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子育て仲間*はらっぱ

ヘロヘロ自宅出産 顛末記

●コラム● ~わたしの出産&育児体験記~

子宮の中からこんにちは!
母ちゃんのヘロヘロ自宅出産 顛末記
  by kuma


「ぐ・ぐ・ぐおお~~な・な・何でおりてきてくんないのぉ~」
七転八倒しながら、怪獣か物の怪のように唸り、吠え、叫ぶ私・・・。

あの日私は、なっかなか子宮口にやってこないお腹の中の子にパンチをくらわせたい気持ちをぐ~っと堪え、自分の体力の限界と闘っていた。

小雨降る前日の朝から陣痛らしきものはノックしていたものの、そのまま出かけて気を紛らわしていたのだが、夕方には五分間隔になってきた。
迷いに迷って助産師さんに電話を入れると、夜九時過ぎには来てくれて、
「ん~まだ全開じゃないけどね~」と腹や腰をさすってくれる。
そのうち、もうひとりサポートしてくれる助産師さんもやって来た。
愛しの父ちゃん(=夫)と二歳児の長男もスタンバイして、さぁ役者は揃ったぞ!

そう、私はこの自宅(社宅やけどね)で、助産師さんや家族とともに出産に挑もうとしているのである。

まあ、二人目だし、安産系だし、今夜中には生まれるべ~と余裕の私。
・・・どっこい、そのケセラセラ的思考は見事にぶっ飛ぶ出産劇の幕開けであった。

勝手知ったる狭いわが家で、立ったり座ったり、横になったり四つん這いになったりと、いろんなポーズをとってみるが、どれもしっくりこないし、だんだん陣痛は遠のいていくようだ。
頼みの父ちゃんはじっとしていない二歳児に振り回されて、あっちうろうろこっちうろうろで、私にかまってる暇はなし。(今思い返しても一回しか腰をさすってくれんかったぞ~!)

ず~っと助産師さんが二人がかりでモミモミ・スリスリしてくれたけれど、さすがに夜通しはしんどいようで、こっくりこっくり・・・。
「ツ~痛テテェ・・・」の私の声に起こされ、またもみもみ・すりすり・く~く~・いてて…の繰り返し。
「楽な姿勢で寝ちゃっていいよ」と言われ、もちろん陣痛はのろのろとやってくるが、どんどん遠のく心地よさ…で、私も寝言たれながら寝てしまう。

しか~し、このままじゃいか~ん!いつまでたっても生まれんど~!気合いだ気合い!と、甘いものを飲んだとたん、陣痛がガンガンやってくる不思議。「早く生みた~い、でもこの陣痛の大波は耐えれ~ん」とベソをかきつつ、また甘いものを飲む。どどど~ん・きりきり・いてて~・ごくんごくん…の繰り返し。その間にも助産師さんは、小さな丸い玉(ホメオパシーのレメディ※)を三つほど私の口に放りこむ。『心音が速かったため』『ウトウトしてたので疲れをとるため』『おりてこないアカチャンのしがみつきをはがすため』のものだったらしい。お~だんだん、波が早くなってきたぞ~、もうすぐか~、もう朝だぞ~!

「あれ、父ちゃんは?」と助産師さんに尋ねると
「あっちの部屋で寝てるよ~」と明るいお返事…。
「うちの男どもは…」と思いつつ、だんだん私の鼻息も荒くなってくる。

「ちょっと子宮口見ようね~」・・・と助産師さんたちが股を覗いたその時、バッシャ~ンと水風船をたたきつけたような音が。
「うわ~すごい破水だ~」・・・なんと私の羊水を浴びまくってビショビショのご様子・・・。しかし、私は
「やった~!これでもうすぐ生まれる~!万歳~!」と喜びの雄叫び。

さぁそこからが獣道へまっしぐら~! 冒頭の生みの苦しみをたっぷり味わうことになる。
「ぎょえ~鼻からスイカってこのことか~?!焼け火箸を突っ込まれるってこういうこと~?!」っていうぐらいの痛みが走る。
長男の時こんなに痛くなかったのは、彼が未熟児で小さく心音低下で会陰切開したからか?今回は赤ん坊がゆっくりおりてくるのを待って、子宮口も全開になったためか?
いわゆる、生みながら「あ~まわってるのが分かる~おりてきてる~」な・ん・て、体感する余裕ゼロ!もう力任せにひり出したい思いでいっぱい!
なんちゅう母親だ~と今更ながら思い出しても情けないわ~。 
 
へろへろの状態でふと顔をあげると、私の股をじーっと見つめる父ちゃんと二歳児…君たちぃ母ちゃんの股の方にこないでよ~!ぐるるる~ぐお~最後のいきみだ~!もう恥も外聞もない、ここはわが家じゃ、これが私の産み様じゃ~!

