PS 100pieces 41-50☆41限りなく愛い奴を 演じる俺 瞳をふせて 肩を落とし わかりやすいんだよな、などと思わせて 鈎針の届く範囲で さっと戴く 1000年待った栄光って こんなもの? 「恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人しれずこそ 思ひそめしか」 ☆42 波に乗り 波を越え 波を下り また波 生まれるのを待つ はじまってしまったうねりは もうけっして やむことはなく しってしまったわたしは ただこのらせん すすむのみ 「契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪越さじとは」 ☆43 ひとつ心が いくつにもなるプロセス 君を知って 人を知って 僕が現れる 恋を破って 過去を破って また発かれる 勝どきをあげて さあつぎへ次へ 「あひみての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり」 ☆44 抱えておくことができなくて またも手に取る 幾多のツール 知る身と知らぬ身を分け隔てる なゆたの絡繰りをかいくぐり 水底を蹴った先に逢えたもの 「逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし」 ☆45 折れんばかりに すがった手にも コンマ一ミリを 埋められぬまま 邪険に払われた 寂寞の裸身抱き 伏せた目の端に 映る小さき白花 「あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな」 ☆46 舵なくば 迷う舟みち 志なくば 失う恋の道 問わねば 開かぬ 登らねば 踏めぬ このけもの道から 人が充ち 神満ちる 「由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え 行方も知らぬ 恋のみちかな」 ☆47 人恋しく思うなら ただ愛すること 失うのが怖いなら ただ与えること 孤独を選び ひとり庵にいるのなら 風の色に千客と逢い 心の彩に万人と語えること 「八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり」 ☆48 風よ嵐よ!我が心を打ち砕き なお苛む暗雲よ! そなたがいかに 責め滅ぼそうと 企んでも この志が 微塵となって霧散しても それら梁塵のひとつひとつは 脈打ち 雷鳴の鼓動となって やがて そなたを覆い尽くす その日を いまここから ただ静かに見よ 「風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな」 ☆49 漆黒の色に 浮かぶ篝火 熱のとなりは すぐに夜 照り映えたひとつ身の 闇に冷えれば蠢く二心 「みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ」 ☆50 いまようやく 僕は生まれた 手のひらの上 微かに揺れる かよわき君に 吐息あわせて この命守れと 僕は生まれた 「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな」 |