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Beauty Source キレイの魔法

恋愛セミナー76【蜻蛉】

第五十二帖  <蜻蛉-1 かげろう>  あらすじ

突然浮舟がいなくなり、山荘では皆、慌てふためいています。
浮舟が母君に書いた文を開け、自ら命を絶ったのだと悟る右近。
乳母も取り乱し、ただ泣くばかりです。

匂宮は浮舟からの文に胸騒ぎがして、時方を宇治に向かわせます。
大騒ぎになっている山荘の様子に驚き、侍従に無理やり事情を聞く時方。
「急に亡くなられて。最後にお会いできなかったことを悔やんでいらしたことなども
喪が明けましたらお話いたしましょう。」と泣きながら語る侍従。
「どこに行ってしまわれたのでしょう、大事な姫君。ご遺体さえお残しにならないとは。」
山荘から乳母の泣く声が聞こえ、時方は誰かが浮舟を隠したのではないかと侍従を問い詰めます。
「薫の君が匂宮様とのことを仄めかされたことはありましたが、姫君はただ一人で悩んでおられ、
そのまま消えてしまわれたようで、皆、なにが起こったかわからず泣き叫んでいるのです。」
侍従は浮舟が自ら命を絶ったことを隠したい一心で、時方を京へ帰るよう促しました。

母君も山荘へやってきて、右近と侍従から浮舟の悩みを初めて告げられます。
驚き悲しみ、宇治川をさらえてでも浮舟を探そうとする母君を、女房たちは甲斐ないことと止め
浮舟の葬送の手ばずを整えました。
日頃使っていた身の回りの品々を車に乗せ、焼かせるだけの儀式で、
周囲に住む人々はあまりにも簡単に済ませしまったことを不審に思っています。
「薫の君には、ほとぼりが冷めてから匂宮とのことをお話しよう。」
女房達は心ひとつに秘密を留めようと決心するのでした。

女三尼宮が病気のため、石山寺へ篭っていた薫は、浮舟が亡くなった翌朝ようやく宇治に使いを出しました。
あまりにも急な不幸に、宇治がその名のとおり憂い多いところだと疎ましくなる薫。
匂宮が浮舟に通ったのも、長い間放っておいた自分の落ち度だと悔やむばかりです。
京へ戻っても、女二宮を訪ねる気にもなれず「縁ある者に不幸がおきまして。」と言いつくろい、ただ浮舟のことを思う薫。
「世を捨てようと思いながら俗にまみれてゆく私を仏は憎いと思われ、このような報いを受けさせているのだろうか。」
薫はひたすら仏道修行に励みます。

匂宮はあまりの悲しみに狂乱し、物の怪に憑かれたとさえ思われていました。
ようやく涙を流し尽くし、心が鎮まると、かえって浮舟への愛しさが増して辛さが蘇ります。
匂宮の様子を噂に聞いて、浮舟との関係が文だけではなかったのだと悟り、悲しみが冷める気がする薫。
薫が見舞いに行くと、匂宮はあふれ出る涙を止めることができません。
「浮舟とはいつから関係しておられたのだろう。二人で私を笑っていたに違いない。」
匂宮はすっかり冷静になっている薫を羨ましく思い、浮舟に縁の人だと慕わしく見ています。

「幼い頃から何でも打ち明けてきましたが、このところ身分も高くなり、ゆっくりお話しできない間に、
私は宇治にあの大姫の縁の女性を置いておりました。妻ではなく愛人の一人にするつもりでしたが、
急に亡くなってしまったのです。お聞き及びかもしれませんが。」
話しながらようやく泣き出す薫。
「聞いておりましたが、お隠しになっているとのことでしたので。」とさり気なく対する匂宮。
「そのうち差し上げようかと思っていたのです。こちらにも出入していた人なのでご存知かもしれませんね。」
薫はわざとこんな風に言いつのって、帰途に着きます。

匂宮の思いを知り、改めて浮舟の運勢が強かったのだと思う薫。
女二宮を妻に迎えながら、浮舟へ愛執を持ったことは匂宮の執着と変わりはしないと
自らに言い聞かせる薫なのでした。

恋愛セミナー76
1 薫と浮舟    俗への報い
2 匂宮と浮舟   邪恋の報い

浮舟がいなくなったのに惑う人々。
深窓の女性が姿を消してしまえば、例えそれが誰かにさらわれたのだとしても
鬼に喰われたか、急死したかと紛らわせるのがこの時代。
自ら命を絶つ、まして宇治川まで足を運んで身を投じるなどとはとても言えません。

右近や侍従にしてみれば、浮舟の死の責任の一端を背負ってしまった形。
現実的で、威勢の良いほうになびくのが自然な女房たちにとって、悩むのは甲斐ないこと。
主人・浮舟は、匂宮と薫を両天秤にかけ、好きな方を取ればよいだけの話。
匂宮へ心を移そうとも、そのまま薫に嫁ごうとも、どちらでも対処はできる。
一方に思い定めてもらえば、ついてゆくだけ。

そんな現実的な柔軟性を、浮舟は持ってはいませんでした。
思い詰め、命を絶とうと思う初心な様は、まるでジュリエット。
ともに逝こうとするロミオはいないのですが。

さて、またしても宇治の橋姫を失ってしまった薫。
二度あることは三度、すべて悠長に構えていたあげくの失恋です。

大姫のときは、心を開いてくれるのを待っていた。
中の姫は、いったんは手に入れながら、匂宮に。
浮舟は、宇治に放置しておいた。

初めの恋では聖なる自分とを天秤にかけた。
二番目の恋は亡き人との思い出を大切にする自分を、
そして三番目の恋は皇女を迎えた自分を。
薫が三つの恋を失ったのは、常に己を崩すことへの恐れが原因なのかもしれません。

なりふりかまわず浮舟に迫り、魂が抜け出かと思われるほどその死を惜しむ匂宮。
落ちるところまで落ち込んだ恋の手達は、恋敵さえ亡き人の縁と懐かしく思います。
奪うだけに終始した匂宮は、今後も浮舟の面影を追い続けるでしょうか。


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