みかん日和。

2008/09/14(日)23:07

人くい鬼モーリス。

読書(55)

人食い鬼モーリス / 松尾由美 著 なんと言っても装丁が美しい。表紙だけでなく、見開き、目次、本文。 いたるところが美しいのである。うっとりするのだが、読んだことのない松尾由美作品、 恋愛小説のイメージがある作者(読んだことないくせに)。 手に取るまで、少し時間がかかった。ティーンズ向けを意識してか、文体は軽妙、テンポもいい。 台詞回しは若干、大人向け? だけど、その台詞にいちいち、受けてみたりと、 楽しいのである。 が、タイトルにもあるように「人くい鬼」なのである。 人を食っちゃうのだが、 「生きてる人」でなく、「死んで間もない人」の魂を食っちゃうのである。 もちろん、自ら手を下すことはない。 死んでいればいいってもんでもなく、やはり、怖いし不気味なのである。 当然、主人公も怖いし、びっくりする。 だけど、「彼(?)」と接するうち、何かが変わる。そもそも、主人公の彼女は女子高校生で、 10歳の少女の家庭教師(話し相手)として、避暑地へバイトへやってくる。 家庭教師とは名ばかり、実のところは少女が隠している「人くい鬼」の 情報共有者、いざと言う時の協力者。 当然、彼女は動揺し、拒否したい気持ちになるのだが、 事件が起き、それを許さなかった。人くい鬼が死んだ人を食っちゃうことに疑問を持たない少女。 「死んじゃってるんだし」 そのことに違和感を感じ、少女に説こうとするのだが、通じない。 背景にあるのは、彼女の生い立ち。 さらには、彼女の母、祖父の生い立ちまでさかのぼる。 「死」の概念、残されたものの感じる「死」とはあまりにもかけ離れている。 事件の2件目は、なんと、殺人事件が起きるのだが、主人公たちは、 殺人を犯した人がいて、その死体を「人くい鬼」がいただいちゃったと思いこむ。 しかし、行動するうちに、果たしてそうだろうか? もしかして、「人くい」じゃなくて「人食い」、 死んだ人を作るために、殺してしまったのではないだろうか? そんな疑念さえ湧いてくる。ってなドキドキ感で、後半は一気に読んでしまった。 オトナの事情とかそういったものも、見え隠れするのだが、 それは、ティーンズ向けなので、 ドロドロの部分はなくても、よろしい、なのである。ファンタジーでもあり、ミステリーでもあり。 哲学的でもあり、コミカルでもあり。 松尾由美入門書としてはナイスな一冊であった。 次に進むかどうかは謎であるが。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る