学級文庫に四谷怪談があったので、給食を早めに終えて
手にとっていたのが、小学校は三年生のころ。
【舞台の内容に触れますので、ご覧になりたくない方は、どうぞスキップなさって下さいね】
同時に読んでいたのが世界の怪談といった類のタイトルで
収録されていたのがポーの「黒猫」など。
クラス内でも、怪談本などは人気で貸し借りもよく行われていました。
文庫にあった四谷怪談は、お岩さまの仇・伊右衛門を討ち果たした侍が
吉良邸に討ち入りに行く、というラスト。
ですので、私にとって四谷怪談とは、忠臣蔵とワンセットという
インプットのされ方をしていますので、今年六月、中日劇場で
この二作品がミックスされた歌舞伎公演を観る機会を得たことは
幼馴染に会うような懐かしい感覚があったのでした。
猿之助さん演出の今作を初めて観て、意外に思ったのが
直助が中心人物だったこと。
頭が柔らかいときに入った記憶では、お岩さまの夫が伊右衛門、
彼に横恋慕するのがお梅、お岩さまの妹がお袖、
直助も名前は覚えていたものの、伊右衛門の腰ぎんちゃくといった印象で、
要所要所に現れていても、中心人物といった認識は持っていなかったため、
悪役好みの身には、伊右衛門よりも先に名前が出てくる場面もあることに
やや戸惑いを覚えました。
思えば、この「要所要所に現れる」という立場が実は重要で
芝居を本に起こしたものに触れた小学生には読み取れなかったものの
もともと彼は狂言回しの役目を担っていたのかもしれません。
江戸時代は、昼夜に分けて演じられていたという二つのお芝居を
現代に蘇らせた猿之助さんは、直助という役どころを気に入っておられたよう。
今回は右近さんが直助をはじめ、大星由良之助など四役をこなしておられました。
数年前、八犬伝の犬坂毛野で麗しい様子を拝見して愉しみにしていた春猿さんは
斧定九郎を。女賊姿から転じる男性的な役柄は今回も魅力たっぷりでした☆
伊右衛門の段四郎さんは、虚無的な美を持つ極悪人という難しい立ち位置に
見事に徹しておられました。彼が中央にいる四谷怪談も観てみたいなと思います。
さて、宙乗り、本水、立ち回りの果ての大団円の後に、サプライズが。
初日公演とはいえ、歌舞伎公演でカーテンコールがあったのも驚きだったのですが、
右近さん、春猿さんとご一緒に演出の猿之助さんも姿を見せてくださったのは
嬉しい出来事、また歌舞伎に足を運びたくなったのでした。
「歌舞伎 鑑賞の日記」