ロココ三様・源流から前衛まで.
ハプスブルグの財宝には古伊万里に銀を細工したテーブルウェアもあり、目録には「宮廷銀器コレクション」とあります。いわゆる丼茶碗のような深めの食器や、醤油ポットの、蓋や縁や底の部分にエレガントな植物モチーフやクロスの銀装飾が施され、優雅に伸びる腕部と軸足付きの金銀細工の食器籠に載せられているという趣向。【白磁製サービストレー】同じく古伊万里を銀で縁取った宝石箱や、富士山の図柄の漆の長持やチェストも。マリア・テレジアは東アジアの工芸品に傾倒していたそうで手に入れるためには財貨に糸目はつけなかったとか。マリー・アントワネットのお嫁入り道具には母・マリア・テレジアが持たせた源氏物語の蒔絵もあったとか。彼女のオリエンタル趣味の深さが伺えますね。かの物語の内容も知っていたとしたら、朝夕目にする工芸品に、悲劇の王妃が自分を重ね合わせる場面もあったのかもしれません。ブルボン王家との贈り物合戦にも陶磁器はよく使われたとみえ、ルイ15世が贈った「ウィーン宮廷のための限定セット」も。185点あったセットの、今日まで45点伝えられているうち、展示品は3点で、「ゴンドラの形をしたスープ鉢」、「ボトルクーラー」、「貝の形をしたコンポート皿」。フランス王立磁器製作所の絵付師が描いたモチーフは番いの鳥が「愛のテーマ」を暗示しているそう。源氏が娘・明石の姫の輿入れに用意した道具の中にも描かれそうな図柄です。【アウガルテン「マリアテレジア」 ティーカップ&ソーサー】展覧会に出かけたあとは、子供に何が気に入ったか、印象に残ったかを聞くようにしています。今回、子供が選んだのは「金羊毛騎士団員の正装」。ワインレッドのビロードのコートに、白いサテンの裏地と裾飾り、騎士団のシンボル、金の羊皮・火打ち金・火打ち石を表わす金糸の刺繍。同じ素材の垂れ頭巾も金糸の刺繍が施され、165センチのビロードの帯が左肩に掛かる・・・という豪華なもの。1429年に創設、現在も存続する王家を守る騎士団員は、「カトリック貴族で、由緒正しき者のみが、オーストリア・ハプスブルグ家の宗主によって任命」されているそう。【ヘレンドプティットローズ】王家を守るといえば、「聖フランシスコ・ザビエルの胸像」も。真ん中のハート型にくり貫かれたガラスケースには、日本にキリスト教を伝えた聖人の「聖遺物」が収納されているのがよく見えます。こちらは他4体の「胸像型聖遺物箱」と一緒にマリア・テレジアの私室に置かれていたとか。【マリアテレジア】私が印象に残ったのは、「マリー・アントワネットのライティングデスク」。ローズウッド製、セーブルの素焼き陶製の浮き彫り、金メッキのブロンズのアプリケ飾りなどで覆われ、折りたたみ式の書見台は装飾を見せるためか、畳まれた状態、ターコイズブルーに見えるその装飾は、皮革とか。足を載せるあたりには、古伊万里の装飾に似た小さな金の籠。彼女のサイズに合わせて作られたと思われる机は、ロココの女王にふさわしく、とてもコンパクトでした。ここで書かれたことでしょう【マリー・アントワネットとマリア・テレジア秘密の往復書簡】さてさて、ロココ三様のうち、あと二つのロココ体験のひとつが子供の念願だった「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」を筆頭としたお洋服のあるフロア訪問。本物を見たあとに、レースとフリルとリボンの実物に触れて満足したのか、気圧されたのか。いずれにしても、次のお年玉の行く先は決まったようです。いまひとつは、その日芸術センター横の広場で行われていた「世界コスチュームプレイサミット」観覧☆幻魔大戦のキャンペーンで当地にいらしていた東丈役の古谷徹さんに、ちょうど子供と同じ年代のときにサインをいただいているのですがその彼が地球連邦軍の青い制服に身を包んで、司会をしておられてかなりデジャブな感傷を覚えました☆黒山のように各国から人々が集まる中に絶好の鑑賞ポイントを見つけ子供達を監督できる位置から少し離れて読書。黄昏時のビル街の空の下で「カフェー小品集」を読み終えようとする頃、耳に入ってきたのが懐かしき「ベルサイユのばら」のテーマソング。もちろん、♪愛、それは~♪ではなく、♪薔薇は 薔薇は♪の方☆9カ国参加した中で、このベルばらのパフォーマンスをしたのはやはりというべきか、日本チーム。エッフェル塔を模したTVタワーの近くの広場での受賞式で、彼らが二位になったのを確認し、人波を逃れて早めに家路につきました。ロココの源流から前衛までの体験、将来いかに花開きますことやら。「ロココ三様・まずは本物を」「ロココ三様・女王の作り方」