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歌 と こころ と 心 の さんぽ

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2025.03.16
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カテゴリ:素晴らしいこと

♪ 日本の多彩な文化が万国に微生物のごと広まる日のこむ



 朝日新聞 be on Sandayの記事を読んで、本当の未来はこういうところにあるんじゃないか、日本の可能性がこうい伝統的なものの中にこそあると思う。

 濁り具合や粘りを確かめながら、声を聞くようにグラスを耳に当てる。ぷちぷちと、醗酵して出る泡の音がグラスに響く。
 
「遠野物語」で知られる岩手県遠野市で、「どぶろく」を20年かけて芸術品の域まで洗練させた佐々木要太郎さん(43歳)。

1981年、代々続く「民宿とおの」の長男として生まれる。
中学時代は「親が校長室に呼び出されるような悪ガキだった」
97年、サッカー推薦で盛岡大付属高校に進学。
2000年、盛岡で結婚。眼科の検査員などをして働く。
02年、離婚。当時2歳の長女・朱里さんを連れて帰郷。
03年、遠野市が全国初の「どぶろく特区」になり、「民宿とおの」が製造免許を取得。
06年、専用の小屋を建て醸造開始。その後、奈良の「久保本家酒造」で酒造りを学ぶ。

11年、「とおの野 要」営業開始。


16年、欧州の田舎を回って土地の料理を食べ歩き、料理の原点をしる。
19年、株式会社「nondo」設立。種類以外の販売も始める。

23年、盛岡市に「ポンコツ酒場」をオープン。
24年、米国留学あら戻った朱里さんが本格的に仕事を手伝い始める。
 2003年、遠野市が「どぶろく特区=製造上の規制が緩和される(遠野は日本でも屈指のどぶろく生産地)」に認定される。四代続く民宿を経営する父が発起人だった。2歳の娘を連れて帰郷し準備を手伝うことに。そのころ心は荒んでいたという。

 一年後に民宿の台所で造ったどぶろくを客に出したら「お前が造ったのか。酒造りを馬鹿にするな。なんだこのクオリティーは」とどやされた。新潟から来た杜氏で、真正面から説教を受け、くすぶっていた気持ちが定まったという。
 翌日、モヒカン頭を丸刈りにし、ピアスを外し、1日2箱吸っていたたばこもやめた。醸造法を一から学び、醸造所を建て、どぶろく作りにのねめこんでいく。

 土が本来持っている力を取り戻すため、農薬も肥料も使わず、10年かけて人工的な化学物質がない田にした。味が淡白で収穫量も上がらず、農業試験場で眠っていた品種「遠野1号(もち米の遺伝子が入っていない)」を作った。収穫後1年寝かせるとうまみが増すことが分かった。

「うちのどぶろくの酵母が強いのは “土” のおかげ。草と共存させた無農薬の田んぼには、この土地ならではの土壌細菌がいます。それらを稲が吸い上げて、稲が育って、米が実る。そういった米と相性のいい菌だけが自然と集まって発酵が進むので、“歯車” がかみ合っているんです。」

 室町時代の醸造方法で自然の乳酸菌を取り込み、蔵にすみ着いている酵母を育て、米をゆっくり発酵させる。誰もやらないことに見いだした極上の世界。

 とに角、スイッチが入ったら猪突猛進の勢いで突き進んでいく。米造りを徹底的に学び、既存の枠を超えたところに鍵を見いだす。
「一生懸命育てた米をなぜ磨くのか。米本来の味は糠にあり、土や米がきれいならきれいな味になる」。木桶で仕込み、ワイン樽で3次発酵させた「田の喜怒哀楽」はシリーズの中でも、これまででも最も長い3年間醸した酒を今春発売するんだとか。「この味は二度と造れないだろう。本当は売りたくないんです」

