096682 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

純と混

こえ、さむざむと 

ふるえ ふるえて



誰が言い始めたのか



そこには窓枠があった

どうも言葉を意識しはじめてから僕は
混ざることの悲しさを知ったみたいだ

純に混ざる心がつとつとと
       つとつとと襲う純を

「誰にあげるの?」
なんて言われても困るばかりで
はちきれんばかりの混ざりが
僕を襲ってくるので
           いや、僕は生まれたときから
           混ざっていました
           などど言えない人の歩みを
           歩いてきたので
           悲しいかどうかも分からない
           ただ溢れんばかりの
           憂鬱に 心を溶かされていたのです
どうしようもなく国を
想うことにして
        でもそれは僕がいま
        生きている国という事ではなく
おじいさんが
おばあさんが
培ってきた国という事で

でも、おふくろはその国を忘れてしまったから
いや、忘れたのではなく
親の情としての国に涙してばかりいたから



僕はおふくろが大好きだから
その涙を拭いてあげようと思って
言葉を探し始めました

でもあまりにも時は長すぎた
もう、あの国に僕を見つけ出す人はいなくなっていた
のではなく、ふとした言葉で探すなと
言われてしまう僕がちっぽけに
ここに佇んでいるのです

海はあまりにも遠くの声を波で消してしまいました
声だけは確かにここにあるのに、
眼差しだけはあの地に向いているのに

船はあまりにも歩むので
忘れてしまいそうな儚さで
窓を曇らせます

しかたなく、外のデッキに出て
少しでも声が届くよう
生まれた国の言葉で叫ぶのです

でも、聞こえたのは波の音と
船のエンジン音だけでした



© Rakuten Group, Inc.