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Beauty Source キレイの魔法

恋愛セミナー55【椎本】

第46帖  <椎本2  しいがもと>

八の宮はしばらくの間、高僧の山寺に篭ることになり、姫達に今後のことを話します。
「私亡きあとも、心から信頼できる人でなければ山荘から出たりしないように。
人とは違った運命なのだと思い、ここで一生を暮らしなさい。」
今にも亡くなるかのような言葉を悲しむ二人は、ただ帰りを待ちわびていますが、
山寺で八の宮は病に倒れ、あっけなくこの世を去ってしまいます。
山の高僧は「煩悩のもとになるから。」と姫達が父の亡骸を見ることも許しません。

八の宮の訃報に驚き悲しみ、薫は早速丁寧な弔問の文をとどけ、山寺にも姫達のところにも法事の費用を贈ります。
深い嘆きの中にも、薫の長年の志しを有り難く思う姫達。
匂宮からも文は届きますが、浮ついた相手と思い返事をする気にはなれません。
悲しみのままに日々は過ぎ、八の宮の喪がようやく明け、薫は山荘に向かうのでした。

薫は大姫に、八の宮が姫達のことを託したと親身に伝えます。
喪をまとった大姫の悲しむさまに、いつか月明かりに垣間見た姿を思い出す薫。
嘆きのままに奥に行ってしまった大姫の代わりに、柏木の乳母をしていたあの女房が応対し、
柏木に瓜二つな薫に、今の悲しみに伴なって昔のことまで思い出している様子。
きっとこの女房から話を聞いているだろうと考え、秘密を守るためにも姫達と結婚するしかないと薫は思います。

薫は山荘から帰ると、必ず匂宮に姫達のことを伝えています。
匂宮は頻繁に文を届けていますが、多情な噂のある相手なので返事をしがたく思っている姫達。
大姫を前にして少しずつ話しを交わしているうちに、薫はその気品ある雰囲気にだんだんと恋心が湧いてきました。

「匂宮から、こちらの姫達から色よいお返事がいただけないのは私が真剣に取り持ってくれないからだと
お叱りをいただいております。
匂宮は浮気な方のようですが愛情が深く、お気に召した方には心変わりすることはありません。
もしご結婚をお望みでしたら私がこちらへ足しげく通い、橋渡しをいたします。
匂宮への返事はどちらがされているのでしょうか。」
薫の言葉に応えて
「雪深い山の掛け橋をあなた以外に誰が渡ってくるでしょうか。」と詠む大姫。
「凍りついた山も川も踏み越えて宮を案内しつつ、まず私があなたと。」と返す薫。
大姫は考えもしないことと気分を悪くしますが、急に冷たい態度をとることもなく穏やかに対応し続けます。
理想の人に出会ったとますます心惹かれますが、恋心を伝えようとしてもはぐらかされてしまう気まずさを、
八の宮の思い出話などをして紛らわせる薫なのでした。

「京にこちらの山荘のようなひっそりとした屋敷がありますので、お移りいただけたら。」と申し出る薫の言葉に、
女房達は喜びますが、中の姫はとんでもないことと思います。
八の宮が勤行していた部屋に寄り、その侘しい有り様を見て
「出家したら教えを乞おうと頼みにしていた宮のお住まいはすっかり寂しくなってしまった。」と詠む薫。
その優艶な姿を女房たちはもてはやしています。
荘園からたくさん人がやってきたので、姫たちではなくあの女房に会いにきたようにして、薫は京に帰りました。

年が明けて、再び桜の季節がめぐってきました。
匂宮は去年のことを思い出し宇治に歌を届けます。
「霞みを隔てて見た山桜をこの春は手折りたいものです。」
この遠慮のない詠みぶりにあきれた中の姫は
「いずこを訪ねて折ろうとされているのか、墨染めの喪の霞みがたちこめているこの山荘の桜を。」と返しました。

そっけない返事に匂宮はがっかりし、薫をつかまえていろいろ繰り言をいいます。
姫達を託され、意を強くしているので「浮気なことをされていてはまだまだ。」とからかう薫。
「正真正銘の相手が見つかるまでの浮気心ですよ。」と言い訳する匂宮。
夕霧は六の姫を匂宮に嫁がせたいのですが、
「従兄妹同士であるし、夕霧の大臣は真面目すぎて浮気沙汰などに目くじらをたてられそうで。」と
避けられているのでした。

恋愛セミナー55
1 薫と大姫     ゆっくりと
2 匂宮と中の姫  見抜かれて

八の宮が亡くなりました。
遺言もあり、姫達との関係が一気にすすみそうそうですが、なかなかうまくいかないようです。

これには八の宮の曖昧な遺言にも原因があります。
薫には姫達を托し「あとはお若い方たちにまかせて。」と言う一方、
姫達には「ここで一生を終えよ。」と伝える。
「心から信頼できる相手」とは、薫を意味しているのですが、仏道修行に邁進してきた八の宮の口からは
「薫の中納言になら身を任せてもよい。」などとは言えません。

八の宮に薫が惹かれたのは、この曖昧さに自分との共通点を見るからでしょう。
「俗聖」と呼ばれて修業しているということは、いつでも俗に戻れ、なんどきでも聖になりすませるということ。
変わり身するのに都合のよい立場でもあります。
東宮に擁立されそうになり、その後失墜した八の宮は、このいつでもどんな立場にもなれるという
状態に自分を置いておく必要性を痛いほど感じ、聖も俗も極められない曖昧さの中に漂うことに
終始していたのではないでしょうか。

大姫と中の姫の年齢は、恋を始めるにはかなり遅い25歳と23歳。
それでも、中の姫は恋の手達を標榜する匂宮を一蹴し、大姫もなよやかでいながら薫を翻弄しています。
これからみると、姫達の父である八の宮は、意外に恋達者だったのかもしれません。
なにしろ、桐壺院の息子、源氏の弟なのですから。
姉妹二人を、薫の前に差し出したのも意味がありそう。
そんな八の宮の過去の行状も、これから明らかになってゆきます。


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