福島第一の危うい「管理」
2019年12月にも、現地の規制事務所から廃炉推進カンパニーへ指摘事項 当ブログでは、原子力規制委員会が指摘している、フクイチでの管理体制について、何度か取り上げてきました。(過去記事へのリンク)●フクイチの現状報告と、東電側の見解(2019年12月19日の記事)●【緊急アップ】1月16日の原子力規制委員会・臨時会を傍聴して(2020年1月18日の記事) 1月16日には、原子力規制委員会臨時会として、東京電力HDの小早川社長と原子力規制委員の意見交換が行われ、20年度からは、「フクイチの社員を増員すること」「日常業務との兼職は出来るだけ避けてプロジェクトの対応に専念できるような態勢にすること」などが、小早川社長から説明されました。 規制委員会は、その説明を受け入れましたが、この意見交換の前、昨年(2019年)12月16日の第77回「監視・評価検討会」の最後に、現場の状況に関して、これまでで最も深刻と思われる指摘が、福島第一原子力規制事務所の小林所長からなされました。 12月の指摘事項は、1月の臨時会では取り上げられませんでしたが、現場の状況が相当深刻であることを示す指摘と思われるので、議事録をコピペして紹介します。 傍聴した時に小林所長の指摘を聞いて「これはヤバいな。ブログ等で紹介しなければ」と思いました。1月の臨時会の前に掲載すべきでしたが、議事録がなかなかアップされなかった事と、私自身が多忙だったこともあり、落ち着いて記事を書く時間が取れず、紹介が遅くなりました。 過去の一連の記事と合わせて読んで下されば幸いです。 引用の中には、適宜、関連資料のリンクも貼っています。尚、漢字表記や段落などは、読み易さの為に改めています。(リンク)●第77回 特定原子力施設監視・評価検討会●同議事録(関連部分は58~61頁)●会議の動画(該当部分は2時間42分20秒~)====議事録引用、ここから====○伴委員 他にございますでしょうか。よろしいですか。 そうしたら、ちょっと最後になりますけれども、最近頻発しています、福島第一原子力発電所における不適合に関して、ちょっと指摘事項がありますので、小林所長からお願いします。○小林所長 福島第一原子力規制事務所の小林です。 私のほうから2点申し上げたいと思います。11月18日に安全、品質総点検が行われた後に確認した事象です。 まず、1点目なんですけれども、10月31日に構内トラックでの喫煙事象が起こったということで、東京電力のほうでも不適合に上げて、それで是正措置を取られている中で気づいた点です。(春橋注:東京電力が規制庁に提出した資料と、面談議事録へのリンク)●車両内喫煙事象の再発防止対策について(2019年12月5日)●福島第一原子力発電所における車両内喫煙事象の再発防止対策に係る面談 その中で三つありまして、一つは防護指示書が出ていないということで、確認を行う為、我々ヒアリング等をしていました。背景には、12月6日までに是正措置計画が出る予定のところ遅れているということもありまして、詳細をヒアリングした中でわかったんですけれども、これ、下請け会社が作業するときに、本来であれば、東電の主管部署に提出して確認をもらうところ、斜線を引いて確認を行っていない。 一方で、作業の管理番号を書く欄があるんですね。WIDと呼んでいる、そこには別作業のものが書いてあるというところ、これは聞き取って初めて分かりました。これにつきましては東京電力も認識していまして、他にそういうことがないか、今、聞き取りを実施していると承知しております。 2点目は、持ち出し物品の確認申請書、これは管理区域から物を外に出すときに汚染がないかどうか確認する為の申請書なんですけれども、これを協力会社が提出するときに、協力会社が主管部署の名前を書いていて。ところが、聞き取りますと、その主管部署の人は自分は知らないということなんですね。これがなぜ分かったかというと、喫煙事象が起こったときに、その部署に問い合わせが行って、自分が知らないところで、これが上に上がっていってしまっていると。この紙がどうなるかというと、最後、東京電力の安全グループのほうで確認するということで、結果として、汚染はない物品なんですけれども、そういう紙が、当該主管部署が知らないときに回って、結果的にこれをもとに搬出がされているということです。 最後は、物品の搬入・搬出票というもので、これは我々規制事務所が指摘して、東京電力が気づいた点です。これは、1F(春橋注:イチエフ/「福島第一原発」の意味)の構内から構外へ搬出するときには、必ず搬出品の、物品の持出票をつくる必要があるんですね、主管部署が。それはどうなっていますかと聞きましたら、作ってありませんでした。ということで、これは新たに東京電力が不適合の起票をするということになっております。 