朝日のような夕日をつれて
朝日のような夕日をつれて鴻上尚史さん率いる劇団「第三舞台」のたぶん初期の頃の作品だ。私にこの脚本をくれた一人の友人がいる。もう15年も前の事。私にとって彼女は特別だった。出会ったときから、会わなくなって15年経つ今でも、彼女はずっと特別だった。親友ではない。ライバルでもない。何なのか?と聞かれると言葉にしようもないのだけど・・・苦しい時、辛い時は心でずっと名前を呼び続けていた。迷った時には問いかけていた。彼女ならどうするだろうと。彼女と時間を共にしたのはたったの2年間だったけれど、その後の私の人生観を揺るがすほどの生き様を見せてくれた人だった。あんな風に生きることが出来れば・・・私は彼女を尊敬し、それと同じくらいに憎んだ。愛情のような友情だった。音信不通になって15年のその彼女から、昨日、カードが届いた。「もうすぐおたんじょうびですね。おめでとうございます。いろいろ話したいです。」そう書かれただけの短いカード。たぶん、短大の名簿で調べたのだろう、この前まで住んでいた住所宛てのものが転送されてきた。裏には、名字の変わった彼女の名前。そして見覚えのある癖のある文字。会えない15年の間、私はいつも彼女の幸せを願っていた。誰よりも誰よりも幸せでいてほしいと願っていた。ただ・・私よりは、ほんの少し不幸でいてほしいと・・そう願っていた。いつか再会できた時、彼女より幸せでいること。それが私の生きる糧になっていた、いつもいつも。これを読んでくれたあなたには、そんな友人はいないだろうか?もしいるなら教えてほしい。私は返事を出すべきだろうか?会えないからこそ守ってきた気持ちがある。それは、私をずっと支えてきてくれた気持ちだ。今さら・・・今更、リアルな彼女に会って何かが壊れてしまうこと。それが怖いと感じてしまう。それでも、確かめたい。私の方が幸せなのか・・・こんな不純な私の心は、再会をまだ拒んでいる。