
♪ オノマトペ表意表音同音異義語やまとことばの森に遊ばん
河口湖富士山遥拝所(天空の鳥居)
1987(昭和62)年に、学校創立100周年の「百」にちなんだ記念行事として始まった「現代学生百人一首」。伝統文化として根付いている百人一首をモチーフとして、全国の学生、生徒及び児童を対象に、「日常生活に対する若い感性や時代意識を詠みこんだ短歌」を募るコンクール。毎年開催し、今回で第38回目となっています。
今年も、応募総数58,839首の中から選ばれた入選百首が発表された。選考委員会によって「現代学生のものの見方・生活感覚」を基準に厳正に審査され、毎年1月に入選100首、小学生の部入選10首が発表される。
「応募資格」
*「中学生・高校生・高等専門学校生・短期大学生・大学生・大学院生・専修学校生・各種学校(含む予備校)生」
*「小学生」封筒の表面に「小学校」と朱書きして応募。
入選作品(作品は都道府県別 北から順)詳細は省略
北海道
1、帰り道いつもと違う道通り狐に追われ全力疾走
2、「おかえり」と返したことはないけれどアニメ見て待つ父の「ただいま」
3、息潜め一音すらも逃さない歌詠まれれば畳舞う札
4、半袖の時は過ぎ去り長袖に今年も来るか雪虫たちよ
秋田
5、急上昇熊の出没秋田県ご先祖様に会いに行けない
6、勇気出し君に伝えた二文字が八号玉にかき消されてく
7、おばあちゃんJKよりも略語使う「け」の一文字の意味は膨大
山形
8、大雨の爪痕残る僕の街静かに照らすお盆の灯り
9、ガザの記事弟と同じ年の子が瓦礫の中で今ふるえてる
10、聞き上手それが介護の始まりと知るは実習傾ける耳
福島
11、足技で相手を抜き去りクロスあげ仲間が合わせ一点決めた
12、実習着夏服忘れ冬服で先生一言暑くないのか
茨城
13、「また明日」手を振る友の横彼氏一昨日までの私の居場所
14、教室で飛び交う単語受験生今日も始まる早押しクイズ
栃木
15、好きですと告ってみると既読つき返信まさかのごめんスタンプ
16、おどろいた近所のおじさんバズってる今はだれでもインフルエンサー
埼玉
17、ツーショットSNSを口実に一枚きりが何枚もある
18、テスト中解ける問題無さすぎて止まらぬ手汗動かぬペン先
19、スッスッハッ後ろに感じる息遣い抜かれたくない最後の直線
20、ぼろぼろになるはずだった参考書ぴかぴかなのは私の甘え
21、街灯が照らす夜道を帰宅するこの瞬間(とき)だけは私のランウェイ
22、コロナ禍で行き先変わった修学旅行次は物価で一泊減った
23、夏休み帰省をしたらいつのまに小さくなったばあちゃんと家
24、秋になり食べれぬ新米待ち侘びるスーパー行っても収穫はなし
25、涙して別れた友と再会し制服違えど仲は変わらず
26、友達の恋愛応援してるけど実は私もアイツが好きだ
千葉
27、携帯で小説を読み笑う友共に笑った作者の私
28、日曜日たまには母の手伝いを不器用息子の焦げた唐揚げ
29、はじめての後輩入ってくるかなと心のドキドキ太鼓にのせる
30、ビーリアルみんな追われる2分間今日も昨日も真っ黒リアル
31、合宿前ガラガラと笑うキャリーケース僕の心は笑ってないのに
東京
32、暑いよと鳴くキョンの声うるさいなそう言いさけぶ父もうるさい
33、新紙幣ホログラムの技見つめてる歴史の偉人新しい顔
34、また来たか毎年起こる異常気象100年に一度もう顔見知り
35、スマホ越し打ち上げ花火は「映え」のためレンズの先は知らないままで
36、再放送分散登校ロックダウンどれも私の一つの青春
37、冷房を自然と低くしてしまうサステナブルに貢献できない
38、カーテンの隙間からみる木の枝も僕と同じで暇人なのか
39、周りから双子だからと比べられうんざりしてるあなたと私
40、決勝戦解けた帯をぎゅっと締めこの三分に全てを懸ける
41、外国人迷わずかごに入れていく横目に私は値札と葛藤
42、お会計五歳の弟「ペイペイで」この時感じた時代の流れ
43、たらちねの父もありうる世の中で配慮できるか不安に思う
44、鉄道は定刻通り当たり前このありがたさいつ気づくのか
45、褒められる自分の知らない良いところ長所の欄に堂々と書く
46、「これAI?」ちゃんとやっても疑われヒトの証拠を探し求める
47、お母さんライン来る度聞かないで彼氏できたらちゃんと言うから
48、火葬前最後にのぞいた父の顔涙と笑顔で「幸せでした」
49、授業中丸まる背中増えるたび切なく下がる先生の眉
50、「高校生」慣れない響きにはにかんでそっと制服着崩してみる
51、素数たち唯一無二のユニークさ分解できぬ個性爆発
52、トーク画面一番上はいつも君そこは誰にも譲らないでね
53、「あーはやく引退したい」と言う日々は未来の僕が戻りたい日々
54、ビル風と新居の匂いが問うてくる「一人で生きる覚悟はあるか。」
神奈川
55、ただいまと言ったら母がおかえりも言わずに聞いたテスト何点
56、手の甲に書かれた予定を石けんの力を借りつつ消すテスト前
57、分かれ道どこに進むのが正解か鏡にうつる君に問いたい
58、街行けば男も日傘差し始め日照りが溶かす壁一つあり
59、「可愛いすぎ!」写真の少女は良い笑顔その子本当に人間なのかな?