これは、たまたま喫煙事象から発覚した事象なんですけれども、我々、よく聞き取りますと、システムとして主管部署を通り抜けて、こういう物品持ち出しができるような形というのが、今、存在しているということで、これは東京電力も、最後の物品持ち出しのところは意識していなかったようですけれども、30社に対して、今、聞き取りを実施しているというところを承知しております。 それで、これは、組織として、やはり、そういうところの管理対象区域の広い場所に目が行き届いてない状況事例として、私どもも重く受け止めております。福島第一は、構内全てが、今、すべからく管理対象区域となって、作業員が多くの作業を行っておりますので、ぜひ、組織として目を行き届かせる必要がありますので、なぜこういうことが起こったかというところを、ちょっと見解を正したいと思っております。 2点目は、ドローンが3号の原子炉建屋のオペフロ(上のカバー)にぶつかって墜落したという事象、色んな操作の難しさはあると承知していますけれども、聞き取りましたら2点の問題点がありました。(春橋注:東京電力のリリースへのリンク)●福島第一原子力発電所 発電所構内における調査用ドローンの落下について(2019年12月5日) 一つは、これ、無人で飛ばしているドローンなんですが、そもそも10mの誤差がある中で、よく聞きますと、飛行経路が3号のカバーに、元々10mの誤差を考えると、ぶつかる経路が設定されていたということなんですね。 それから、ドローンの中には、4方向にセンサーがあって、ぶつかり始めると自動で逃げるドローンもいるんですが、今回使ったのはそうじゃなくて前方にしかセンサーがないということで、補助操作員の、東京電力の補助操作員の方は、ぶつかりそうなんだけれども、自動で逃げるだろうと思っていたらぶつかってしまったということです。 それで、聞き取りをしましたところ、操作の為のガイドというのが、まだ確りできてないということで、12月9日ですか、東京電力も承知していますけれども、出たんですが、それは所内の検討でも十分でないということで、一度、1Fの状況を踏まえてということを検討していると承知していますけれども。 これも、一方で、先ほど、小野CDOからありましたプロジェクト体制の中で、この調査がどのプロジェクトに属していますかと聞きましたところ、分かりませんということなんですね。ですから、今後、やはりプロジェクトプログラムの中で、組織として事前の安全確認ということも含めて、確り行って頂きたいと思います。調査は必要ですし、難しい操作だと思いますけれども、事前に安全確認で、確認できるところは確り行って頂きたいと思っております。 以上の2点です。やはり、作業に対する組織として目が行き届いていないという事象について、御報告させて頂きました。 以上です。○小野(東電) 東京電力の小野でございます。御指摘頂いたこと、真摯に受け止めて、早急に対応を検討して参りたいと思います。 ただ、こういう監視・評価検討会の場で、個別具体的な対策とかいう議論ではないと思っていますので、そこら辺は、また別途、現場のほうで御説明を申し上げたいと思いますが、何れにしても、これは普段から伴先生、いろいろ御指導頂いているところでございますけれども、やはり検討に当たっては、表面的な見方にとどまらないで、より深いところまできちんと押さえて、根っこに何があるのかという問題をきちんと把握しながら、我々は進めて参りたいという風に思ってございます。 よろしくお願いいたします。 以上でございます。○伴委員 有難うございました。 いかがでしょうか。よろしいですか。 では、指摘のあった事項については、今後、明確な説明をお願いいたします。====議事録引用、ここまで==== 小林所長からの指摘事項の引用は、以上の通りです。20年度になれば改善されるのか 放射線管理区域であるにも関わらず、東電の管理部門が知らないまま、持ち出しに関する書類が作成されていたとか、管理部門が把握せずに物品が持ち出されている可能性が有るとか、どうなっているのでしょう。 ドローンの件についても、経路設定の誤り・思い込み・未成熟な操作ガイド等、管理が出来ていない証左です。 規制委員会臨時会での小早川社長の説明によると、東電は、日常業務との兼職を避ける方向で社員を増員し、プロジェクトに専念できるようにすると説明していましたが、それで、基本的な管理が出来ていない状況が改善されるのでしょうか? ある程度の改善はできるかも知れませんが、根本的なところは改まらないような気がします。 何れにしても、2020年度の体制変更後の様子を見なければなりません。それまでに人為ミス・確認不足による「ビックリするようなこと」が起こらないことを願うばかりです。春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)