カテゴリ:マミー
面談室でのやりとりが彼女の胸に深く刻まれていた。
村上医師の言葉は、誠実さと限界の間で揺れているように感じられたが、 それでも彼女の心を完全には癒せなかった。 「専門外だったら分からない。それが限界です。」 村上医師が放ったこの一言は、彼女の中に複雑な感情を巻き起こした。 「限界なら、分かる人に聞いてください!」 彼女の言葉は静かな部屋に響き渡り、しばしの沈黙を生んだ。 医師は頷きながら続けた。「その方がよかったよね。非常勤がいて、 僕に10日に相談が来ていたら、『見ましょうか』と言ったでしょう。ただ、その時は僕はいなかった。」 彼女は医師の言葉に食い下がる。 「でも、言わなければ分からないですよね。担当医がいた日だったのに。」 村上医師は眉間に皺を寄せながら答えた。 「それを症状だと思わなければ、誰も気づかない。 看護師も、この病棟では専門の知識を持っていない場合が多い。 大きな病院ならともかく、この規模では限界がある。」 彼女の心には、何とも言えないやるせなさが広がっていた。 医師の言葉は現実的で、ある意味正しいのだろう。 それでも、彼女の立場からすれば、その言い訳は受け入れられなかった。 「でも、私が言いたい気持ちは分かるでしょう?家族だから!」 彼女の声には、怒りだけではなく、悲しみと絶望が滲んでいた。 村上医師は静かに頷いた。 「分かるよ。それでね、これを読んだ時、ぐうの音も出なかった。 謝らなければと思ったんだ。ここであなたが指摘していることは間違いない。」 それでもなお、彼の言葉はどこか距離を感じさせた。 「ただね、現実的に考えて、お母さんの病気は進行する病気だったと思う。 その時点での症状が軽かったから、皆が深刻に考えなかったんだろう。」 彼女は深く息を吐いた。 「素人からすれば、それが軽いかどうかなんて分かりません。 ただ、私たちは異常を感じて、それを伝えた。 それでも適切な対応をしてもらえなかったんです。」 医師は感心したように頷きながら言った。 「素晴らしいことだよ、この文章にある思いは。こうやって『おかしいところ』『すべきこと』を整理して伝えるのは本当に素晴らしい。でも、現実問題として、医療現場には限界がある。言ってしまえば、家族の訴えを無視したように見えるが、それが意図的ではないことも多いんだ。」 「でも、その結果が母の命に関わったのなら、それは無視と同じじゃないですか?」 彼女の言葉に、医師は言葉を失ったようだった。 このやりとりを通して、彼女は改めて痛感した。 医療の現場には確かに限界がある。 だが、その限界を理由に、患者や家族の訴えが軽んじられることがあってはならない。 「運が悪かった」という言葉では決して済まされない現実が、ここにあるのだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 8, 2024 09:00:11 PM
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