9年半。
シャーロットが去り、サラが逝ってしまってから、
そんなにも時がたっていたのかと改めて思う。
同封されていたフランキーの手紙には、本をとても気に入ってくれたこと、
地理の成績のこと、サッカーチームのことなどと一緒に、
彼の本当の父親との別れについて書かれていた。
「ママには僕がついてるからね。」
気丈に男らしく振る舞おうとする様子が浮かんでくる。
僕も、母に何度もそう言っていたっけ。
自然に心が和んできたのを、次の結びまで読み進めて愕然としてしまう。
「きっとまた、会えるよね。
いつかまた、あの海岸のドックで、船が見えたときに。
あなたの友人 フランキー」
普通に読めば、何のことはない。
ただ会いたいと伝えてくれている、子どもの素直な気持ち。
けれど僕にとっては、どうしても見過ごせない言葉。
いろんなガラクタがたくさん転がっていた一階で日がな一日遊び、
二階で並んで船を眺め、海に繋がる世界を想像した古びた家。
最初に思いを告げ、あの夜導かれるように、再び出会った場所。
サラと僕は、あの東屋をドックと呼んでいた。
一緒に添えられていた短い伝言で、僕の惑いは確信になった。
「大切な友人へ
11月13日は、あの子の10回目の誕生日です。 リジー」
きっとまた、会えるわ。
あの海岸のドックで、一緒に船を見ましょう。
彼女はそう言って、あの年の11月、死出の旅についたのだから。
心波立たせながら、もうひとつ、僕は手紙より前に受け取っていた通知を読み直す。
NYに戻ってすぐに依頼した調査結果。
父は、まだ生きていた。
カナダの大きな都市で、パートナーと共にホスピスにいるという。
そのときまでは迷っていた。けれど今、
フランキーと共有したひとつひとつの出来事と、リジーの勇気と、
シャーロットの涙の粒の数々が同時に押し寄せて、僕は思う。
事情が変わったと。
あのときフェード・アウトするしかなかったストレンジャーは
このあと、どうするべきかをやっと知ることができた。
いや、どうするべきかではなく、どうしたいかを。
ああ、待っていたんだよ、僕は本当に。
そして、きっとあなたも。
僕はモントリオール行きの便を予約し、再び荷物をまとめた。
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