2023/06/28(水)09:18
〇〇 本当のナンジャモンジャは樟らしい
♪ 良い人と言われ呼ばれどろどろの黒羽をたたみおる夜行バス
「ナンジャモンジャ」の木は「ヒトツバタゴ」だと知っている人は多いでしょう。これはもう定説になっている。
ところが、「牧野富太郎と、山」を読んでいたらそれは間違いだという話が出てきた。
明治の中ごろ、青山の練兵場にあるというので採集に行った。ここにあったのが「ヒトツバタゴ」で、天然記念物として保護されていたが、寿命が来て枯れてしまったそうだ。中国、朝鮮に多い樹で、当時の日本には極めて稀な木。六道の辻という場所にあったので「六道木(ろくどうぼく)」とも呼ばれていた。それを誰かがナンジャモンジャと言いだしたらしい。
佐布里緑と花のふれあい公園
これを第一のにせもののナンジャモンジャとしている。
第二は、筑波山にあって、アブラチャンという落葉灌木。山林にあるごく平凡な木。
第三のは、四国、九州によくあるヤブニクケイの一変種でウスバヤブニクケイという木。肉桂(クスノキ科クスノキ属のニッケイ・シナモン・カシアなどの総称)に近いが辛味や香りがない。
第四のにせものは、紀伊の那智の入り口にあるシマクロキというネズミモチに似た木らしい。実際には見ていないという。
第五は、伊豆の三島神社境内にあるカツラ。昔、将軍家よりおたずねの節、ナンジャモンジャとお答えたしたという伝説がある。
第六は、武蔵の国(埼玉)の比企郡松山町、箭弓街道ぎわの畑中にあるイヌザクラ。周囲に石の柵をめぐらせて碑がたててあるとか。
第七に挙げるのは、バクチノキだといわれているもの。
要するに、あちこちに伝説や謂れがあってそれぞれを「ナンジャモンジャの木」と称して祀っているというわけだ。
東海市太田川
それじゃあ本物の「ナンジャモンジャの木」はどれかというと、千葉県下総の香取郡の利根川に面した小さな町の神崎(江戸時代には利根川の水運により栄え、醸造関連遺産は近代化産業遺産に認定されている)にあるのだという。
利根川に渡しがあって、上がったところが神崎町で、川のすぐそばに神崎神社がある。
Tripadvisorより(拡大します。) 引用すると長くなるので省略するが、このナンジャモンジャの木は普通のクスノキ。暖地でもなくこの辺りでは珍しい上に、利根川の流域は土地が低く、湿っているので滅多にこんな大木はないため特に注意を引いたのだろうという。
水戸光圀公が参詣の折に「この木は何というもんじゃろうか?」と自問されたことから「ナンジャモンジャ」と呼ばれるようになったとか。
しかし、この木を桂と言ったり、ヲガタマと言ったり、八角茴香(ういきょう)と言ったりといろいろと誤解されて流布しているようで、かなりややこしい。
☆
ヒトツバタゴは本州中部の木曾川流域(長野県南部・岐阜県・愛知県)と対馬に分布する珍しい樹木で、丘陵帯の山林に生える落葉高木。ヒトツバタゴを漢字で書くと「一ッ葉タゴ」。小葉を持たない単葉であるため「一ッ葉」という名前がつけられた。
タゴとは田んぼの木とも言われる「はさ木(稲架木)」のことで、秋に刈り取った稲は木で作った棚にかけて天日に干される。その「はさがけ」には湿地に強いトネリコが使われ、タゴ=トネリコとなった。
トネリコはヒトツバタゴと同じくモクセイ科の植物で、見た目がよく似ていることから「一ッ葉でトネリコに似ている植物」という意味から「一ッ葉タゴ」という名前になったんだとか。
東海市太田川
けっこう身近なところに植えられているので、今やもう珍しい植物ではなくなった。これを「ナンジャモンジャの木」と言わなければ、牧野富太郎も文句はないのだ。