支えになる存在を失って初めてあなたの本当の強さがわかるのかもしれません。
真の美しさが立ち現われる時、人はどんな行動をとるのでしょうか?
第十六帖 関屋<せきや> あらすじ
源氏を拒み通したあの空蝉の夫は常陸の介(ひたちのすけ)となり、任地に妻を伴なっていました。
源氏が京に帰ってきた翌年、空蝉も夫と帰京します。
石山寺に願ほどきに出かけた源氏は偶然、任地から帰る途中の常陸の介一行に逢坂の関で出くわしました。
田舎帰りにもかかわらず、洗練された女車(おんなぐるま)の中に空蝉がいると知り、
源氏はかつて小君といった空蝉の弟、右衛門の佐(うえもんのすけ)を呼び寄せます。
源氏からの伝言を受け取った空蝉は昔の思いが蘇りますが、ことさらな返事もできません。
昔、空蝉の弟ということで、とり立ててもらった右衛門の佐でしたが、
源氏が京を追われた時に供はせず、常陸に下ったことを申し訳なく思っています。
源氏はそのことは色にも出さず、屋敷に参上した右衛門の佐に再び空蝉あての歌を届けさせました。
昔と変わらぬ源氏の態度に感動した右衛門の佐は、姉に返歌を強くうながします。
「逢うという名の関所なのに嘆きの茂みの中に分けられてしまった二人なのですね。」
源氏はその後も便りを送りづづけました。
しばらくして、常陸の介は亡くなってしまいました。
義理の息子である河内の介は空蝉に以前から思いをかけていて、ここぞとばかり近づこうとします。
空蝉は疎ましく思い、誰にも相談しないで出家してしまうのでした。
恋愛セミナー16
1 源氏と空蝉 昔の思いは変わらず
昔の女性が、また現われましたね。
空蝉という、美しくも、身分高くもない女性。
彼女が源氏の心をとらえ続けるのは何故なのでしょうか。
なびかぬ風をふかせようとする源氏。
それでも、昔の焦燥感はなく、年齢を重ねた男の余裕を見せています。
何も言わずに出家してしまった空蝉。
かつて、衣をすべり落として源氏から逃れたように、憂い多いこの世をあっさりと捨て去るのです。
義母に恋する義理の息子という関係はどこかで見ましたね。
藤壺と源氏です。
身分という点では比べることもできませんが、この関係が二度も出てくるということは
この時代にはあり得ることなのではないでしょうか。
特に、経済的に窮乏するであろう空蝉のような女性が、
義理の息子の隠れた愛人になる可能性は高かったのでしょう。
空蝉は古今、作者の紫式部がモデルと言われていると以前お伝えしました。
もしかしたら、夫を亡くした紫式部自身が、
未亡人に対する世間の扱いを意趣返しに描写してみたのかも。
源氏のモデルの一人で、紫式部の愛人と言われる藤原道長への
あてつけもあったかもしれませんね。
紫式部の夫・藤原宣孝は当時評判の伊達男。
空蝉の夫・常陸の介も、さりげなく端正な容貌と描写されています。
紫式部も彼女の描き出す空蝉も、夫と親子ほども年が離れていますが、
父親にいだかれる娘のような甘える妻であると同時に、
世間が思う以上に夫を愛する恋女房だったのでしょう。
源氏の物語を誰よりも自慢していたのは夫・藤原宣孝だったとか。
紫式部は物語の著述が一段落した時に出家したと言われています。
義理の息子どころか、源氏の庇護も自分からは求めようとしない、
後先を考えない気位の高さ。
空蝉もまた、己のライフスタイルを貫く女性と言えるでしょう。
先に手放した方が、相手の心に強く、美しく残る。
Catch and Rereaseをまず実践したのは、他ならぬ紫式部自身だったのかもしれません。
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