私の大切な魔法の箱
「私の大切なまほうの箱」我が家はどこにでもある町の小さな電気工事店。ある日のこと、その小さな工事店に設置されたパソコン。みんなが出かけている間に、そっとさわってみた。何の変化もない、不思議な箱。夕方になり仕事を終えて帰宅した社員。パソコンにさわって何やら見ている。遠くからのぞいて見ると、何だかおもしろそう。社内の空気が一変した。数ヶ月もたつと、それぞれが、パソコンで作業をはじめた。競い合って作業をしている様子がとても楽しそう。見よう見まねで動かしてみたが、視力障害の私にはパソコンの動きはわからない。マウスポインタのマークが見えない。少しだけ子供に手ほどきを受けるが、その内「かあちゃんには無理」なんて言われ悔しさで一杯。みんなの作業した印刷物をそ-と見る。「これは私の仕事に使える、何とかして覚えたい。」と思い好奇心がメラメラと燃焼する。何とかしたいと思っていたら区のお知らせに、視力障害者パソコン講座の募集が目に付く。さっそく問い合わせ参加する。ドキドキして打った私の文字をパソコンが読み上げている。不思議な感覚。程なくして画面も拡大できることを知る。やったー。私にも使えるようになる。地図で調べてどこへでも出掛けられる。インターネットであらゆることを調べることで、弱い視覚ではなく、聴覚で理解することで、それまでの世界観が360度変わる。うれしさで一杯になる。しかし、機械オンチの私には、遠い夢の中での話。おそるおそる「私のような者は、いつになったら自在に使えるようになるのか」と質問する。その方いわく「あきらめずに練習したら、3~5年ぐらいで覚えられるよ」と、いたってのんきな話。事務の仕事をしている私は、目のつかれ、肩こり、頭痛に悩まされながら仕事を続ける毎日。そんな折、一冊の本と出会う。「最初から出来る人はいない だから努力すれば私にも出来る」目の前がパーっと明るくなった。「これだ。一日一個。」とにかく挑戦してみようと心が決まる。程なく「PCC葛飾」はウェルピアに移転。教室に通うのが大きな仕事。ぐったり。ついさっき帰ってきたような気がするのに、今日もウェルピアに行く日。いつしか「これわからないんだけど。さっきと同じ操作したのに変だよ。私のパソコンだけ、みんなと違うんじゃない。」などなど。しまいには「私のパソコンの後ろでだれか別の作業をしてるんじゃない」なんて言い出す始末。そんな私でしたが、年賀状、名刺、ワード、エクセル、写真、ブログ、メールと進み、現在、電気図面にかじりついている。私がカメラを向けたら皆さん逃げてね。だって100枚写して1枚何とかの世界よ。そんな膨大な写真も時にはスタ-よ。とびっきりお気に入りを一枚採用して出す季節の便りに、「ありがとう」の言葉が送られてくる。きっとそこには友の笑顔があるはず。続けていて良かったと、私一人で満月の笑顔。パソコンは、私と社会をつなぐ良き友。私は「PCC葛飾」のメンバーと共に、「障害は個性の一つ」を社会の中で証明していくことを使命として、あらゆる分野でお世話になった方々に恩返しができたらなと思っている。「こんにちは。誰と話ているの。」「あ、お客様」。お客様はキョトンとしている。私の大切な まほうの箱 のお話。終わり。