、教頭先生が指導されるバレー部の朝練。
こういう、日常の会話。
思い出が頭の中をまわってる。

このような事態を招いた、小学校の校長。
もっと学校の中心者としての自覚をもって仕事をしてほしいよ！
教育委員会の人、なんで私達の教頭先生にしたの！？
言いたいことは数え切れないほどあるけれど。
また、会えますよね。いえ、きっと会うでしょう。
そのときは、今よりもっと成長した私の姿を見せます。
教頭先生に教えられたこと、教頭先生から学んだこと、忘れません。
ずっと、私の心の支えになります。

―出会ってくれて、ありがとう。