ナ~ニック♪



ある日、我が家にボクサーの仔犬(♀)がやってきた。
名前は《ナニー》
全身茶色でスレンダーなボディ♪
でも、口の周りは黒く、ぷっくりしてとても可愛かった。
庭に大きな《ハウス》が作られて、
フェンスで囲ったお外生活だったけど、ちょっぴり羨ましいスペースだった。

私は、一度《プチ家出》をした。
もう中学生になっていたっけ? 誰も家出をしたことに気づかなかったと思う。
ナニーのハウスで、彼女を抱っこして泣いていた思春期の記憶がある。

やがて、成犬のニック(♂)がやってきた。
胸が広くて真っ白のかっこいい《ボクサー》だった。
でも、何故か私はナニーびいきで…
今思えば、どうしてだったのか?
あんまりニックを抱きしめることはなかった。
それでも時折、自分の心に呵責を感じて抱きしめた。
「ナ~ニック♪」と2匹をあわせて呼んでいた。

ナニーは4回お産をした。
けれど《育てられない症候群》の母親だったらしく
私の母は徹夜で赤ちゃんを取り上げては家へ連れ帰り、哺乳瓶でミルクをあげて育てた。
この時は、かわいさの余りよく手伝った。

お産の度に、夜を徹してお産に立会い、ミーミー(犬だけど‥)と泣く赤ちゃんをタオルで包んで育てたのは母だった。
A)アニー            
B)バニー・バーディー・ブレイニー
C)コニー            
D)ダニー・ドナ         
と暮らした時の古びた写真が今も実家には飾ってある。

今思うに、お散歩は相当大変だったに違いない。
私は気の向いた時しか《散歩》にも行かなかった。(←ひど~)

でも、通りから奥まった出入り口を柵でさえぎって
庭に放してもらっては自由気ままに2匹は暮らしていた。

中学か高校のころ、よく友人が遊びにきたけれど
「あっこんちは、大きな犬が2匹庭に放れていてコワイ!」と言っていたのを思い出す。

ニックが亡くなった秋
学校から帰ると彼は母の育てた菊の花に埋もれていた。

高校の修学旅行で北海道に行った時、大きな地震があり
無事に帰宅するとナニーが亡くなっていた。
庭に咲いていた紫陽花とともに。

私は、母に「旅行の地震から守ってくれたのよ」と言われた。
後に、私が外国を旅行している時に
飼っていた黒猫のレオ君が大怪我をした時も、母は同じ事を言っていた。
「きっと、あっこちゃんの身代わりになって守ってくれたのよ」

どうしても忘れられない、思い出である。

切手切手切手



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