今日の言霊:
カラ元気でも何でもいいから、
とにかく毎日笑うこと!
笑顔はそれだけでパワーを
持っているんだよ。
生理不順で産婦人科を受診したら「高プロラクチン血症ですね」と言われた方もいらっしゃると思います。生理不順の原因については、以前詳しく書いたので省略しますが、実はホルモンを測ってみると、プロラクチンがちょっとだけ高くなっている事って割と多いんです。
プロラクチンというホルモンは漢字で書くと「乳汁分泌ホルモン」、つまりお乳を出すためのホルモンです。他にも、乳腺の発育や黄体機能維持など、色々な生理作用を持っています。脳の「視床下部」から出る命令に従って「下垂体」というところから分泌されて、主に乳腺に働きかけます。この司令塔である「視床下部」と「下垂体」、以前も登場したの覚えていらっしゃいますか?卵巣に命令を出しているのも「視床下部‐下垂体」なんですね。詳しくは
「女性ホルモンって?」を読んでみてください。
このプロラクチンが正常な量よりも沢山分泌されてしまうと、ちょうど授乳中のお母さんと同じ状態になるので、排卵が抑えられて生理不順になったり流産しやすくなってしまったりするんですね。中には、授乳中でもないのにお乳が出てしまう人もいます。プロラクチンが出すぎている状態のことを「高プロラクチン血症」といいますが、昼間は正常なのに夜だけ異常に高くなる「潜在性高プロラクチン血症」や、排卵期以降の時期だけ高くなる「一過性高プロラクチン血症」などもあって、なかなか複雑なんです。特に後者2つは、常に異常値な訳ではないので簡単な検査では見付かりにくいこともあるんですが、不妊の原因となりうるので注意が必要です。
プロラクチンが出すぎる原因は、主に3つあります。
1)生理的要因
過労・過度の運動・ストレス・授乳、など。
2)薬物要因
抗うつ剤や胃薬のなかに副作用でプロラクチンを出しすぎてしまうものがあります。
外来でよくみかけるのは、ドグマチール・セレネース・プリンペラン、など。
3)病理的要因
下垂体にプロラクチンを産生する腫瘍ができていたり、甲状腺機能低下症が原因になることもあります。
高プロラクチン血症かどうかは、血液検査をしてみれば大体分かります。正常範囲なんだけどちょっと高いかも、という場合は、さらに詳しい「負荷試験」というのをすれば、潜在性の高プロラクチン血症がないかどうかも調べる事ができます。負荷試験は検査代がちょっと高いので、あまり頻繁にする検査ではないですけれどね。一応、お値段的なことも考慮しながら診療しているんです。
治療法は、原因によっても異なってきますが、基本は「まずプロラクチンを正常範囲に下げる」ことなので、プロラクチンを下げる作用のある飲み薬を使います。よく使われているのは、「パーロデル」や「テルロン」で、毎日飲むタイプです。また、比較的新しいものに「カバサール」という週1回1~2錠飲むだけで治療していけるものがあります。いずれもよくある副作用が、吐き気やだるさで、特にパーロデルは半分に割って飲んでも気持ち悪くなってしまう方もいらっしゃいます。
飲んでいる他のお薬の副作用でプロラクチンが高くなってしまった場合は、まず原因となるお薬を中止するのが先です。普通は、中止して2ヶ月以内に正常値に戻るので、わざわざ吐き気を我慢しながらプロラクチンを下げるお薬を飲まなくても、原因となった薬を中止してちょっと気長に待ってみるんですね。
高プロラクチン血症になっている場合、多くは生理不順も一緒にありますから、プロラクチンを下げる治療と平行して、ちゃんと生理が来るようにする治療も行う事が多いですね。プロラクチンが正常な値に戻れば、生理も順調になることがほとんどなので、大元の治療がちゃんとできれば、生理不順の治療も必要なくなります。
高プロラクチン血症の原因の中で、頻度は低いんですが気をつけておかなければいけないのが、3番目の下垂体腫瘍です。プロラクチンを作る脳の「下垂体」に小さな腫瘍ができて、下垂体が腫れてしまいます。「脳腫瘍」というとびっくりされる方も多いんですが、プロラクチンを作る下垂体腫瘍は良性腫瘍なのであまり心配はいりません。ただ、お薬での治療に反応が悪かったり、下垂体の腫れがひどい場合は、手術が必要になるケースもあるんですよ。生理不順で受診したのに、「脳のMRIをとりましょう」なんて言われたら、ちょっと戸惑ってしまいますよね。でも、下垂体が腫れていないかどうかを確認しておく事は、とても重要なんです。
お産の影響で、下垂体の機能に異常をきたすケースもあります。産後になかなか生理が戻ってこずに、調べてみたら下垂体からのホルモン分泌に異常が見つかる、というケースもあるんですね。内分泌の専門の先生曰く「産後の高プロラクチン血症は要注意」だそうです。この「要注意」というのは、私たち医師が「単なるプロラクチンの出過ぎ」と勘違いして他の病気を見落とさないように、という意味での「要注意」ですよ、念のため・・・・
人間の体って、ホントにうまくできているんです。一ヶ所の異常が、思いもよらない症状を引き起こしたり、ホンの小さな「ゆがみ」が思わぬ病気につながったりするんですよね。なってもいない病気の心配をして具合悪くなる必要はありませんけど、日々自分の体としっかりお話して、小さな異変も早めに気付けるようにしておいて欲しいなと思います。
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