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Beauty Source キレイの魔法

恋愛セミナー83【手習】

第五十三帖   <手習-4 てならい>  あらすじ

美しい黒髪を最後にもう一度梳きながら、浮舟は母君のことを思っています。
髪の長い姿を母君に見せないままに尼になってしまうのを、悲しく思う浮舟。
それでも僧都がやってくると、きっぱりと出家の意向を伝えました。
美しい浮舟を惜しみ、しばらく時をおいてみてはと言う僧都。
浮舟は尼君が帰ってからでは遅いと思い、やはり強いて出家を遂げたいと頼みます。

ようやく僧都は納得し、弟子を呼んで浮舟の黒髪を下ろすように伝えました。
浮舟が発見されたときの様子を見ている弟子は、生きることに希望が見出せないのだろうと
思いつつも、几帳から出された黒髪の美しさに感嘆し、鋏を入れるのを忍びなく思います。
ただならぬ有り様に気づき、慌てて少将の尼がやってきたときは、すでに受戒は終わり、
法衣の用意さえできなかった浮舟に、僧都が自分の衣を着せているところでした。

「親御のいらっしゃる方を拝みなさい。」
僧都の言葉に、母君がどこにいるのかと、こらえ切れずに泣く浮舟。
少将の尼は浮舟を責めますが、始まってしまった得度式を止めることはできません。
「流転三界中、恩愛不能段(るてんさんがいちゅう おんないふのうだん  三界の中を流転し
恩愛は絶つこと能わざれども 恩を捨てて無為に入るは、真実に恩に報ゆるといへり。)」
出家のための経を僧都の後に復唱しながら、命を絶とうとした時に恩愛との縁は果てていたのにと悲しく思います。
あまりにも多い髪を充分に切ることができていないのを、尼たちになおしてもらうように言い、額髪のみ揃える僧都。
「髪を下ろしたことを後悔されませんように。」
浮舟は、尼君たちが止めていたため、今まで果せなかった出家ができたことを心から喜ぶのでした。

少将の尼は嘆きますが、ただ嬉しいばかりの浮舟。
「自分も人もなきものと思いつつ捨てた世をさらに捨てた私。」
こんなことを歌に書いていると、浮舟が髪を下ろしたことを聞いた中将から文がきます。
「岸が遠く漕ぎ遠ざかってゆく海女(あま 尼)の舟に私も乗り遅れはしないと急ぐのです。」
「心こそ憂き世の岸を離れたけれどこの先行方もわからない海女の浮き木のような私。」
浮舟が手習いのように試し書きしたものを、少将の尼はそのまま届けるのでした。

初瀬から帰ってきた尼君が嘆き悲しむさまは尋常ではありません。
尼君の様子に、亡がらもなく悲しんでいるだろう母君を思う浮舟。
浮舟の法衣を用意しながら、尼君は僧都のことを責め続けます。

女一宮の病気は、僧都の祈祷によって全快しました。
雨の降る夜、明石の中宮と女一宮に憑いていた物の怪のことを話しつつ、
ふと宇治の院で物の怪に憑かれた女人が見つかったときのことを口にする僧都。
僧都の伝える奇怪な話を恐がり、眠っていた小宰相など女房たちを起こす中宮。
小宰相や明石の中宮は、その女人が薫の亡くした愛人ではないかと思いいたります。

僧都は宮廷からの帰りに、小野を訪ねました。
尼君は繰り言をいいますが、僧都はただ仏道修行に励むことを浮舟にさとします。
そんな時、またあの中将がやってきました。
「髪を下ろしたお姿をどうかお見せください。」
中将を頼みに、襖の掛け金の穴を教え、浮舟を見せる少将の尼。
あまりの美しさに驚き、どうにかして浮舟を我がものにしようと思う中将。
「出家をされたのですからもう気がねはなさらず、私にご信頼を。」
尼君にはそんな風に話します。

「この世に背を向けたあなたが、私をも厭うのが辛い。」と浮舟に詠みかける中将。
「私を兄とお思いください。儚いこの世のお話などをしてあなたを慰めますから。」
中将の言葉を理解できないふりをする浮舟。
過去の出来事を厭い、誰にも知られぬまま儚くなってしまいたい浮舟は、
尼になってからは碁を打ったり、経を読んだりとかえってのびやかに過ごしているのでした。

恋愛セミナー83
1 少将と浮舟  またも兄

いままで自分で考えることをせず、流され続けてきた浮舟。
命を絶つことさえ、物の怪まかせだった彼女は、
ここにきてようやく、出家と言う道を自ら選ぶことができました。

源氏物語では、何人もの出家した女性がいます。
空蝉、藤壺、六条御息所、源典侍、朧月夜、そして女三宮。
髪を下ろすシーンは描かれていない場合がほとんどで、女三宮のみあっさりと
触れられていますが、浮舟の場合はとても詳しく言及されています。
紫式部が出家した後に宇治十帖が描かれたのではないかと言われる由縁でしょう。
瀬戸内寂聴氏も、自身が出家した時のことをありありと思い出しながら訳されたそうです。

出家をして、すっかり心晴れ晴れとする浮舟。
恋に身をまかせて流されていたにもかかわらず、恋そのものへの執着はない様子。
ただ思うのは母君のことのみ。

出家しても途切れることのない中将の言葉も、見透かす視点を浮舟は手に入れました。
かつて出家した女性達が、源氏との恋を手放し自ら立つことができたように、
浮舟も恋に流されていた過去を手放すことができるのでしょうか。


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