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Dr.半熟卵のつぶやき~女性医療の現場で働く産婦人科医の日記~

卵巣の7不思議

 よく「女は子宮でモノを考える」といいますが、実は女性の体をコントロールしているのは、子宮ではなくて卵巣です。女性ホルモンは、卵巣で作られているんですよ。
 子宮は卵巣からの命令に従って毎月生理を起こしたり、赤ちゃんのベッドになったりしているだけなんですね。

 卵巣は親指の頭ほどの小さな臓器で、子宮の両側に左右一個ずつあります。卵巣の中には初め、「卵母細胞」と言う卵子の元になる細胞が何百万個も詰まっているんです。この「初め」というのは、お母さんのお腹の中からオギャ~と産まれ出た瞬間のこと。つまり、女性の卵巣は産まれた瞬間が一番新鮮な状態で、あとは閉経まで古くなっていくだけなんですよ。
 当然卵の元も古くなる一方・・・女性だけが妊娠や出産の年齢を気にしなければならないのは、この「新しく作り直されない」という卵子の特性のせいなんですね。ちなみに男性の精子は毎日新しく作られていますから、つねにフレッシュな状態です。

 産まれたときに何百万個も詰まっていた卵の元は、月経がくる年齢つまり思春期をむかえるまでに、すでに何十万個という数に落ち着いていきます。排卵してないのに何で数が減るの?って思いません?詳しい仕組みはまだよく分かっていませんが、多分実際に排卵し始めるまでに、ある程度細胞たちの間でも生存競争がおこってるんじゃないかしら。
 そして、排卵し始めたら毎月1個づつ、左右交互に排卵していくわけですが、この計算だと閉経までに全ての卵の元を使い切る事が出来ませんよね?10歳で初潮をむかえて50歳で閉経だとしても、排卵の回数は500回以下・・・・実は、1回の排卵のために準備をするのは実際に排卵する卵だけじゃなくて、いくつかの細胞が同時に排卵の準備をし始めるんです。そして、最終的に選び抜かれた1個がポ~ンと飛び出ることが出来るんですね。その他の卵の元は、静かに消えていきます。ね?不思議でしょう?
 だから、閉経近くになると、卵巣の中にはほとんど卵の元が見えなくなっていきます。閉経後の卵巣の組織を顕微鏡で見てみると、若い頃はたくさん詰まっていた「卵母細胞」が見えなくなっていて、ただの繊維質に置き換わってるんですね。

 「卵母細胞」が減っていくスピードも、もともとの「卵母細胞」の数も、その人が産まれた時にほぼ決まっています。だから、閉経の時期も大体決まっているんですね。目安は自分の母親の閉経した年齢です。もちろん、栄養状態などその後の環境によっても左右されますから、あくまで目安ですが。
 この「卵母細胞」の減りが極端に早い人や、もともと数がとても少ない人が時々います。その場合、普通よりも早く閉経の時期がきてしまうんですね。これを「早発閉経」といいます。早い人は20代から閉経の状態になってしまうので、ホルモン補っていかなければいけません。ストレスや体重減少などで一時的に無月経の状態になるのとは、ちょっとホルモンのバランスの崩れ方が違いますから、両者を判別するのは簡単です。血液検査で脳から出ているLH・FSHというホルモンと卵巣から出ているエストロゲンというホルモンを測ればすぐにどういう状態なのか分かります。

 ところで、時々聞かれるのが「ピルを飲んでいると閉経はこないんですか?」というもの。ピルは体の外からホルモンをバランスよく補う訳ですから、例え自分の卵巣は閉経を迎えていても、理論的にはピルを飲み続けている限り生理(の様な出血)はずっとあるということになります。実際は60代以上でピルを飲んでいる方はいないので、何歳までピルに反応して出血するのかは不明ですが・・・・・
 閉経近くになった方のピルのやめ時は、まだ意見が統一されていませんが、大体50歳が一つの目安となります。50歳まで飲み続けたら、いったん休薬してその間にFSHというホルモンを測ります。まだ卵巣が元気に働いていれば、このFSHは一桁なんですが、卵巣が閉経をむかえているまたは閉経が近い状態だとFSHは30以上に上がってくるんです。なので、その値によってもうちょっとピルを続けるか、このままピルをいったんやめて閉経を待つかを決めていくことになります。
 また、いきなりピルをやめて女性ホルモンがガクッと下がると、更年期の症状が出ることがありますから、その時はピルの何分の1という少ないホルモンから出来ている、ホルモン補充用のお薬に切り替える、つまりHRT(ホルモン補充療法)に移行していくといいでしょう。

 もう1つ浮かんでくる素朴な疑問・・・・それは「ピルで排卵を抑えていると閉経を引き伸ばせるの?」というもの。残念ながら、上で書いたように閉経の時期は産まれたときに大体決まっています。例えピルで卵巣をお休みさせてあげても、卵巣の中に控えている卵の元は段々劣化していくんですね。もし排卵回数が少ないほど閉経を引き伸ばせるんだったら、多産だった昔の女性は閉経がと~っても遅くなってたはずですよね。妊娠中は無排卵の状態、つまりピルを飲んでいるときと同じ状態になっていますから。
 例え一生の排卵回数が50回でも、現代女性のように450回も排卵していても、卵巣の寿命がきたらそこで閉経です。

 閉経というとなんだか女性にとっては大敵!のようで、物悲しい響きまで含んでしまう事もありますよね。「あがってしまった」なんて言うこともありますが、閉経したからって女じゃなくなるわけではありません。女は何歳になっても女ですから。世界一の長寿を誇る日本の女性は、閉経後に35年もの長い人生が待っているわけです。これを楽しまない手はないでしょう?
 閉経後も元気に美しく人生を謳歌するためには、20代30代のうちからの健康管理がとっても大切です。特に、閉経後の女性の活動を一番制限してしまうのは、実は「骨」なんですね。閉経前から定期的に骨密度を測って、食事や運動に気をつけること。そして閉経後はうまくホルモン補充を利用して、骨密度を保てるように、そしてもちろん若さも保てるように、メンテナンスしていってくださいね。


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