白い沈黙
言語聴覚士(ST)との会話母の病室に入ると、見慣れない男性が母と一緒にリハビリをしていた。私は挨拶を兼ねて声をかけることにした。「こんにちは。リハビリの方ですか?」その男性は少し笑顔を見せながら答えた。「はい、言語聴覚士といいます。」母の状態を知りたい気持ちから、すぐに本題に入る。「どうですか?」彼は真剣な表情で説明を始めた。「きれいに吞み込めるところと、吞み込めないところがあります。やはり左側の舌が動かず、奥に吞み込むのが難しいようです。少しずつ左側から食べ物が出てくる感じですね。」その言葉に思わず納得しながらも、母の将来を心配して質問を続けた。「よくむせることが多いですよね、こういう障害の方って。」言語聴覚士は少し首をかしげながら答える。「ゆっくり食べていただいているので、むせることはないですね。」「自分で食べるのは無理なんですか?」「食べることもあるんですが......」彼の答えは言葉を濁しているように聞こえた。私はさらに問いかけた。「喋りの方はどうですか?」彼は少し困ったような表情を見せながら答えた。「一応聞き取れるんですが、僕は以前の状態を知らないので、どれくらい話せたのかは......」その言葉を聞いて、私は即座に返した。「普通に喋ってましたよ。」彼が続ける。「聞き取りづらいことはなかったですか?」「それはないですね。ここに来てからですよ。10日のあの日、ろれつが回らなくなった。それが最初です。」言語聴覚士は少し考えながら口を開いた。「喋っている言葉はだいぶ聞き取りやすいと思います。ただ、病前と病後でどれくらい違うのかは......」「そうですね。」と私は短く応じたが、胸の中には重い感情が渦巻いていた。彼はさらにこう続けた。「僕が話をした限りでは、ろれつが回っていないとか、何を言っているかわからないということはなかったです。もしかしたら、最初の大きなダメージから少しずつ良くなってきているのかもしれません。」「だいぶマシになってきたかな。」そう言いながらも、私はまだ心が晴れなかった。彼は続けて、寝起きの状態や疲れ具合が影響するかもしれないと話し始めたが、その説明はどこか「大丈夫」と納得させようとするように感じられた。我慢の限界が来た私は、思わず感情をぶつけてしまった。「毎日見ている者としてはショックですよ! もうびっくり!年寄りというだけで、『こういうものだから大丈夫』という方程式が、ここの看護師にはあるんですよ。」その言葉に、言語聴覚士は少し驚きながらも、「凝り固まった考え方があるんですね」と応じてくれた。「そうですよ!」と私は畳み掛けた。「何回言っても見てくれなかった。だからこんなことになったんです。」その場に漂う空気が重くなる中で、私の言葉には、看護師への不信感と母への思いが詰まっていた。返ってきた同意の言葉に救われながらも、胸の中の怒りは消えなかった。母のリハビリが、せめてこれ以上の後悔を生まない形で進むことを願うばかりだった。