検診のススメ~子宮頸癌~検診のススメ~子宮頸癌~婦人科の検診を受けた事のある人は、案外少ないのではないでしょうか。30歳(居住地域によっては20歳)を過ぎると、癌検診受診を促すハガキが送られてきた人もいるはず・・・・なのに、たいていの人が「あ、あれ、捨てちゃってました」・・・・ せっかく無料叉は格安で定期検診が受けられるチャンスなのに、なぜ皆さん利用しないんでしょう。 厚生労働省が発表している「がん検診の受診率の推移」によると、子宮癌検診の受診率は若干減少傾向で約15%。ちなみにアメリカの女性の子宮癌検診受診率を見てみると、1988年の時点で3年に1度でも検診を受けた事のある女性が79%です。この差は一体・・・・・ ここでは、定期的な子宮癌検診の大切さについて説明していきたいと思います。 1)子宮癌検診は意味がある?子宮癌の罹患率(かかる人の割合)は、確かにわずかに減少傾向です。でも、20代や30代での早期の子宮癌の発見は逆に増えてきているんです。 子宮癌は早期(0期叉は1a期)に発見されれば、子宮の一部叉は子宮全部をとることでほぼ完全に治療する事が可能です。しかし、早期の場合自覚症状はほとんど出ません。不正出血や接触出血(性交後の出血)といったはっきりとした自覚症状があったときには、たいてい進行癌の状態になってしまっているんです。 治療可能な早期のうちに癌を発見するためには、定期的に検診を受ける以外に方法はありません。 検診の種類にも色々あって、発見率の低さからあまり有用ではないとされるものも中にはあります。 でも子宮頸癌の検査は違います!厚生労働省の「がん検診の適正化に関する研究班報告」でも、「検診による死亡率減少効果があるとする十分な根拠がある」ものの一つとして「細胞診による子宮がん検診」を挙げています。ちなみに、このランクの検診は他に「視触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診」と「便潜血検査による大腸がん検診」です。 2)なぜ20代でも必要?20代で癌の心配をする人は、非常に稀だと思います。でも、30代で発見される子宮癌が増えているということは、その癌の「芽」は20代のうちに出てきているという事なんです。 癌はいきなり癌になる訳ではありません。細胞が徐々に変化して、顔つきを変えていって、そして癌になっていきます。稀に、正常な細胞からいきなり癌になってしまうタイプのものもありますが、少なくとも子宮頸癌によくあるタイプの癌は徐々に変化していくタイプのものです。 この変化には何年という時間がかかります。なので、その途中で発見する事が出来れば、早いうちに癌の芽を摘み取ることが出来るというわけです。 じゃあ何歳くらいから調べるのが適切なのか・・・・性交経験の開始から3年以内、もしくは20歳を過ぎたら、2年に1回は検診を受けるべきです。 この根拠の一つは、先ほど書いた癌の発生時期の問題。もう一つは、子宮頸癌の原因の一つとして注目されてきている、HPVというウイルスの感染と関係しています。 HPVは性交でうつる性感染症の一種ですが、このウイルスのあるタイプに感染すると、子宮頚部の細胞の変化がおこりやすく、将来的に癌になりやすくなってしまうんです。ウイルスに感染してから約3年で細胞の変化が起こってくると言われています。なので、例え10代でも性交開始から3年経っていれば検査を受けておいたほうがいいという事になります。 3)検診の間隔は?厚生労働省は子宮頸癌の検診開始年齢を30歳から20歳に引き下げる代わりに、1年に1回としていた受診間隔を2年に1回にしていく方針を打ち出しました。 実際どのくらいの間隔で受診したらいいのかというと・・・・年単位というペースで細胞が変化していく事を考えたら、前回の結果が「異常なし」であれば2年間隔でも問題ないと考えられます。しかし、偶発的におこってくる見落としが約5%あることを考慮すると、1年に1回受けていれば安心といえるでしょう。 もちろん、結果が「グレーゾーン」であれば、検査の間隔は2~3か月になりますし、術後の再発チェックの方の場合も受診間隔は短くなります。 4)検診結果の見方検診の結果は郵送で受け取ったり、病院の窓口で報告書だけ渡される事も多いと思います。まったく問題なければまあ、特に心配せずにすむでしょうけれど、「クラス2 半年後に再検査を受けてください」なんて書かれていると、「え?癌なの?癌じゃないの?」「何で再検査がいるの?」なんてパニックになることも・・・・ 検査結果の大まかな見方は、知っていて損は無いでしょう。 子宮頸癌の結果は、クラスの1~5に分けられています。簡単に分けると、クラス1~2が「白=癌ではない」、クラス3が「グレー=癌になりかけの疑いがある」、クラス4~5が「黒=癌」ということになります。 クラス3はさらに3つに分かれていて、白に近いグレーなのか黒に近いグレーなのかによって、その後の治療方針が変わってきます。 以下に、大体のクラス分けの意味を書いておきます。これはあくまで目安の解釈なので、特にクラス3以上の結果に関しては、その後の検査や治療の方針はケースバイケースになります。 クラス1⇒まったく異常ありません。正常な細胞のみです。 クラス2⇒炎症による変化や加齢による変化など、癌とは関係ない良性の変化が見られます。 クラス3a⇒やや細胞の顔つきに変化が見られます。白に近いグレーです。 7~9割は自然にクラス1~2に戻りますが、残りは変化が進んでいく可能性があるので、2~3か月後の再検査や 精密検査が必要になります。 クラス3⇒中等度の細胞の変化がみられます。 精密検査をして疑わしい場合は「円錐切除=子宮の一部を切り取る手術」による診断が必要になる事もあります。 クラス3b⇒かなり強い細胞の変化が見られます。「円錐切除」による診断及び治療が必要になります。 クラス4⇒上皮内癌が疑われます。「円錐切除」叉は子宮をとる手術が必要になります。 クラス5⇒浸潤癌が疑われます。転移の有無を調べたり、手術や抗癌剤や放射線による治療が必要になります。 |