玉三郎さん、海老蔵さん、獅童さん出演の泉鏡花作品に先日、足を運びました。
【作品の内容に触れますので、ご覧になりたくない方はどうぞスキップなさってくださいね】
シネマ歌舞伎、ゲキ×シネと、このところ少し遠方の映画館まで行って観ようと思えるのは
舞台にも迫る臨場感と、映像処理の巧みさで、すんなり作品に入り込めるから。
それでも、たしかにこれまでも、通常の公開作品よりは舞台を映像化したものには
比較的、たくさんの人が来ているという印象があったのですけれど、
今回の天守物語は、客席のほどんどが埋まっていて。
これでも余裕をもって数十分前には窓口に到着していたのですけれど、
空いていたのは前列2列目、それもほぼ無くなりかけていたのをようやく取って、
普段、歌舞伎の舞台に馴染んでおられる様子の方々に混じって並んで。
谷底のような、天守を見上げるような場所で、首をよこにも傾けながらの
不安定な体勢で始まった映像、玉三郎さんの解説をお聞きしてから、
幽玄の舞台が展開されたのでした。
うっすらと暗い照明に融けるなだらかな線で富姫の登場。舞台では
背景を含めた晴れがましさ煌びやかさのなかで、役者さんの美しさは際立ち、
見なくてもよいものは見ないという視点にもなれるのですけれど、映像では
それができないことも、ままあって。
見たいものをよりよく見せるという視点のカメラワークのため、かえって
見なくてもよいものまで映してしまうという両刃の映像をつかっても、
耐えうる美しさが、富姫にはありました。
図書さまの海老蔵さんは、源氏物語のときも思ったのですけれど暗闇に近い場所においても
声も姿も素晴らしく映える方。堅牢な塔に押し込められた麗人のこころを溶かす
騎士としても、まったく嘘を感じさせずに存していらっしゃいました。
獅童さんの名をみたとき、天守物語のなかで演じられる役は、
ここしかないと思われるほど、イメージにあっていたのが朱の盤。
文字で読んでも相当にグロテスクな場面を、ほどよく和らげ救っていらしたように。
無理な姿勢で首がいたいはずなのも忘れるほど麗しかった映像、
舞台でのお姿を当地でも拝見できれば、どんなにか嬉しいこと…と願いながら
後日、御園座の白浪五人男に足を運んだところ、玉三郎さんの
「ふるあめりかに袖はぬらさじ」が上演されるとのこと。
1月、2月、3月と続けてシネマ歌舞伎を鑑賞後に満を持してライブにも臨めればと。
「映画鑑賞の日記」
「歌舞伎鑑賞の日記