フクイチのトリチウム水を巡る説明・公聴会、日程案が提示
経済産業省・資源エネルギー庁では、「汚染水処理対策委員会」の下部組織として、「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」を設置し、フクイチ(福島第一原発)のALPS処理済み水の最終処分方法・時期に関する議論・検討を2016年11月から続けています。(注・「多核種除去設備等処理水」⇒多核種除去設備[ALPS]によって処理された水。即ち、ALPS処理済み水)会議体を記載した経産省のサイト7月13日に、第9回・小委員会が開催 その小委員会の第9回会合が、7月13日・15時から、経済産業省本館の地下2階大講堂で開かれたので、傍聴してきました。 私は、奇跡的に、仕事の合間を縫って、この小委員会のこれまでの会合は全て傍聴できています。経済産業省の会議は、原子力規制委員会の会議と違って、ユーチューブによる公開は無いので、中味をリアルタイムで把握したければ、傍聴するしかありません。議事録の確定は次回会合になるので、リアルタイムでは追えません。 その第9回・小委員会では、「トリチウム水(ALPS処理済み水)の扱いについて検討状況を説明し、最終処分方法・時期に関して、広く国民の意見を聞くことを目的」として、「説明・公聴会を開く」事が決定され、日程案が提示されました。元々、公聴会を開くことは、5月18日の第8回会合で方向性としては打ち出されていました。 第9回・小委員会の資料から、説明・公聴会の概要と、日程案を、引用します。元の資料はこちら(資料4-1)。====引用、ここから====説明・公聴会の概要目 的:処理水の取扱いに係る検討状況について説明を行うとともに、広く国民の皆様に処分方法や処分した際の懸念等に関する意見を伺う会 場:<福島県富岡会場> 8月30日(木)10時~12時半<福島県郡山会場> 8月31日(金)9時半~12時<東 京 会 場> 8月31日(金)15時半~18時主 催:多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会事務局規 模:意見表明者は10~15名程度(※)、傍聴者50~100名程度を予定※意見表明者は個人区分と団体区分(地方公共団体、業界団体、民間企業等)に分類※意見表明、質疑含めて一人当たり8分程度を想定====引用、ここまで==== 説明用の資料案(資料4-2)も第9回・小委員会で提示されましたが、委員の何人かから、作り方や構成について意見が出されたので、更に作りかえられるものと思われます。 資料一覧は下記。多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会・委員名簿資料1:第8回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会の議事録資料2:原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース資料3:前回の小委員会の振り返りについて資料4-2:多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会説明・公聴会説明資料(案) 傍聴席は一般人より、報道・業界関係者が多いように思われました。おしどりマコケンさんも取材に来ていました。 私は、前回の会議を傍聴していたので、この第9回会合は一つのターニングポイントになると思い、金曜行動や裁判の傍聴を通じて知り合った方達に、「一緒に傍聴しましょう」と呼びかけ、何人か来てくれました。 会議終了後も講堂に残って、小委員会事務局へのぶら下がり取材も途中まで聞いていました。資源エネルギー庁宛に意見送信 私は、処理済み水の海洋排水には反対ですが、当記事では、処分方法・時期に関する私の意見は控えます。 私が何よりも重視しているのは、経産省自身が言っている「広く国民の皆様の意見を伺う」という点です。どのような処分方法を取りにせよ、国民が情報を把握し、国民的な議論をするべきだと考えています。 その観点から、事務局が打ち出した、説明・公聴会を「福島で2回・東京で1回の、計3回」とするという日程は、余りにも少ないと思うので、7月16日の深夜に、資源エネルギー庁の意見募集のフォームを通じて、下記の意見を送りました。ご意見・お問合せ (Opinions and Inquiries)====私の送った意見、ここから==== 日々の業務、お疲れ様です。多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会・第9回会合を傍聴させて頂いた者です。毎回、傍聴させて頂き、有難うございます。 所謂「トリチウム水」の最終処分方法・時期に関する公聴会の開催案について、意見を送ります。「広く国民の意見を聞く」のが目的にしては、第9回会合で提出された案で、開催回数・時期が限定されているのが気になります。以下、要望です。「いわき市、更には福島市で、土日祝祭日の昼間にも開催し、福島県内で少なくとも4回は開催する」「東京でも、少なくとも1回は、土日祝祭日に開催し、最低でも2回は開催する」「仙台市でも、平日と土日祝祭日の昼間に1回ずつ、計2回は開催する」「公聴会は少なくとも100人程度は傍聴できるようにし、ユーチューブも入れてフルオープンとし、録画も永久公開とする」「公聴会に参加できない人や団体の為に、紙やWebでも意見を送れるようにし、パブリックコメントと同様、30日間の応募期間を確保する」。 以上5点です。 現在は、事務局にて開催要領を検討中かと思います。宜しく、ご査収下さい。 尚、この意見は私個人のもので、他の如何なる個人・組織とも関係の無い事をお断りしておきます。====私の送った意見、ここまで==== 私が意見を送ったからと言って、すぐに聞いてくれるとも思えませんが、意見を送らずに諦めてしまえば、「主権者としての不戦敗」ですから、自分の意見は送ります。何故か駆け巡る「誤報」 ここから先は、報道を巡って書きます。 13日の第9回委員会が開催された後、共同通信が「福島第1原発のタンク撤去方針 汚染水浄化後の水処分へ」という記事を流し、私が確認できだけでも、東京新聞を含む複数の新聞(Web含む)に掲載されました。福島第1原発のタンク撤去方針 汚染水浄化後の水処分へ(東京新聞の記事) この記事の中では、「溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しの作業スペースなどを確保するため、トリチウム水を保管しているタンクを将来撤去する方針を了承した。8月に開く公聴会でもこうした方針を説明し、理解を求める。」と書かれています。 こんな方針は了承されていません。 了承されたのはあくまでも「検討状況を説明し、広く国民の意見を伺う為に説明・公聴会を開く」というものです。 リンクを張った説明資料案に書いてあるのは、「このまま、敷地に貯め続けるのは不可能で、今後必要となる他の作業との関係も有るので、トリチウム水を処分する必要がある。処分方法ついて、皆様の意見を伺いたい」という主旨の事です。その資料案ですら、委員から幾つか指摘があって、作り直しは必至です。「タンクを撤去する」だとか「撤去した跡地をどのように使うか」という事は、小委員会としては了承していません。 途中まで聞いていたぶら下がり取材でも、エネ庁の担当者は記者に対して「先ずは公聴会で国民の皆様の声を伺った上で、トリチウム水の扱いについて更に検討を進めていく」ということを説明していました。 共同通信の記事は、説明資料案を「確定した内容」と誤読して書いているか、何らかのリークを通じて、エネ庁が書かせているか、どちらかだと思います。自分で取材せず、共同通信の配信記事を載せている他の新聞も無責任です。 私も、経産省の本音は海洋排水であり、敷地内のタンクを撤去して、見た目にも「スッキリした敷地にしたい」という事だと思います。小委員会の議論が、本音を隠しての議論であろうとも思っています。 だからと言って、共同通信の記事のように、会議で決定していない事を書いてはいけません。 経産省の側から、「幅広く国民の意見を伺いたい」と言っているのです。公聴会の案内のWebサイトは、まだ立ち上がっていませんが、この機会は利活用しましょう。又、日本の主権者なら、トリチウム水の扱いに関して意見を送るのは当然です。国民の義務としても、送りましょう。 当ブログでも、今後、ALPS処理済み水を巡る記事を増やしていく予定です。春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)