そして…赤ん坊は、頭が出るかでないかでもうピロピロ泣きながら生まれてきた。
すぐに助産師さんが私のお腹にのっけようとし、私が受け取とろうと手を伸ばしたとき、へその緒じゃなくておチンチンをにぎってしまった。
「ありゃ、また男ね」。
その上、へその緒が四十センチと短く、まだ繋がってる胎盤からおっぱいまで届かない。父ちゃんと長男がへその緒をゴリゴリ・チョキリと切ってから、やっとお腹の上で落ち着いた。
すかさず助産師さんが「胎盤ちょっと食べてみる?」と聞いてきたけど
「次回の楽しみにとっときます」と答えるのが精一杯なくらい脱力してた。
ただ、後でこっそり赤ん坊のお尻にペッタリくっついていた真っ黒い胎便を、ペロペロ舐めてはみたけどね。

「赤ん坊なのにこんなにも母ちゃんを苦しめるなんて、大物だわい」としみじみ思い、そして改めて、ずーっと支えてくれた助産師さんと、自宅出産を見守ってくれた父ちゃんに感謝した。(彼はこの後、さらに家事育児に追われることとなる・・・)


その後の一週間は、助産師さんが毎日来てくれて、ぱんぱんに張ったおっぱいの熱をとる「キャベツ湿布」を伝授してくれたり、少しばかり擦れてしみる会陰のケアにアロマ湿布をたくさん作ってくれたり、ほかにもスリングの使い方から世間話まで、何かにつけ頼りになり、また安らぎを与えてくれた。
今でも、ほぼ毎月の赤ちゃん交流会に、彼女にサポートしてもらった家族が集い、ファミリーの輪はどんどん広がっている。

さて、ではなぜ私が自宅出産したいと思い立ったか・・・。
ずばり、私はセクハラとドクハラ(ドクターハラスメント)の経験があって、家族以外の男性に私の体を触れられたくなかったから!

長男の時も自宅出産をするつもりで、助産師さんや提携病院を探していたが、この時はなかなか心の通じ合う人と出会えなかった。
自宅出産に理解のない女医から診察拒否されたりもした。
自信喪失し、妊婦失格なのかなぁと悶々としたまま三十二週に入ってやっと、今回お世話になった助産師さんに出会えたのだった。
しかし、そこでほっとして、ずっと張りつめていた緊張の糸が切れてしまったのか、突然の出血で入院し、そのまま三十四週で出産。
でも、そこではいろんな病気や障害で入院しているママや赤ちゃんと出会え、未熟児ちゃんの世界や、医療の現場をこの目で知ることができ、長男には感謝してるよ~!
 
今回は、その助産師さんと縁をつないで二年越しの待望の出産だった。
実家の母は自宅出産に大反対だったし、彼の実家にもあえて言わなかった。
父ちゃんの本心も一応聞いてみたところ「もし反対しても、家で産むんでしょ」とのこと。ご名答!さすが父ちゃん、私の性分をよく分かってるわ。アハハ。

今は自宅出産の余韻に浸る間もなく、育児諸々に追われる日々だけど、三人目・四人目!・五人目?はしっかり体力保持して、勉強もして、自分と家族の力を合わせて、究極は海や川辺で産んでみたいなぁ。

では、最後に一言・・・
病院出産も良かったけれど、自宅出産も良かったよ~! (くま)


※ ホメオパシーのレメディ・・・ホメオパシーとは、「病気の原因になるものをほんの少し用いれば、その病気を治すことができる」という考えに基づいた治療法。人がもともと持っている自然治癒力を回復させるのに役立つ。レメディ(薬)は、植物、動物、鉱物の抽出液を希釈したものをラクトースの粒にしみこませたもの。化学合成物質など入っていないため副作用もなく、妊娠中や母乳育児中、子どもにも使える。 
《参考図書》『ホメオパシーセルフケアBOOK』 著者・中村裕恵 新星出版 千五百円(+税)



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