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2025.05.19
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カテゴリ:素晴らしいこと

♪ 国宝の無形文化の財産の遺せし椅子に座ってみたい





拭漆楢家具セット [1964年] 漆、ナラ 
彫花文椅子128.5×85.0×80.5cm(3脚)、テーブル37.0×181.3×79.0cm(ケヤキ)、
長椅子111.0×188.0×79.0cm

 最終日だった豊田市博物館の「生誕一二〇年 人間国宝 黒田辰秋 木と漆と螺鈿の旅」展に行って来た。




黒田辰秋(1904~1982)の生誕120年を記念するもの。


昨年12月に京都でも開かれている。

 戦前から戦後にかけて活躍した、木漆工芸家で、特定の師をもたず国内外の古典研究を通じて漆芸の道を求めた黒田。造形力と多様な技法に長じていたことで知られている。河井寬次郎を通じて知己を得た柳宗悦の薫陶を受け、上賀茂民藝協團に参加し民藝運動の一翼を担った。

 この椅子が見たかった。若い頃に黒澤明の注文で制作された黒田辰秋の凄い椅子があることを知って、見てみたいと思っていた。しかし、いつしかそのことも忘れてしまい、長年月が経ってしまった。
 以前にもこの美術館で黒田辰秋展があったが、その時はこの椅子は展示されず、箪笥や食器棚などが中心のものだったように記憶している。


黒田辰秋《彫花文椅子》
1964年 漆、ナラ 128.5×85.0×80.5㎝ 豊田市美術館蔵

 今回、豊田美術館で展示されると知ってどうしても見たかった。次男の奥さんから、「いつ行きますか? 行くなら一緒に行きませんか」とメールが入った。彼女には話がしてあり、美大を出ていることもあって関心があったようだ。それで最終日の昨日、2世代4人で見に行くことに。

☆  ★  ☆

 圧倒的な存在感。重量感と安定感の中にやわらかいカーブとシャープさが一体となった、隙のない意匠のすばらしさ。胡坐をかいてすっぽり収まるゆったりとした大きさが、長い年月を内包している「木」の豊かさと溶け合っている。
 黒沢自身が座って、ウィスキーのCMにも使われたらしい。

 良質の分厚く真っ直ぐな板材が何枚も必要で、黒澤からは納期を定められていた。黒田は岐阜県付知町、現在の中津川市に仕事場を設け、当時、家具制作に用いることが珍しかったナラ材を選択したという。今では一般的になっているオーク材である楢を、最初に使った人なのかもしれない。

 黒田と黒沢。黒・黒のコンビネーション。その二人の人格が掛け合わされることで、猶いっそう重厚なイメージになっていると思う。



 写真撮影が禁止なのはまったくナンセンスだと常々思っているが、どうしようもない。作品の写真が撮れないのは著作権の問題だとはわかっているが、人間国宝によって造られたものを一般のアートと同じ扱いにすることが間違っていると思う。
 広く多くの人に接してもらい、その素晴らしさを垣根なしに解放して見せることが本当の文化だろうと思う。事なかれ主義の偏狭な、本質を考えない日本の文化行政を恨めしく思う。

 御殿場山荘の家具セットの前で、ああだこうだと手を近づけて話をしていたところ、監視員の女性が「あまり近づかないでください」と注意しにきた。触れてはいけないことは分かっているし、実際、それもしていないのに、だ。
 そばに居た家族が恥ずかしがって私を諫めたが、そんなにへりくだってどうする。悪いことなどしていないのだ。 

 さまざまな作品に繰り返し彫り続けてきた「彫花文」。
 黒田が22歳の当時、ちょうど民藝運動に関わり始めたころ。京都の町家で育った黒田が独学で学んだ木工技術で洋家具を作り始めるに当たり、重要な参考書籍・ドイツ語の『DAS MÖBEL WERK(家具)』という分厚い書籍の、「イングランド、1500年頃、ゴシック様式、楢のチェスト(eichentruhen)」と記された家具を参考に造られたと推測されている。


黒澤明のための椅子を制作中の黒田辰秋。
背板に大きな彫花文が刻まれている。(岐阜県立森林文化アカデミーより)


 交友も広く、川端康成、志賀直哉、白洲正子、武者小路実篤などとの交流もその創作活動に大いに影響を与えた。 
 伝統的な漆芸の分業制度に疑問を持ち、素材の選定から木工による支持体の制作までを担う一貫制作が、大胆で力強い独特の作風をもたらし、多くの文人墨客、好事家たちに愛される所以でもある。

 高い技量と造形力により独自の足跡を工芸史に残した黒田は、1970年に木工芸の分野で初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されている。

 艶やかな塗り、曲線や捻りが生み出す大胆な造形の拭漆、耀貝(メキシコ鮑)により新たな境地を開いた螺鈿。家具等の大作から掌で愛でる逸品まで、多彩な作品を魅せる黒田辰秋の作品世界。

 

 どの作品を見てもそのゆるぎない仕事と技に圧倒されるばかり。

 

 難しい技術と審美眼。妥協を許さないその徹底した仕事ぶりに、ただただ感嘆する。
 いいものを見せてもらったと、胸いっぱいで戻って来た。本物を見ることの意義と意味を思う。「王様の椅子」と呼ばれているあの椅子に座ってみたかった。
 入場券はネットで購入すると割引になる。



 昼食に入った「BABY FACE PLANET'S 豊田店」は、「入店した瞬間に『ハレの日』を感じていただけるようにお出迎えを大切にしています。」というコンセプトらしいが、無国籍エスニック風何でもありのイタリアンもどきの店だった。



美術館収蔵品

耀貝螺鈿總張飾手筥 [1974年頃] 
漆、鮑貝、ヒノキ 18.4×30.5×15.5cm


欅拭漆飾棚 [1970年]
漆、ケヤキ 98.1×182.0×44.8cm


乾漆耀貝螺鈿捻十稜水指 [1965年] 
漆、鮑貝 18.0cm、 Φ22.4cm


拭漆文欟木飾棚 [1960年] 
漆、ケヤキ、金具 102.0×176.8×45.3cm


赤漆捻紋蓋物 [1949年] 
漆、ヒノキ 19.6×23.2×20.8cm


彩漆群蝶図手筐 [1948年] 
 漆 19.8×34.2×20.8cm


赤漆彫華紋飾手筺 [1941年] 
漆、ヒノキ 18.8×34.2×24.9cm


拭漆欅八角重菓子器 [1936年] 
漆、ケヤキ 25.4×28.5cm、 Φ28.5cm





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最終更新日  2025.05.19 15:20:39
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
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