リストの「
愛の夢」の演奏で始まったフジコ・ヘミングさんの回。
リストとショパンを弾くために生まれてきたと世界中で絶賛されるピアニスト。
フジコさんは、いつも自分の人生を思い返しながらピアノを弾かれるとか。
イングリット・フジコ・ヘミングさん・・・ベルリンでスウェーデン人の画家である父と
日本人のピアニストである母との間に生まれる。6歳で両親が離婚、
小3でラジオでの生演奏をする天才少女、東京芸大を卒業、ドイツに留学。
世界デビュー目前で聴覚を失い、長く失意の底に。
1999年、東京芸大でのコンサートが大絶賛され、ついに本格的デビューを飾る。
【フジ子・ヘミング/リスト:ピアノ協奏曲 第1番】
江原啓之さん・・・江
美輪明宏さん・・・美
国分太一くん・・・国
フジコ・ヘミングさん・・・フ
「
愛の夢」は美輪さんも大好きな曲。
フジコさんは、
「ヨイトマケの歌」を思い出しながら、演奏されたのだそう。
美「情味がたっぷりおありになるのよね。
情のあるピアノを弾く人って
今はほとんどいなくなりましたよね、そうじゃありません?」
フ「今はそういう風に弾かないなんてね、やきもち妬きの世界的なピアニストに
言われたことがあるんですよ。それで私、じゃあかまわないわ、舞台なんか出なくても、
一人で猫相手に弾いてますって言ってね。あなたたちは情のないピアノを弾いて
お客様集めなさいって思ってね。」
美「特に芸術家の世界っていうのはね、一人ひとりがお山の大将でね、
自分以外のものは認めたくないと、優れたものは排斥したいというのが渦巻いてるの。
特に外国はね。(いつも美輪さんのおっしゃる「右手に薔薇、左手に短剣」、ですね。)
その一番欠けてる
心の部分で演奏するピアニストがフジコさんで、
久しぶりに出ていらしたからみんな、うわーっと飛びついたわけ。」
美輪さんの舞台も、いつもこの心意気が溢れていますね。
フジコさんの装いは上は着物、下はレースで、モネの絵にあるようなジャポニズム。
☆ジャポニズム ・・・19世紀後半、日本美術の影響を受けて、欧州などで流行した
芸術の傾向。映画「オペラ座の怪人」のマダム・ジリーの装いがまさにこれですね☆
【フジ子・ヘミング こころの軌跡-CD】
美「私たちの大好きな
ジャポニズム、明治から大正、昭和初期にかけて
日本文化が向こうへ行ったときに、ドレスの上に日本の着物を着たり羽織ったりするのが
大流行した時期があるのよ。」
フ「このあいだ、これでスロベニア・フィルハーモニーでベートーヴェンを弾いたら、
指揮者がとても感激して喜んでました。」
美「モネやマネやゴーギャン、ロートレックとかね、ゴッホとかあの時代なのよ。
だからそれを再現なさってるのね。」
5歳でお母さまの指導のもと始めたピアノの道はとても厳しく、
毎日2時間の練習を2度3度繰り返すというもの。
お母さまはフジコさんを決して褒めず、ののしることもあったそうですが、
これもすべて、娘を一流にするため。貧しくとも最高の教育を受けさせてくれたとのこと。
【憂愁のノクターン】
国「フジコさんにとって、やはりお母さんは大きな存在でしたか?」
フ「一番好きなのは、母だと思いますね。16、7の頃なんて大嫌いで。
やはりあまりわけのわからないことで怒鳴ったり、傷つけられたりすると。
そういう時代があるじゃない、若い人の。」
美「反抗期ね。」
フ「そう、反抗期。」
国「全然褒められることはなかったんですか?」
フ「全然。私の容姿からなにから『お前はやっぱりだめだ』
『弟の方はきれいだけどお前はだめだ』『よその子はやっぱり綺麗だ』とかね。
劣等感の塊になっちゃうようなね、ことしか言わなかったんですよ。」
国「ピアノを弾くときはお母さんの時計を必ずつけてするとか。」
フ「これね。うちの母が買ってくれた時計。今、天国でちゃんとみてるだろうと思うから。」
【愛の夢~假屋崎省吾クラシック・セレクション】
江「いやいや、天国どころか、さっきからピアノの横にいましたよ。
ピアノを弾いているときにみんなに自慢してたんです。
『
この子はピアノを弾くために生まれてきたんだから』と言ってね。
それでいてね、フジコさんが時計のこととかを言うと、『馬鹿』って言うんですよ。
ごめんなさい、フジコさんだけに言う。周りの人には『聴いてくださいこの子を』って。」
美「自慢するのね。」
国「フジコさんに対して、いまもそういう言葉を使ったりするんですか?」
美「それは
愛情の言葉をね、ご存じないのよ、このお母さんは。
だからそれが愛情表現のひとつだと思ってるわけ。」
国「今はどうなんですか。褒めたりすることはあるんですか、フジコさんのことを。」
江「ピアノの横でね、腕組みして立って、ずーっと見ててね、にこにこ笑ってた。」
フ「うれしいです。」
フジコさん、本当に可愛らしいお顔で微笑まれます。
【魂のことば】
美「だって、今の演奏、本当に
薔薇色だったわよ。」
フ「私も本当にうれしかった。リハしててなかなかのってこなくて、これは間違えたら困るな、
美輪さんがせっかくあそこで座ってるのに、いい演奏したいな、なんて思ったら。
神さまにお願いして『どうぞ神よ、助けたまえ』と言ったら、本当にいい演奏ができましたね。」
美「素晴らしかったですよ。聴いててお分かりになったでしょう?」
フ「私もわかる。」
江「お母さんはね、『
私の音色だ』と言ってきかないんです。さっきから。」
国「自慢しながら聴きつつも、『これは私の音色なのよ』面白いですね。その関係というのは。」
なにしろ、「
ヨイトマケの歌」の想念が籠められていたのですものね☆
続きは明日に。
お母さまとの関係、猫やこれまでの人生の経緯などが、明らかになってゆきます。
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