
♪ 歯応えの楽しみを知り生き越しの世に柔らかきものの溢れて
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カミさんが、読み終わったのでどう?と、小川糸の「ライオンのおやつ」を勧めてきた。タイトルからすると何だか悍ましい感じだけど、どうもそうじゃないらしい。パラパラと捲ってみて、あんまり自分から進んで読むタイプの本じゃなさそうだ。
でも、「今年は今までとはちょっと違う生活を心がけよう」って思っているので、読んでみようかという気になった。
ホスピスで最期を過ごす女性の話で、亡くなるまでの1ケ月間の出来事が平易な文章で語られていく。その文章が私にはまだるっこくて、比喩のベタなところとか、子供の話し言葉に文章語の漢語が使われていたりすることとかが気になった。
淡々と良いことだけが描かれていることやその内容が嘘っぽく思えてしまうこともあり、ストーリー性に重点が置かれているせいか、登場人物の心を読者に想像さる余地なく文章で書いてしまったりするところがある。心の深い部分があまり詳しく描かれていないことにも不満が残った。少し教条的というか説明的なところがあり、教えてあげようようとする傾向もあってやや興ざめしてしまった。想定した読者が中高生くらいなのかも知れない。
読み終わってから小川糸がどんな人なのか作者紹介をみると、意外なほどに評価が高いので驚いた。オフィシャルサイト「糸通信」のプロフィールには・・・ 1973年生まれ。
2008年『食堂かたつむり』でデビュー。以降数多くの作品が、フランス語、英語、韓国語、中国語、スペイン語、イタリア語などに翻訳され、様々な国で出版されている。
『食堂かたつむり』は、2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞。
2012年には『つるかめ助産院』が、2017年には『ツバキ文具店』がNHKでテレビドラマ化された。 2019年『ライオンのおやつ』が「本屋大賞」第2位に。
その他著書に『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』『あつあつを召し上がれ』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ミ・ト・ン』など。
最新刊は『とわの庭』。 |
あの多部未華子が主演だった「ツバキ文具店」は観ていたので、この作者だったんだと今頃気付いて驚いている。
噛み応えのない材料で作られた、ちょっと甘みのある料理が好まれる昨近。そんな社会にリンクするように、平易で引っ掛かりのない文章が好まれる時代なんだと改めて思い知った。
私が図書館で借りる本はことごとく閉架にあって、ほとんど読まれなくなっているものばかりなので、こっちが如何に時代に逆行しているを思い知ったりもしている。
彼女の本がフランス語、英語、韓国語、中国語、スペイン語、イタリア語などに翻訳され、様々な国で出版されていることからすると、世界中が同じような傾向にあるということなのかも知れない。それが良いことなのか良くない事なのか、簡単に判断することは出来ないけれど、文章の読解力が落ちていると言われて久しい。
あまり本を読まない時代にあって、如何に読んでもらうかを小説家や出版社は否が応でも求められている。この本も出版社と綿密に打ち合わせした上で出来上がったものかも知れない。意に反して、不本意ながらもそれを受け入れて、売れる本、評価される本を書き続けている小川糸を悪く言うことは出来ない。
「今年は今までとはちょっと違う生活を心がけよう」との思いがこの小説家と出会うことになったわけだ。こんな調子で、FB 仲間が信条の一つにしている「まず受け入れてみる」というのも、新しい自分との出会いのために心に置いている。
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