「貴婦人と一角獣」展の会場からJR駅まで、案内には徒歩10分とあるので
15分見積もって出発したのですが、信号に引っかかったためか、予定の電車の時刻は
過ぎてしまっていて。
それが台風が通過中だったため、定刻を数分過ぎて直通の電車が到着、
慣れない土地で乗り換えることなく劇場近くの駅にたどり着くことができたのでした。
数十分、電話にかじりついて確保した席は、二階の後方近く。
オペラグラスがなければ、誰が演じているのか分からないほどの場所でしたけれど、
数年前に鑑賞した藤原竜也さん主演の舞台とは、やはり大きくティストの違う作品になっていて。
あまりにも名高い「かもめ」、主人公に待ち受ける運命からは、とてもそうとは思えないのですが
チェーホフは、喜劇としてこの作品を描いたのだそう。
幕が進むにつれて、やはり喜劇とは受け止めにくい運びになるのですけれど、
第三幕目までは、何度か無理なく笑いの起こるような演出になっていて。
藤原さんと共演していた時の美波さんの、いかにも何かを訴える瞳をもった
宇宙を背負ったようなニーナも素敵でしたが、生田さんのトレープレフの演出に応える
蒼井優さんのコミカルなニーナも、面白く拝見しました。
もう少し酷薄なイメージを以前は抱いていたトリゴーリン、今回の野村萬斎さん演じる作家は
蒼井さんのニーナとお似合いに見えて、トレープレフからのりかえた感覚も
理解できるように。
こんなに元気な人だったかしら?と思ったアルカージナ、大竹しのぶさんの舞台は
二度目でしたけれど、トレープレフとの罵り合いも愉しげで。どうしても深刻になれないはずの
紙上の女優を、さすがきちんと顕現されていました。
ストンと舞台から降りるように、ふと姿を消してしまうトーマ・トレ-プレフは、
自分の作品を丸めて笑うごとく、右往左往する人々を喜劇の板に載せることに
成功されたのかもしれせん。重々しい感覚が残らなかったのは新鮮に思えました。
千秋楽のためか、カーテンコールは5回はあったでしょうか。
申し訳なくも客電がついても戻ってきて下さった演出のKERAさんはじめ役者の皆さま、
スタッフの皆さま、ありがとうございました。
「休日スタイルの日記」
「本&アートの日記」
「生田斗真さんの舞台の日記」
「藤原竜也さんの『かもめ』鑑賞の日記」