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カテゴリ:ご本といえば・・・
今さらながら藤原正彦著「国家の品格」(新潮社刊)を読みました。 ベストセラーとか、何々賞受賞作とか、そういう本を読むことはほとんどないのですが、今回は昨今の品格ブーム の先がけとなった本書 を読んでしまいました。 というのも、最近たまたま「遥かなるケンブリッジ」という本を読む機会がありました。 これは、アメリカの大学 でも教えたことのある数学者が、イギリスのケンブリッジ大学 に留学したときのことを書いた もので、イギリス人の国民性を知るに興味深い1冊というだけの理由で読んでみたのですが、読んでる途中で、この著者である数学者が「国家の品格」を著した人と同じ人物 であることを知ったことから、本書も読んでみようと思った次第です 著者の藤原正彦さん 最初の「遥かなるケンブリッジ」を読むまでは、イギリス人もアメリカ人も同じ英語を話す民族だから、似たようなものだろうと思っていました。が、実際は全く違う国民性であることを知って、ちょっとした驚き を持って読み進めることになったのです。 この「国家の品格」の中でも、よく引き合いに出てくるのがイギリスです。 日本の言うことには誰も耳 を傾けないのに、なぜ経済的にも軍事的にも大したことのないイギリスの言うことに、世界は耳を傾けるのか それはイギリスの生んできた「普遍的価値」というものに対する敬意があるからだ、というのです。 つまり、大いなる普遍的価値を生み出した国に対する尊敬は、1世紀間くらい経済が斜陽でも全然揺るがないということ。 逆に言えば、日本が今後500年間経済的大繁栄を続けようと、それだけでは世界の誰一人として尊敬してくれない、ということなのです。 (ここでいうイギリスが生み出した「普遍的価値」とは例えば、議会制民主主義という制度、文学のシェイクスピアやディケンズ、力学のニュートン、遺伝学のダーウィン、経済学のケインズ等) では、日本が普遍的価値を生み出してこなかったかというと、そんなことはなく、世界で初めて小説という形式を発明した紫式部 、俳諧という文学を確立した松尾芭蕉等、実は5世紀から15世紀の間には、ほとんど何もなかったヨーロッパに比べて、数多くのものを生み出しているのが日本なのです。 このような大発見、大発明に限らず、日本が生み出した普遍的価値の最大のものは、「もののあわれ」とか、自然への畏怖心、跪(ひざまず)く心、自然への繊細で審美的な感受性といった美しい情緒。それに加えて「武士道精神」という日本独特の形です。 日本が戦後、高度経済成長を遂げた反面、その代償に失ったものがあまりに大きかった。 市場原理主義など欧米の「論理と合理」に身を売ってしまった結果、「国家の品格」が格段に失墜しまいました。 では、その失った「国家の品格」を取り戻すためには何が必要か。 まずは、今では当たり前となってしまった、自由、平等、民主主義を疑うことだと筆者は言います。 さらに、その上でさきほど書いたような日本古来の「情緒と形」を見直すことなのです。 なぜ、「情緒と形」が大事なのかという説明で6つほど理由を挙げてますが、数学者である著者の観点からともいうべき面白い点を挙げてみます。 美しい情緒は文学や学問を作りあげていく上で最も大事だというんですが、数学をやる上で美的感覚が最も重要で、偏差値や知能指数よりも遥かに重要な資質だとしている点。 そして、本物の長期的繁栄、国家の底力には強力な数学や理論物理が必要だということ。 そのほか、国際人になるには外国語(英語)は全く関係ないとか、中国の餃子問題以前に出版された本ですが、食糧自給率を向上させなればならないとか、ユニークかつ的を得た提言を繰り広げています。 この本は今こそ、福田首相をはじめとした政治家や経済学者に読んでほしいですね そして、もちろん我々日本国民も読んで、じっくり考えてみる必要はあるでしょうね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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