♪ 血の色を見せて静まる一椿(いっちん)の散りて阿吽の間(あわい)をさらす
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キッチンの窓辺にさしておいた椿のつぼみ一輪。3日ほどで開花し、あたりが急に春めいてきた。
こちらは玄関に飾ってあった椿が散ったもの。雄しべも花びらも萎みかけてはいるが、却ってその艶めかしさが増しているように感じる。
椿は首が落ちる様に花ごと落下するので、武士が忌み嫌ったという話をよく耳にするが、実際は潔いというので人気があった。こぞって品種改良をしたりして、人気の花だったらしい。
やたらに験を担ぐようになったのは明治以降で、それらの名前や実のつき方などを言葉にこじつけては格式の内に取り込んでしまった。
ツバキの花は古来から日本人に愛され、京都の龍安寺には室町時代のツバキが残っている。他家受粉で結実するため、またユキツバキなどと容易に交配するために花色・花形に変異が生じやすいことから、古くから選抜による品種改良が行われてきた。江戸時代には江戸の将軍や肥後、加賀などの大名、京都の公家などが園芸を好んだことから、庶民の間でも大いに流行し、たくさんの品種が作られた。茶道でも大変珍重されており、冬場の炉の季節は茶席が椿一色となることから「茶花の女王」の異名を持つ。また、西洋に伝来すると、冬にでも常緑で日陰でも花を咲かせる性質が好まれ、大変な人気となり、西洋の美意識に基づいた豪華な花をつける品種が作られた。(Wikipedia) |
中川幸夫 「闡 (ひらく)」
前衛華道家の中川幸夫が「椿の花」を大量に使って表現したもの。椿の艶めかしさを極限までに凝縮していくと「肉」そのものに近づいて行くという事か。赤い汁が滴るそれは命の叫びのようでもある。
待てよ、椿じゃなくてチューリップだったか、急に曖昧になって来た。
それで確認したら、4500本のチューリップを腐らせたもので制作したと判明。どちらにしてもこのオブジェのような生け花の価値は変わらない。
表面に見えているもの、我々が見ているものはほんの一部でしかなく、その奥底には血を巡らせて躍動している命の営みがある。
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