2006/02/14(火)13:12
超ネタバレ!(しかも長文)「労働者M」鑑賞文。(2)
※「労働者M」ネタバレ鑑賞文の続きです※
このように?
皆が軽くとち狂ってる@桜子さん
近未来のケラワールドで
唯一、まっすぐに悩み苦しむのが
堤真一演じるゼリグ(←この役名、なんか覚えにくい)
「13歳の少年」っちゅー役どころに
期待していたので
あっという間に
成長しちゃったのが残念(^^;
「吉原」千秋楽以来
ふたたび至近距離で観る
真一様は
あいかわらず「頭蓋骨が小さく」
目が鋭く
喉仏が発達しておりまする
ごっつくて太目の指と
曲がった小指
チカラの抜けたやわらかい指先のカタチ
ああ、これぞ堤真一ナリ
虹彩の色は明るい茶色
ライトを浴びて
ひときわきらきらと輝き
その虹彩の色と同じくらいの
茶色い髪は
短めで軽く逆立っている
瞳の色と調和して
とてもお似合い
贅肉のまるで無いしなやかな体躯と
あいかわらずのカラダのキレの良さ
くわえて短髪のせいで
とても若く、幼く
青年を飛び越して
まるで少年のようにみえる
舞台にすっと立つだけで
その場を収める空気を放つ
その立ち姿の美しさは健在で
先ほどのワークショップを思い出し
ああ、これが主役というものだと
つくづく想うhakapyonであった
前半は収容番号の付いた
作業服姿(プラスよっぱらいの牧田君)
休憩時間中に
「制服姿、観たいですよね~!!」と
べ~ちゃんと期待していたら
後半は
労働者側から管理側に異動し
ナチステイストの
黒っぽい制服姿でご登場
言うまでも無く
もちろん、カッコイイ
(hakapyon、心の中でガッツポーズ!!)
黒いブーツだけでも
新鮮で鳥肌モノだというのに
帽子被って黒いコートまで着てますよ
・・なんという凛々しさ!!
ケラさん、グッジョブ!!^0^
唐突ではありますが
ここでいきなり
hakapyon・心の俳句
「制服は 白(浅倉大佐)もよければ 黒もよし」
この制服に身を包み
階段の上から
焼け野原を見る姿
これももちろんキマッテいるのですが
hakapyonの席からは
ちょい首疲れ気味ですわ(^^;
イスに座って思い悩み
疲れ果てた静かな姿に
乙女(誰がだ)心がうずくかと思えば
颯爽としたキレのある動きも健在
二段ベットからひらりと飛び降りたり
瞬時にだだだっと事務机にのぼり
ずかずかと舞台を横切っていく
豪快なお姿
うっひょお
かっこええええええ
ああ、
象は絶対イヤだけど
ゼリグ様になら
踏まれて壊されてもいいわ(^^;
*
当初は
革命を夢見て
意気揚々と収容所にもぐりこんだのに
入ってみれば
誰も革命する気無し
自分に革命の詩を教えてくれた女性は
いまや体制の統率者
おまけにアタマに風船膨らませた
土星人が乱入してくる始末
管理者に昇格し
人を殴ったり蹴ったり
管理し続ける毎日
父を、母を、妹を死に追いやった敵「体制側」
いちばん憎んでいた存在に
成り下がった己のふがいなさに
悩むゼリグ
革命の志は果たせず
革命を忘れた仲間たちと
革命を阻止しようとする輩の中で
ひとり異邦人のように
「何故なんだー!?」を繰り返し
悩み、苦しむゼリグくんは
観ていてちょっと切ないのです
それに比べて
ヨッパライの牧田君!!
罪の意識に病み、悪意に軽く狂い
でも実は私たちの現実とそんなに大差無い
ダメ人間の巣窟・労働者Mたちのなかに
深刻さを微塵も感じさせず
明るくフツーになじんでるその姿が
悩めるゼリグとのコントラスト抜群で
(やっぱりコレも、平均化?)
酔いに任せて楽しそうで
なんだかどこかで
ほっとしている
自分に気づく
しかも牧田君ってば
・・・サイコーに面白いっ!!
あの、あごが尖り気味になる
ふにゃ~と崩れた
満面の笑み(^~^を
至近距離で見ることができて
めちゃんこ嬉しかったです!!
カラダ張った笑いには不可欠な
身体能力の高さもご披露
イスに座る振りして
座らない場面のあの
低く腰を落とした体制!!
何故あの体制を
あんな綺麗にキープできるんですか!?
そしてマッキー(と勝手に呼ばせていただく)
一番のお気に入り場面
「ヘンな色のセーターを脱いでロッカーにシュートする」場面!
しかも二度!!