60、祖母は言う女の子だから手伝って理解されない令和の教え
61、ぶつかれば速度失う喧嘩独楽静かなものが最後に残る
62、自販機のジュース値上がり三十円僕の財布は経済破綻
63、眠くても雨が降っても学校へ足が向かうの何故だろう
64、「三十度」じゃあ涼しいねちょっと待て五十年後を心配した日
65、デジタル化年々減ってく年賀状友の丸字はゴシック体に
新潟
66、AIに平和の解を求めたら停戦の日は見えるだろうか
67、母さんの出勤早い日父さんはパジャマで甘い卵焼き作る
68、一時間百年めぐる時の旅何倍速だ歴史の授業
石川
69、ニュース見て終わらぬ復旧続く豪雨(あめ)正月に地震もう半年か
長野
70、兄巣立ち父の肩身が狭くなる我が家で起こる政権交代
71、「夢を持て」と言われ続けて十七年「現実見ろ」と言われる面談
72、秋空に染まり染まりて帰りゆくハクセキレイの先へ行きたい
三重
73、心臓の音が聞こえる本番前強くにぎった私の楽器
京都府
74、それ食べるまでは死ねないねと笑うあなたを千歳まで生かしたい
75、古の十六歳も行ったかな彼女のいない祇園祭りに
大阪府
76、友達と急なハモリで笑い合うこの日常を忘れたくない
77、ポッキリとシャープペンシル折れる芯がんばったんだ今日はもういい
78、「若いから」お世話になった免罪符有効期限残りわずかに
79、朝起きて枕の匂いが変わってるいよいよ僕もパパの匂いが
80、就活に疲れて駅でひと休み夕暮れの街が僕を助ける
81、授業中自習になると動物園先生が来て静まり返る
兵庫
82、「就職は大手」と親は言うけれど僕の本音はスタートアップ
83、たましいがぶつかるような喧嘩して母から生まれた不思議を思う
奈良
84、白衣着て命の重み感じつつ夢見る先は患者の笑顔
島根
85、無茶言うな高校までは出るな杭大学からは杭よ出過ぎろ
岡山
86、夏祭り序盤の花火に背を向けて音で楽しむ満員電車
87、服装も授業も席も自分次第自由はこんなに重かったのか
広島
88、こんにちは言ったけれどもイヤホンで聞こえていない時代の流れ
89、建築科一つのミスが命取り何度も何度も納得するまで
90、黙祷を捧げる朝の今日(こんにち)も世界のどこか戦争中だ
徳島
91、五分だけ気づけば短針一回りスワイプ続ける右の親指
香川
92、弟に身長抜かれ悲しんだまてまてあいつまだ中二やで
愛媛
93、お小遣い欲しくて祖母に電話する断る速度詐欺防止並
福岡
94、裏垢(うらあか)と本垢(ほんあか)の違いなんだろう自分探しと友達探し
長崎
95、バチバチとご先祖見送る爆竹でまた来年と告げる盆の夜
鹿児島
96、空港の心躍るはアナウンス到着地点の天候は晴れ
97、オンライン遠くの国の先生に英語で話す夏の思い出
沖縄
98、夏空に白球あがる頭上にてセカンドフライ俺のものだぜ
99、部活動日々の努力を積み重ねやっと掴んだピンチサーバー
アメリカ
100、夜に聞く「行ってらっしゃい」母の声父は出勤時差約半日
※青数字は 秀逸15首 太数字は筆者
【小学生の部】
1、家建てる空中の家二階建て無限の世界マインクラフト
2、南海の揺れの予兆に胸騒ぎニュースの文字に目が離せない
3、親はなぜ一人の子どもにきたいして応えれるかなプレッシャーだよ
4、食べたいなチーズとけてるグラタンがああおいしそうパクパクペロリ
5、夜の空バンとはじけた大花火その一瞬で気持ちが晴れる
6、学校の推しのうさぎはねむそうでその顔見ると幸せになる
7、最終日焦る心で鉛筆が走るノートに夏が過ぎてく
8、オノマトペ聞けば聞くほど楽しいな時間忘れる言葉の世界
9、たべものがアチコーコーでさますまでひまだったけれどおいしすぎたよ
10、天気図の台風にらむ父の顔今年も雨がわんさかとふる
【日本語学校・海外協定校で学ぶ学生の優秀作品】
・うちは何?住むだけじゃない愛をうけ失敗しても帰れるところ
・今朝起きて朝ご飯買う豚焼きともち米を食べ勉強をする |
日常の出来事を短歌に詠むことでその状況が脳にしっかりインプットされる。日本語という多様な言葉・文字に親しむ上でも、こうして五七のリズムで短詩に親しむのはとてもいいことだと思う。是非、これを機に三十一文字の世界を大いに遊んでもらいたいものです。
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