■hakapyonの寝不足劇場/本日の観賞作品:「売り言葉」
(野田秀樹演出・大竹しのぶ主演)
夜中
ビデオの整理をしていたら
野田秀樹さん演出
大竹しのぶさん主演(ひとり舞台)の
「売り言葉」が出てきた
前半が
他の番組で既に
上書き消去されている状態だったので
途中から
軽い気持ちで観て見たら
これがやはり
面白く
結局最後まで
観てしまった
*
感想は
以前の日記にも
書いたが
今回新たに
印象に残ったことが
数点あった
まずは
舞台という空間を
自由に操る
野田演出の面白さ
少ない登場人物
少ないBGM
少ない舞台装置
何もかもが
必要最小限に
研ぎ澄まされた
世界で
これほどまでに
豊かな世界を
演出できるなんて
素敵
そして
余計なものが何も無い
がらんとした舞台で
多弁な野田節の
「言の葉」が
痛いほどに美しい
「永い永い永遠の接吻が瞬く間に終わる」
という台詞では
このブログタイトルにもなっている
同じく野田演出「キル」の
「刹那と永遠」というフレーズを
思い出した
「半径15センチというのはほとんど同心円。
それほどまでに僕たちは同心円のように重なり合った。
(略)
僕らは同時に眠りについた。それは同心円の眠り。此の世でいちばん幸福な眠り」
…なんだか
宮沢賢治や尾崎翠のような
理系と文系と感性の融合(笑
ちなみにこの場面のBGMは
バイオリン一本の優しい音楽
これまた「キル」の
二胡が響く中での
テムジン×母の抱擁シーン
「愛はお風呂だよ」
を思い出した
*
照明の不安げな緑の色彩は
智恵子のちぎり絵にも観られる
独特な緑
色盲気味の智恵子の
独特な色彩感覚を
表現している
狂気にかられる智恵子に
緑の照明が当たる
髪を振り乱した
大竹さんの演技力と
くるくる変わる千の声が
素晴らしく
・・・怖い
ラストシーン
智恵子の最期
「レモン哀歌」を詠う
智恵子の背景は
たくさんの豊潤な色彩に溢れ
智恵子は
透き通るほどに
美しかった
*
言葉とは
こんなに美しく
同時に
残酷なものなのか
「智恵子抄」という
後世にまで詠い継がれる
世にも美しい愛の賛歌は
智恵子にとっては
光太郎の「祝」であり
がんじがらめの
「呪」だったのだ
そして
二人の愛の絆が強いままに
智恵子が美しいままに
智恵子の生きた刹那が
永遠になるように
言の葉で祈る
奔放で残酷な芸術家
高村光太郎の姿に
野田秀樹を重ねてしまっていた