 「日本の酒の醗酵プロセスは他の国に例がない」と工技術センターの講師から聞き、「世界で勝負できる」と考えを変えたという。日本独自の清酒より古い歴史を持つどぶろく。1300年も前の万葉集にすでに濁酒の名が出てくる。これは世界に誇れる文化だ米はそれ以前からあり、それを真面目で我慢づよい日本人が造る。日本文化の原点がそこにあると。
 ワインなどと違って糖化とアルコール発酵が同時に進む並行複発酵。

 特区免許取得の数年後「その他の醸造酒」の免許を取得。自社米以外の醸造はできないし、「清酒」の免許は、需給バランスを保つという理由で認められていない。ただ、彼が造る "もろみを漉した酒” は一般的な酒と違い、米ぬかまで使っている「新しい日本の酒」だという。


 どぶろくをつくり始めて12年後には、自身が納得するレシピが完成。その後、レシピも配合も一切変えていないにもかかわらず、どぶろくの "醪(もろみ)” 日数は延び続け、ますます強い酵母になってきているとか。


菌の活動が自然に終わるのを待っているところ。(料理通信)
一般的などぶろくや日本酒のもろみは、通常30~35日ほどで酵母の活動が
終了するが、写真のもろみ日数は67日目。これまで、
4年もの間酵母が発酵し続けたというデータもとれたという。

 唯一変わったのは “土” 。無農薬・無肥料という米づくりのなかで、土壌細菌などが変化して、土が本来の健全な状態に戻ってきた。健全な土が育てた米粒に、健全な菌たちが入りこんで、発酵の流れが変わってきたという。



colocalより

 「地元の酒」という発想では地方創生はできない。遠野は環境の良さは感じているが、あくまでも拠点であり他の土地で受け入れられたい。どこで飲んでもおいしい、遠野の風景が浮かぶようなクオリティでなければダメ。料理も同じで、「遠野の味」だと言われるように工夫しているという。料理人の父について日本料理を、父の勧めで茶道も始めたとか。
 
 都会と地方をつなげようとする人はたくさんいる。でもその前に地方の現場で腰を落ち着けて働き、世界と渡り合える力を備えないと地方創生はできない。そんな存在になりたいという。
 今の造りを徹底して逆行した佐々木さんの濁酒が、世界の酒業界の好奇心を掻き立てている。特にヨーロッパ人は、日本の酒文化の源流として興味を持ち、乳酸発酵したもろみの味わいにチーズとの接点を見る。2023年はスペイン、イタリアでどぶろく講義をした。
 現在、佐々木さんのどぶろくはスペインでは世界的レストラン「ムガリッツ」、イタリア、フランス、香港のレストランや酒販店でオンリストされている。

 レストラン&1日1組限定の宿泊オーベルジュ「とおの屋 要」は外国の客も多いらしい。
 
 私が感じたのは、日本の古くから培われてきたものの中に世界に誇れるものがまだまだ眠っているんじゃないかという事。伝統をそのまま踏襲するのではなく、一度疑って、その本質にあるものを探り出すこと。
 伝統文化が形骸化していて本来の意味さえ分からなくなっていることも多い。現代の経済や効率とかの外側にある重要な何かが、蔑ろになっている気がする。

 日本人という類まれな知性がもたらした、世界に誇れる多様な食文化。
 追及する好奇心が忍耐と諧謔とあいまって、長い時間をかけて醸成されてきたもの。見失ってしまっている「磨けば光るもの」が、今後の日本を救ってくれる力になるに違いない。

 ★オーベルジュ:宿泊施設を備えたレストランのこと
 ★もろみ:酒や醤油、味噌などの醸造工程において複数の原料が発酵してできる柔らかい固形物。もと(酒母)、蒸米、麹、水をあわせ発酵しているもの。
 ★佐々木さんが醸すどぶろくは3種
  「水酛(みずもと)」:鎌倉時代に醸造技術が確立された
  「生酛(きもと)」:江戸時代に開発され、自然の乳酸菌の力でつくられる
  「速醸酛(そくじょうもと)」:現代の基本的な日本酒やどぶろくの醸造方法






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最終更新日  2025.03.17 07:24:15
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
◆2019年6月6日より 「歌とこころと心のさんぽ」に改題しました。
「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

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