恋でキレイに78~源氏物語で恋愛セミナー【蜻蛉3】~
姉にも妹にも同時に恋する男性。恋人を失った悲しみの癒し方。第五十二帖 <蜻蛉-3 かげろう> あらすじ匂宮と薫の心はなかなか癒えません。浮舟を失った辛さを、匂宮は浮気沙汰で、薫は読経や浮舟の親族の世話をしたりして紛らわせています。薫は女一宮に仕える小宰相(こさいしょう)の君を贔屓にしていました。この女房を、匂宮も狙っていましたが、小宰相の君は全く相手にせず、ただ浮舟を失った薫のことを気にかけています。「あわれを知る心は人に劣りはしませんがものの数にも入らないこの身。ただあなたの悲しみを感じるままに時は過ぎて。」いっそかわりに亡くなっていれば、という小宰相の歌を嬉しく見る薫。「定まることなきこの世とわかっている憂い多いこの身。それなのに人に知られるまで嘆いていたとは。」小宰相の狭い部屋を訪ねて話をする薫。浮舟よりも嗜み深いと思われる小宰相がなぜ女房などになったのだろうと薫は思っています。明石の中宮は六条院で源氏と紫の上のために法要を行ないます。宮廷から女一宮と供に小宰相も来ているだろうと思い、人の気配のする几帳の奥をそっと覗く薫。ところがそこは、女一宮の部屋だったのです。暑い折りで、小宰相をはじめとする女房たちが、氷を割ろうと騒いでいる中、薄く白い衣を着て、氷を手にしている女一宮。ゆったりと微笑み、美しい黒髪をもてあましている姿から目が離せない薫。薫は屋敷に帰ってからも妻・女二宮に薄く透ける衣を着せたり、氷を手に持たせたりしてみます。我ながら妙なことと感じるものの、心惹かれる人を絵に描いて愛しむ人もいるのだから、その妹を代わりにしてもよいだろうと思う薫。明石の中宮の前で、便りがないので女二宮が寂しがっているといい、女一宮の文が届くようにします。受けとった文に書かれた文字はやはり美しく、早く気づけばよかったと思うものの女一宮への恋心を妻である女二宮に知られるわけにはいきません。全ての悩みが、あの宇治の大姫から始まっていることを感じ、中の姫、浮舟と恋患う気持ちが尽きない薫。明石の中宮は、匂宮が薫の思い人・浮舟との事件を起こしたことも聞き、心を痛めています。匂宮は浮舟を忘れることはできず、思い出のよすがとして宇治から侍従を呼びました。侍従は肩身の狭い二条院よりも、明石の中宮に仕えたいと言ったので、匂宮はその願いをかなえ贔屓にしています。宮廷で薫を遠くから見て、宇治を思い出す侍従。身分高い女性もたくさん仕えている宮廷ですが、浮舟ほど美しい人は見当たらないとつくづく思うのでした。恋愛セミナー781 薫と小宰相 慰めに2 薫と女一宮 妻の姉浮舟を失った後、二人の貴公子がどうしたかがわかるシーンです。薫の心を癒してくれるのは、まず小宰相。浮舟の身代わりに、というやさしさと、匂宮にはなびかない気強さが、今の薫にはことのほか世に有り難いものと感じられるよう。そう思った矢先、小宰相の主人である女一宮に心奪われる薫。皇女である姉妹のうちの一人を妻にしながら、もう一人の方により心惹かれる状況は父・柏木と同じ。大姫、中の姫、浮舟も姉妹であることを考えると、薫はよほどこのパターンに縁があるようです。女一宮の面影を再現しようと妻・女二宮に同じことをさせる薫。薄く肌の透ける衣に着替えさえさせるなど、これぞ生きた人形遊びの感があります。浮舟を手元に置けばかなえられた遊びを、正妻で試してみる薫は物狂おしいほどですね。