闘病・・・めずらしい病気平成6年の3月に夫の母が亡くなりました。名古屋での葬式を終えて金沢に戻ってきてすぐに夫に異変が出始めました。 腕の皮膚にブツブツが出来てただれてきたのです。 皮膚科に行きましたがハッキリした理由も分からず、 消毒の為に通院し、薬も服用していましたが一向によくなりませんでした。 そうしているうちに次はひざが急に痛み出したのです。 急に激しい運動をした訳でもないし、どこかでぶつけた事も無く、 全く思い当たる節が無かったのですが、激痛に歩けないほどですぐ整形外科に行きました。 病院から戻った夫の足は、ひざ上から足首までギブスでガチガチに固められていたのです。 どういう症状でギブスを施す事になったかも結構曖昧で、 納得いく説明は受けれなかったんですよ・・・ ところが翌日「足が痛くて痛くて我慢できない」と言い出し、 再び病院へ行き「ギブスを取ってくれー」と散々ごねて、はずしてもらいました。 すると大変な事になっていたのです。 ひざから下が皮下出血してパンパンに腫れ上がっていました。 その場でひざに溜まっている血をいくらか抜いたのですが、 外科で処置するような怪我ではなく、何か別の病気が元になっているかもしれないと、 総合病院への紹介状を渡されたのです。 家から車で10分ぐらいの所に金沢赤十字病院があり、翌日夫はそこへ行ったのですが、 その日のうちに入院する事になったのです。 訳も分からず急いで準備をして入院したのですが、 ただ事ではない事だけは確かです。 いったい夫の体はどうなってるんだろう? 入院した翌日から検査が始まり結果が出ました。 診断の結果は「出血傾向第11凝固因子欠乏症」というものでした。 血液の中には出血した際に止血する役割の凝固因子があるのですが、 その因子を攻撃して破壊してしまう抗体が体の中で突然発生し、 出血が止まらなくなってしまうという症状です。 何が原因でそうなってしまったのかも分からないし、 全国でも十数例しか報告がないというめずらしい病気だったのです。 当然、治療方法も確立しておらず闇の中に突き落とされたようでした。 入院と同時に皮下出血がひどくなり、ちょっとすれたり当たったりするだけで、 切れた毛細血管から出血し、全身内出血ですごい状態でした。 出血は体の表面だけにはとどまらず、膀胱内からも出血し真っ赤なおしっこになってしまいました。 原因は不明だし、根本的な治療は後回し。 とにかく出血を抑える事を最優先にしなければなりませんでした。 治療方法としては2つ。 (1)血液製剤の投与 (2)ステロイド服用 (1)については入院中に2回投与しました。 1本20mlぐらいの薬を10本。点滴に混ぜて投与します。 1本が10万円なので、1日に100万円の薬です。 お金の事など言ってる場合ではありませんでした。 半月に一度治療費を清算しなければいけなかったのですが、 一割負担で50万円以上支払ったときもありました。 (2)ステロイド剤は炎症には劇的な効果をもたらす事は良く知られていますね。 その代わり副作用も非常に強く、注意が必要な薬です。 夫の場合も、副作用を最小限に抑えて、効果を最大限に得られるぎりぎりの線の量のステロイドを服用したのです。 2つの治療の効果は現れてきました。 こまめに血液検査をし凝固因子の数値を確認するのですが、 少しずつ数値も上がっていったのです。 ところがやはり副作用が出てきました。 血が止まらないという状態から一転し血が固まりすぎてしまったのです。 血尿がひどいと書きましたが、膀胱内で出血した血が固まり尿道に詰まってしまったのです。 その頃は安静にしていなくちゃいけなかったので、 管を通して排尿させていたのですが、おしっこが出ずに大変なことになりました。 色々な処置をしてもらい何とか詰まった血の塊を流しだす事が出来たのですが、 次から次へと難題にぶつかっていくようでした。 出血傾向のため、ある時期ひどい貧血になり輸血が必要になりました。 担当医師から輸血の必要性を説明され、では輸血しましょうという事になったのですが、 ここでもまた夫はダダをこねました。 「知らない人の血は嫌だ。かみさん(私の事)の血しか嫌だ。」と・・・ 聞いた私もびっくりしましたが、私と夫は同じ血液型。 しかも私はタバコも吸わないしお酒も飲まないので、血だって絶対にきれいなはず。 夫がそう望むのなら、そうしましょう。 一応念の為に血液検査をし、異常なしと出たので献血したのです。 そして私の血液は夫の体の中に入っていきました。 そんなこんなしながらも症状は落ち着き、2ヶ月が過ぎてきた頃、 夫はしきりに「退院したい」と言うようになりました。 いつまでも入院したままでは家族の生活が困るから 早く仕事に復帰したいと思っていたようです。 それに病院での生活もかなりストレスになっていたのかも知れません。 (これはあくまで私の想像です。夫は自分の感情をさらけ出す事が少なく私に何でもかんでも話すという人ではありませんでしたので。) でも担当医師はステロイドの服用による副作用をすごく心配していて、 なかなか退院を許可してくれなかったのです。 私も完全でないのにあわてて退院する事無いって思っていたのですが、 とにかく夫は一人焦っていたようでした。 |