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He ye Shao @ 梢  的房間

He ye Shao @ 梢  的房間

2005

2005年
肴の好みだけでない、人との間のとりかたも似ているのにちがいない。


カラスが電柱のてっぺんで鳴いている。かあかあ、かあかあ、と、いかにもカラスらしい声である。

踏み跡の何もないところを、どんどん歩いてゆく。一歩道をはずれると、空気が突然濃くなったように感じられた。

「心意気さえあれば、どんな場所でも、人間は多くのことを学べるものですよ」

そんな正式な格好しなくとも、ただのハイキングなのだから、とワタクシが言っても、妻は「形から入るのが大切よ」と言って、とりあわなかった。

近いはずなのに、近いがゆえに届かなかった。無理に話そうとすると、すぐ足もとにある断崖から、まっさかさまに落ちて行きそうだった。

不安は当事者のわたしにぶつけるべきものであって、第三者である友人に相談するというのは、まったくの見当違いとしか思えなかった。

どこにもない時間の中に入りこんでしまったようだった。

スミヨさんは不幸が嫌いだったのだろうか。不幸を嘆く気分が嫌いだったのだろうか。

空気の壁があるみたいだ。いっけん柔らかでつかみどころがないのに、圧縮されると何ものをもはねかえしてしまう、空気の壁。


   4.17
                       センセイの鞄 川上弘美





愚痴を言うのは嫌いだけど、ただ誰かにそばにいてほしい時がある。誰かに思っていることを聞いてほしい時がある。

人は幸福な時は、自分のそれに気づかない。

何もかも捨ててこの手の中に得た奇跡。いつか失ってしまう日が来ても、私はこの日々を思い出し、きっと微笑むことができるだろう。
                          「愛の奇跡」


いくら事情があったって、ご自分の意志でこっちに帰ってきたんじゃないんですか?仕事だって誰かに頼まれてやってるわけじゃないんでしょう?働きたくて働いているんでしょう?うまく行かないのは全部性別のせいなんですか?



                      「絶対泣かない」
山本文緒
                       大和書房  2005.4.17 



自分の置かれている状況に耐えらえそうにない時には、誰か恨みや憎しみをぶつけられる相手がほしいものなのよ。



一つ破るのも二つ破るのも三つ破るのも同じだと思っちゃうでしょ。



楽な道があるのにわざわざ苦しい道を選び、楽しい時期を犠牲にして勉強するーーこういう姿勢と努力が報われないはずがない。


目に見えないものだけが悲しみではない。


何かを失う時は、いつもあっという間なのだ。


                           「秘密」
                           東野圭吾

なにもかも新鮮で驚きに満ち、そのたびにきちんと目をあけて、受けとめるのが精一杯だった。

この季節には毎年必ず何日か運動会を思いださせる空の日がある


                           「東京タワー」                           江國 香織  



カムチャツカの若者が 
きりんの夢をみているとき
メキシコの娘は 
朝もやの中でバスを待つ


 ニューヨークの少女が 
 ほほえみながら寝がえりをうつとき
 ローマの少年は 
 柱頭を染める朝陽にウインクする
             
この地球では 
いつもどこかで朝がはじまっている
  ぼくらは朝をリレーするのだ 
  経度から経度へと
  そうして いわば交替で地球を守る
                   
眠る前のひととき 
 耳をすますと
 どこか遠くで
 目覚まし時計のベルが鳴ってる
 それはあなたの送った朝を 
 誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ



Poem “Morning Relay” by Shuntaro Tanigawa

While a young man in Kamchatka
Dreams of a giraffe
A young girl in Mexico
Waits for the bus in the morning haze
While a little girl in New York
Rolls over in her bed with a smile
A little boy in Rome
Winks at the morning sun that colors the column capital
On this Earth
Always, somewhere, morning is starting
We are relaying morning
From longitude to longitude
Taking turns protecting Earth, as it were
Prick up your ears awhile before you go to sleep
And, somewhere, far away, you’ll hear an alarm clock ringing
It’s proof that someone has firmly caught
The morning you’ve passed on



