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Beauty Source キレイの魔法

ルイーズ1854『結婚』

ルイーズ 1854
『結婚』

クレアお姉さまは、いつもよりずいぶんとおめかし。
私もたっぷりひだのあるドレスを着せられています。
この日のために、歌をずいぶん練習しました。
グスタフ先生は一生懸命教えてくれたんですが、
姉さまにはなかなか満足してもらえなかったのが残念。

亡くなったお母さまはもとオペラ座のバレリーナ。
お姉さまもオペラ座でバレエの指導をしています。
兄弟は私とお姉さま以外は皆男の子。
お父さま似で絵が得意。
美術学校に行ったり、建築家の下で働いています。
末っ子で女の子の私を、家族はとても可愛がってくれているし
お兄様たちのお友達も仲良く遊んでくれるからとても幸せ。
でも、私には歌の才能はあまりないみたいです。

3才の時に歌とピアノの手ほどきを始めてもらったのに、
5年たってもあまり上達しないから、音楽院への入学も見合わせた方が
いいかもしれないってお父さまも。
お姉さまは時どき「あの方には申し訳ないけれど。」ってため息をついています。

「あの方」というのは、私が赤ちゃんのときに死にかけていたのを助けてくれた恩人で
E・ジェラールさんといいます。
ハーバリストといってどんな病気でも治してしまうお薬や、
とっても綺麗になれる化粧水を作れる人。
前はこのアパルトマンに住んでいたそうです。
手先が器用でお父さまよりも絵が上手なうえに、歌は天に昇るほど素晴らしくて
赤ん坊だった私はすぐ泣きやむほどだったんですって。

そのせいか、ジェラールさんがアパルトマンから引っ越す時に置いていってくれた
猿のオルゴール、この曲を歌ってくれていたそうなんですけれど、
これを聴くと私、とってもうっとりするんです。
歌は上手ではないけれど、美しい音楽は好きなので、気がつくと
一日に何度も何度もこのオルゴールを聴いていて。

ジェラールさんは私が生まれる前から、クレアお姉さまとずっとお付き合いがあって、
音楽のレッスン費用も全部出して下さっているのです。
居間にある素敵なピアノもジェラールさんの贈り物。
どうして私がお母さまやお姉さまのようにバレエじゃなくて、
歌を習っているかという理由はジェラールさんのご希望だからなんです。
ついでに言うと、お兄様たちの学費もジェラールさんが助けてくださっていて
お父さまはとっても感謝しています。

ジェラールさん、今はバイエルン公爵のもとにいらっしゃるのです。
そう、ご成婚になるエリザベート様のお父さまのお城。
オーストリアに嫁がれる前のエリザベート様にピアノや歌をお教えになったり
お肌を綺麗にするための薬草を処方して差し上げているんですって。
皇帝の花嫁になるのも大変かもしれません。

皇帝ご夫妻の結婚披露に、どうして私たちがお呼ばれしたのかしらって聞いてみると
「あの方のおかげよ。」とお姉さま。
(お姉さまがあの方っていうと、とっても遠い目をするの。)
美しいものがたくさん集まる皇帝陛下の結婚式を、芸術家であるお姉さまと
芸術家を目指している(はずの)私に見せるために、公爵に頼んでくださったのだそうです。
おめかしして馬車に乗っているのはそのためで、お姉さまと私とグスタフ先生は
いったんバイエルンのお城に向かっているところです。

お城に行ったら、ジェラールさんに、お会いできるかしら?
私、猿のオルゴールのことで質問したいことがあって。
オルゴールを抱えていて気づいた秘密、お姉さまにも言っていないのです。
(いつも聴いている曲は「仮面舞踏会」という題名。歌詞もグスタフ先生から教えていただきました。)
それは猿の帽子のすぐ下をギュっと押すと、オルゴールの曲が変わること。
はじめは壊れたのかと思って、それで誰にも言わなかったんです。
聴いていると、心臓がどきどきして体が熱くなってくるこの曲の題名が知りたくて。
もし歌詞があるとしたら、この曲なら歌ってみたい。
どうぞ私に歌えるものでありますように。


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