安藤サクラさんは、クランクインの四日前に主演に抜擢されたそう。
元々は、主人公・真理子の所属する合唱部の部長役として、
作品中でソロを歌う二人の出演者と共に、撮影前から
オペラ歌唱のレッスンに通っていたのだそうですが、
直前になって主役の女優さんが降板、サクラさんに白羽の矢が立つことに。
【映画の内容に触れますので、お読みになりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】
観賞後の舞台挨拶によると奥田監督は「親馬鹿チャンリンになるので」
娘さんを主役にすることはとてもできないと思っておられたよう。
企画そのものが中止になる可能性もあったそうですが
撮影スタッフさんが『いけますよ』と言ってくれたこと、
奥さまの『あなたが家族に対して頑固さを解くために授かった素敵な機会』
といったお言葉が後押しして下さったのだそうです。
実際には、サクラさんを娘ではなく女優としてみられるようになるまで
一週間ほどかかったそう。
「あるときから『あ、女優には美人ではなくても
大竹しのぶや寺島しのぶのようないい演技をする人がいる。
サクラも同じだ』と気づいてから、女優としてみられるようになりました。
確かに、演技は上手いですから☆」とのこと。
お母様そっくりの、若いながら老成された魂を持つことが伝わる顔立ちは
予告で拝見していたときは高校生にはあまり見えなかったのですが、
映画の中での所作や声のトーンはきちんと10代の瑞々しさが表現され
大切に育てられた芯の強い女子高生を好演しておられました。
今年は「風の外側」以外に、主演作品が3本ほど公開が決まっているそう。
世界に羽ばたく女優さんになってゆかれることでしょう。
真理子の相手役・聖文をつとめられた佐々木崇雄さんは、
東京、パリ、ミラノコレクションの舞台を歩いておられるモデルさん。
TVドラマの「バンビーノ!」、美輪明宏さんの2005年版「黒蜥蜴」の
用心棒役で初舞台を踏まれているのを拝見したことがあります。
聖文の役どころは、荒んだ中にも女子高生の心を捉える魅力が必要なのですが
立ち姿が非常に美しく、真理子が惹かれるのも納得できました。
いつも同じ一張羅のスーツを着ていても
常にケアされた綺麗な白いシャツを身につけているのは
貧しい中にもきちんと育てられた背景がうかがえる演出のように思います。
その聖文の兄貴分・田丸修役をされたのが、北村一樹さん。
ドラマ「大奥」では将軍から側用人、歌舞伎役者まで、
蜷川シェイクスピアのオールメイル公演「間違いの喜劇」では主役を、
佐々木さんとの共演ドラマ「バンビーノ!」や、「わるいやつら」での
スマートさ、繊細さ、男気、コミカルな部分を真率に演じ分けられているのを拝見、
毎回観るのが楽しみな、得がたい役者さんとお見受けしております。
「皆月」では、俳優・奥田瑛二を向こうにまわして、互角の闘い、
狂気を感じさせるほどの役柄を見事に活きていらしたので
予告でお名前を見たときから、再共演にも期待していました。
キーパーソンの一人とはいえ、あくまで脇役として出演されているはずなのに
存在感の大きさ、密度は、やはり奥田さんと張るものがあります。
彼がスクリーン映ると、なぜこうも場面が印象的になるのでしょうか。
田丸のラストショットは、監督をする方が撮ってみたいと熱望するような
名シーンになったと思います。
面白い趣向だなと思ったのが、江原啓之さんと綾戸智恵さんのご出演。
オペラ歌手を目指す主人公に合わせて、歌手として活躍されるお二人が
歌に関する役どころをつとめておられます。
江原さんは、とってもハンサムで女性にモテモテだった時代があったそうで
台詞がとってもはまっていました☆必見ですよ☆
続きます。
「風の外側 下関スカラ座HP」
「風の外側 観賞1」
「長い散歩 観賞」