谷川俊太郎
                          「朝のリレー」


日本人にとっての「なのになぜ」がマレーシア人にとっては「だからこそ」


こだわることと壊すこと


物でも人でもこだわるな。


流れていてもそれに耐えられるとういう強さに対して、人はある種の畏敬の念を抱く

たぶん、本当に旅は人生に似ているのだ。どちらも何かを失うことなしに前に進むことはできない


                      「深夜特急」
                      沢木耕太郎 新潮文庫






「人生を愛する」姿勢が、どこか日本と根本的なところで大きく違う。

今過ごしている時間の意味がわかっている分、おだやかに過ごすことができるようになった。
 

       「ベトナムのこころ しなやかさとしたたかさの秘密」                    皆川一夫  めこん



切手のないおくりもの 作詞・作曲 財津和夫



1わたしからあなたへこの歌を届けよう 広い世界にたったひとりのわたしのすきなあなたへ

2年老いたあなたへこの歌を届けよう 心やさしく育ててくれたお礼がわりにこの歌を
3夢のないあなたへこの歌を届けよう 愛することの喜びを知る魔法じかけのこの歌を
4知合えたあなたにこの歌を届けよう 今後よろしくお願いします名刺がわりにこの歌を
5別れゆくあなたにこの歌を届けよう さみしいときに歌って欲しい遠い空
からこの歌を



歓びの種
逆さまに見てた 冷たい空 泣いて赤くなる 街を 見下ろした
風に流されて 体ゆだね 笑いとばす 意外にタフ
旅は続くんだ
蒼い首飾りを ほら あげるよ
毒入りのりんごを 食べてしまえば ステージの上から 落ちちゃうわ
結びなおしてね
見逃してしまう 歓びの種を 暖かい大地で育てましょう
流されてしまう 力尽きてしまう
大きな何かに 動かされている
憧れの夢を 魔法の種を 私は いつでも 観ていられるから
あの人を誘って どこへ行こう 未来を射す 明日へ渡す 手紙をかくよ
間違いだらけと 判っていても 2人は進んでいく
つまりそれは 恐れずに 幸せになる 切符を 手にしている
陽だまりのにおい 雨上がりの空
与えられたのなら 受けとめよう
しかられてみよう 愛されてみよう
心の底から 信じてみよう
少し照れて 笑う君が 見えるよ
陽は昇り 沈む 燃えて 茜色
命の音色に 耳を澄まして
実らせてみよう この歓びの種を
愛という 水を 注ぎましょう
陽だまりのにおい 雨上がりの空
与えられたのなら 受けとめよう
見逃してしまう 歓びの種を
暖かい大地で 育てましょう



想うことは幸福なこと

神様は欠点の数だけ長所を与えてくれる
怖いから逃げつづけ 気づいた時にはもうおそい。怖いからこそむきあう。
「星願 あなたにもう一度」





「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目には見ないのだ。数字はその姿を解明し、表現することができる。なにものもそれを邪魔できない」
 空腹を抱え、事務所の床を磨きながら、ルートの心配ばかりしている私には、博士が言うところの、永遠に正しい真実の存在が必要だった。目に見えない世界が、目に見える世界を支えているという実感が必要だった。確かに暗闇を貫く、幅も面積もない、無限にのびてゆく一本の真実の直線。その直線こそが、私に微かな安らぎえをもたらした。



πとiを掛け合わせた数でe累乗し、1を足すと0になる。
私はもう一度博士のメモを見直した。果ての果てまで循環する数と、決して正体を見せない虚ろな数が、簡潔な軌跡を描き、一点に着地する。どこにも円は登場しないのに、予期せぬ宙からπがeの元に舞い下り、恥ずかしがり屋のiと握手する。彼らは身を寄せ合い、じっと息をひそめているのだが、一人の人間が1つだけ多算をした途端、何の前触れもなく世界が転換する。すべてが0に抱き留められる。




「空っぽとは、つまり0を意味するのだろうか」
尋ねるともなく博士はつぶやいた。
「つまり君の中には0が存在する、ということになる」

無を数字で表現したんだ。非存在を存在させたんだ。素晴らしいじゃないか。

測りたい場所の端を0に合わせれば、自動的に長さが分かる。もしこれが1からはじまっていたら、面倒なことになるぞ。今我々が心置きなく物差しを使えるのも、0のおかげなのだ

途中止めしたら絶対に正解にたどり着けないんだよ

集中すればするほど早く目的地に到達できると信じているかのようだった。


                「博士の愛した数式」
                 小川洋子
                  11.


 


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