猿之助さん演出、横内謙介さん脚本の舞台の初日に足を運びました。
【舞台の内容に触れますのでご覧になりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】
劇場に行く前に、水滸伝のことを調べようとネットを逍遙していたところ、
脚本の方の名を以前、どこかで目にしていたように思えてきて、人名検索してみると、
高校時代に演劇部で台本を使わせていただいた方だということが判明。
「山椒魚だぞ!」というその脚本で、横内さんは全国大会にも行かれたのだそうで、
初出場で上演は1時間以内という制限時間をご存じなかったため、失格になるところを
作品の素晴らしさから審査員の方が惜しまれて入賞されたという経緯も載っていて。
同じくいつも制限時間いっぱいで危ない橋を渡っていた?我が演劇部の
懐かしき思い出も蘇ったのでした。
その後、横内さんは善人会議という劇団を主宰されていたそうで、知らぬまま
一度だけその舞台を拝見していたこともあって、小劇場華やかなりし頃の息吹が
歌舞伎にも生かされているのかしらと、愉しみに出かけました。
新・水滸伝は、梁山泊に集う世間には悪党と呼ばれる人物たちの物語。
言葉は平明、衣装は一方は赤、一方は紫、旗士の舞に剣士の舞と
目にも耳にも分かりやすく、彩なる世界に気軽に浸れます。
チケットを取ったのは、春猿さんを年に一度は舞台で観たいからなのですけれども、
よくよく聞けば時に残忍極まりない台詞を放つお夜叉という美貌の殺し屋さんの、
コミカルで可愛い仕草と言葉回しに、今回もするすると心地よく惑わされました。
もう一方の華、笑也さんの演じる敵方の青華も、可憐で美しく。
青華と、彼女に恋した無骨で愛嬌のある王英(猿弥さん)と、彼と親しいお夜叉が絡むあたりが
策謀渦巻く物語に程よい緩衝材かつキーポイントになっているように。
足場を使ったシンプルな装置、真正面を向いたまま交わす半ば叫ぶような早台詞や動き、
客席を縦横に駆けて観客をも舞台に巻き込み、頻繁に笑いを取りにゆくなどの趣向は
小劇場ティストかしらと思いつつ見ていると、大劇場用に特別に加えられたという
宙乗りで右近さんが見得をきり、ラストは人情味たっぷりの大団円、
歌舞伎を観た充実感も、きちんと得られました。
初日のためか幕が降りたあとは手拍子が始まり、昨年の「四谷怪談忠臣蔵」同様、
猿之助さんが舞台に現れたのも嬉しく。先回拝見したときよりもお元気そうで、
手を上げて大きく振る姿に、客席みな一体となって応え、喜んだのでした。
追記
先ほど、今回の舞台をご一緒した方がメールを下さって、
横内さんのブログを教えていただきました。なんとなんと、
初日の夜の部の大向こう、何度も掛け声をしておられた方々は、
猿之助さんご本人と、横内さんだったとのこと。物凄く贅沢な初日だったのですね。
(abeさん、いつもありがとうございます☆)
「歌舞伎鑑賞の日記」