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Beauty Source キレイの魔法

恋愛セミナー84【手習】

第五十三帖   <手習-5 てならい>  あらすじ

年が明けました。
匂宮のことを疎ましく感じつつも、ふと記憶が蘇る浮舟。
「降り続ける野山の雪を眺めても過ぎた日のことが今日も悲しい。」
紅梅を見ても、匂宮の香りを思い出します。

そんな時、大尼君の孫にあたる紀伊の守が小野を訪れました。
「京に戻ってから日がたってしまいましたのは、薫の君が宇治へ行かれるのにお供したからなのです。
ご関係されていた八の宮の姫が亡くなって一年たつそうで、私も法要のため、女性の衣装をおさめるのですが
こちらで用意していただけたらと思いまして。昨日も、薫の君は川を見て号泣されていました。」
尼君に紀伊の守が話すのを、心を大きく波立たせて聞きいる浮舟。
薫が自分のことを忘れていないのなら、母君はもっと悲しんでいるだろうと思います。

尼君たちは早速、法要のための衣装を作りはじめます。
「ここを縫うのを手伝ってください。」
尼君の渡す衣が自分の法要のためと思い、心炒られて伏してしまう浮舟。
「尼の衣に変わってしまった私。かつての形見にこの衣を袖にかけてしのぼうか。」
何か隠していることがあるのではないかと尼君は心配していますが、
「話すことは何も。」とごまかしてしまう浮舟なのでした。

薫は浮舟の法要を終えても辛い思いは消えません。
常陸の守の子ども達をよく後見し、特に美しい浮舟の弟を贔屓にしています。
ある雨の降る夜、薫は明石の中宮を訪ねました。
「世話をしていた女人が亡くなってから足が遠のいていた場所に、久しぶりに行き
この世の無常を感じました。八の宮の山荘はやはり人に道心を起こさせる『聖の棲みか』なのでしょう。」
薫の辛そうな様子を見て、明石の中宮はあの僧都の話をするように小宰相に伝えます。

日を改めて薫がやって来たときに、小宰相はあの話をしてみました。
薫は驚愕し、何故中宮が直接話してくれなかったのかと嘆きます。
「亡くなり方がおかしいと思っていた人に似ていますね。その人はまだ生きているのですか。」
尼になったという話を聞いて、ますます浮舟だと確信する薫。
中宮が話さなかったのは匂宮に止められていたからではないかと疑い、それならば
会わないほうがよいと思います。

薫は明石の中宮に宇治で浮舟が亡くなったときのことを話し、匂宮が知っているのなら
何もしないつもりだと伝えました。
「匂宮には何も。ひどいことをしたと聞いておりますので知ればまた騒ぎになるはず。
宮の行動が世間にも軽んじられているのを、憂えているのです。」
明石の中宮の言葉に、薫は秘密がもれることはないだろうと考えます。

薫は毎月、薬師如来に寄進をしていたので、そのついでに横川に寄ることを計画し、
浮舟の弟・小君を連れて行くことにします。
横川に向かう薫は、女人が浮舟だとしても、尼たちの中に混じって、
誰かにすでに身を任せているのではないかなどど考えるのでした。

恋愛セミナー84

1  薫と浮舟  尼になった愛人

思いをかけている最中に失踪した愛人が、生きているとしたら。
そして、すでに手の届かない出家の身になっていたとしたら。
薫の浮舟に対する気持ちが明らかになってゆきます。

尼になったと聞いた衝撃よりも、まず、他に相手がいるのではないか、匂宮にかくまわれている
のではないかということが気になる薫。
いままで散々、宇治の橋姫たちとの関係に裏切られてしまった薫の、哀しい猜疑心です。

薫が宇治で号泣していたのは、浮舟のためだけだったのでしょうか。
匂宮という、俗の最たる人物をそばにして、修業に励み、女性に溺れることもなかった自分を
人よりは聖なるものに近いと思っていた薫。
もとは仏道修行をするつもりで訪れた「聖の棲みか」で、俗なる恋に出逢い、
大姫、中の姫、浮舟と、流転した軌跡。
薫の涙は自分を見失わせた恋への、悔しさゆえだったかもしれません。

浮舟も、薫の涙を通して、母君の方に思いを馳せています。
自分の一周忌のための衣が、目の前で縫われているなど、死後も彷徨ってこの世を見ている
かのようですね。
この世を捨てたはずの人々が俗にまみれている中で、ひとり物の怪になったような気持ちが
したのではないでしょうか。

中将もそうでしたが、出家した女性でも、その気になれば手に入れることは可能だと
薫も考えているようです。
尼寺にいるにもかかわらず男性を通わせているなど、ごく当たり前のように連想する薫。
仏道修行に励み、聖であることを目指していたはずの薫の現状が、露呈しています。

薫は、浮舟を取り戻すことができるでしょうか。
次回、最終帖です。


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