(繰り返し好きだなあケラさんは(^^;)
舞台の上の堤真一に
あんなに腹抱えて
心の底から笑わせていただいたのは
初めてでございます
最 高 で す (^▽^)
・・・そして嬉しかったのです
なぜなら
「カメリプ」の時には
まっすぐな堤さんは
こーゆーブラック風味のシュールテイストな笑いは
イマイチなんじゃないかしら?なんて
勝手に感じていたものですが
とんでもございませんでした
この御仁は
心根が自由な
本物の役者さんらしく
「あわない」なんて簡単に決め付けずに
またトライしてちゃんと芸として身に着けていくのです
牧田くんの面白おかしさに
そんな堤真一の芸人魂?を垣間見たような気がして
hakapyonは
すっかり
ヨッパライ牧田君が
お気に入りになってしまいました^^
*
観葉植物にぶち込まれた
煙草の吸殻(か、かわいそうに・・・)や
モーモー鳴く牛の統率者
「こうしてサラはその場から去っていった」@ゼリグ(←違うかも)
等等
この芝居の笑いのツボポイントをあげれば
キリが無いので(^^;
このあたりで締めさせていただきます
感想が長くなりましたが
この舞台を(ちょっとランボー気味に)
ひとことで
いいあらわすのならば
♪ 北京ではオーロラ燃える
「だかそれはきみの人生とは関係ない!」
働け~ 働け~ 働け~ 働け~ 」 ♪
(「労働者M」@筋肉少女帯ヴァージョン)
北京で
天安門事件がおころうが(←この解釈、あってるのかよホントに(^^;)
過去に
ヘルメット被って角材握った
学生運動が起ころうが
近未来に
宇宙人も入り混じっての
革命が起ころうが
世界のどこかで
何かが起ころうが
んなこたあ
「君の人生とは関係ない!!」
野田ワールドが(←最近見てきたばかりなのでつい比較しちゃいます)
常に「神」の存在をカンジさせ
人々が進むべき方向性を示すのに対し
ケラワールドには
絶対的な神は居ない
正道は無い
近未来の収容所のMはスピーカーであり
現代の怪しい職場の所長は行方不明
(彼の伝言を伝えようとするものは宇田(ユダ)と呼ばれる(^^;)
皆が方向性を失っている
そのことに自分の軸を揺るがされて
真剣に悩む人
まったく軸がぶれず
どーでもいいひと
自分の軸すら無い人
ひとはいろいろ
まさに「混沌」
現代の職場は昔の「印刷工場」
印刷工場といえば
活動家がガリ版すったり
無政府主義者が印刷物をすったりして
反体制思想を広めていくアジトの定番
もしかしたら過去には
同じ場所で
反体制への革命運動が
行われていたのかもしれない
あるいは
近未来の収容所になっているかもしれない
そうやって
ときに革命家(救世主)があらわれて
レボリューションしても
結局はまたリローデット
以前と変わらぬ♪働け~♪な
淡々としたむなしい日常が
続いていくのである
さらに
通常、演出家というものは
作品の創造主(神)となり
その舞台を牽引する役割を担うが
ケラさんは自分が作品の絶対神になることを
避けているようにも思える
誰がの強い思想や意思に則って
舞台を演出すれば
かならずその誰かの色に染まる
しかし
ケラさんがパンフ等で口にしていた「平均化」とは
従来のように演出家ひとりの色に
作品を染めるのではなく
作品中で白と黒を描いて
観客の脳内で混色させて
中間のグレイゾーンにする作業
遠く北京で燃える
オーロラという名の革命や
世界のどこかでいまでも起きている戦争と
ブラウン管に映るその映像を横目で眺めて
携帯メールを打っていたりなんかしている
いまここにある
わたしたち「労働者」の人生
このふたつの現実が存在している
世界のありのままの姿を
(ちょっとゆがめて)同次元に描いた
「労働者M」の二重構造は
一見、特異なもの見えるけれども
実はいちばん偏りの無い
「世界の平均値」なのかもしれない
ゼリグの夢見た革命は
あえなく終結したが
ダメ人間の社会はその後も続いていく
観客や役者はもちろん
演出家さえもその舞台の行く末を知らない物語を
提示することで
ケラさんは
「強く信じられるものの無い時代」
つまり、神無き時代
現在(いま)の芝居を創ろうとしているのだろうか
国やヒト
思想は興り、そして滅びて
また興る
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きアリ
この世ではどんな残酷なことも
美しいことも
いびつなことも
なんでも起こりうるんだよ
なぜなら
世界はカオス(混沌)でアナーキーで
闇に包まれた宝石だからさ
救われようなんて想うな
それよりも悲惨さを笑おうよ、と
人間のトホホ感
心に潜む闇ととことん向き合って
ブラックに笑い飛ばすこの作業
昔、よく聴いていた
筋肉少女帯を想い出させる
「それでも、生きていかざるを得ない」 (「踊るダメ人間」@筋肉少女帯)
中途半端に光を求めずに
闇で笑う術を追求するケラさん
ある意味コレは肝が据わっている
アンコールも無く
結末も見えない
それどころか
終ったんだか続いてるんだか
境界線も曖昧な
誰もたどり着く先のわからぬ芝居
「労働者M」
これは演劇者Kの
ささやかな
リローデット前提の
レボリューション(革命)