2017.02.03

■ ラブレター

カテゴリ:気まぐれ短歌

♪ 熱烈な文(ふみ)を貰ひてキスもせず別れることの罪とは何そ


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 若き頃、自分の未熟さを知った苦い経験がある。気に掛けていた女性とは違うその友人の方から、心臓がわななき顔から火が出るかと思う様な熱烈なラブレターを貰った。本命ではないという内心の後ろめたさを隠し、後ろ髪を曳かれながらその娘と付き合い始める。

 私は、新天地に踏み込んで、これから自分の道を切り開いていこうとしていた時期だった。アルバイトに来ていた短大生二人のうちの一人に惹かれ、その娘と付き合えたらいいなあと思っていた。ところが、その娘と一緒に入ったもう一人のバイトの娘の方から好意を寄せられるようになったのだ。
 その娘は社員旅行に参加したが、肝心の本命の娘は参加しなかった。旅行でその娘との距離が縮まり、ちょっとアウトロー的な所のあった私に惹かれたらしい。1年間の放浪の後で新しい職に就いたばかりだった私は、これまでに様々な経験をしそれを自慢げに話していたようだ。
 世の中の常識に逆らう男は個性の強さが粒だって、何か得も言われぬものを醸し出していたのだろう。それに若い娘が惹かれるという、青春ドラマそのものの様な陳腐で可笑しな物語だ。





 受け身のまま付き合いが始まったが、男として生きてゆく足固めを模索していた私は、恋愛に現を抜かす余裕が無かった。相手の父親が警察官で、門限が夕方の6時。異性と付き合うなんて厳禁の厳格そのものの家。手紙も友人を介してのやり取りだった。
 そんな父親への批判もあり、交際の難儀さに辟易していたのも事実。誠意を見せない私の本心を見透かした彼女は、悩んだ末に関係を解消したい旨の手紙を書いてきた。二の句も告げられない私は、それをアッサリと受け入れてしまった。

 別れてから、私はキスさえしていなかったことを悔やんだ。腰が引けていたのは、純情だったこともあるが、その娘の心を蹂躙した上で欲望を満たすというような発想は持たなかった。後から、初心だったんだなあと思う反面これで良かったんだという自分流の美学。
 この美学は、後々の大人としての恋愛にも発揮されるが、ここでは書かない。




◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。

「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

短歌集「ミソヒトモジ症候群」円居短歌会第四歌集2012年12月発行

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最終更新日  2017.02.03 08:57:01
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