「フクイチ事故の調査分析に関する中間取りまとめ(2024年版)案」のパブコメに意見を提出
※2024/6/23追記し、文章を一部変更 本件パブコメの募集期間:2024年4月25日~5月25日(原子力規制委員会) 提出意見:7件(無関係のもの2件を含む)(リンク)結果公表・資料/2024年6月19日 原子力規制委員会は、2023年以降、フクイチ(東京電力・福島第一原子力発電所)事故の調査・分析に関する中間とりまとめを、毎年、公表しています。「2024年版・報告書案」について任意のパブリックコメントが実施されたので、5月21日の夕方に提出しました。(リンク/関連資料)●東京電力福島第一原子力発電所事故の調査・分析に係る中間取りまとめ(2024年版)(案)「中間とりまとめ(2024年版)(案)」は全体で251頁ですが、略語集などを除くと報告書本文は44頁程度です。 私は、パブリックコメントは選挙と同じで、提出することが最優先と考えているので、「書くべき内容に迷ったら、最低限の意志表示で済ませる」ことにしています。「理屈で棄権(未提出)より、不器用でも投票(提出)」です。「パブリックコメントって何?」という方は、下記リンクをご覧下さい。(リンク/吉良よし子参議院議員事務所での、2022年1月14日の総務省レクに基づく)●パブリックコメント(意見公募手続き)とは?~総務省からのレク~ 以下、私が提出した意見です(個人情報は略)。====提出した意見、ここから==== 原子炉建屋に立ち入ることも厭わず、被曝しながら調査を継続して下さっていることに感謝と敬意を申し上げます。その上で、個別の項目と全体について、何点か意見を記載致します。●第一章第三節「事故初期における原子炉建屋外での高線量率」は、周辺環境や人体への被曝の影響を把握するのに重要と考えます。特に別添2ー5には注目しました。3月12日の1号建屋からの放出量のピーク時間帯が、現時点での想定よりも前倒しになるかも知れないとの指摘は重要です。更なる検討の深堀を期待します。●第二章「1号機原子炉格納容器ペデスタルで確認されたコンクリート損傷」の原子炉格納容器下部の破損のメカニズムについては、コンクリートが融解して鉄筋だけが残るという「都合の良い」破損がどのように生じたのか。他号機の原子炉格納容器の破損状況を推定するのにも役に立つかも知れません。阪大のコンクリート加熱実験の結果などは興味深く拝見しました。更なる調査を期待します。●第三章「水素爆発事象の解明」では、フランスのチームとの共同研究、アスファルト防水材の燃焼の可能性など、検証は続くと期待しています。 尚、本文45頁の文章「燃焼してしまったのでは無いかという指摘もあるが」について。「無い」の漢字表記は、平仮名表記の間違いではないでしょうか。●資料の構成 1号機・ICの挙動や動作訓練に関する項目が見当たりません。調査は継続中という理解で良いのでしょうか。「1号機・IC」の件は一例ですが、本文・参考・別添に記載されていない項目で調査継続中のものがあるのかどうか、一読しただけでは分かりません。 2023年版報告書には「参考9」として「福島第一原子力発電所の事故分析に関する調査・分析項目の整理」と題する資料が付いていました。調査分析の全体像を把握する上で便利でしたので、今からでも追加して下さい。 又、今後、事故分析の中間とりまとめを作成する際には、その時点での進捗を反映したものを必ず付けて下さい。●事故調査の目的・考え方・進め方(主として「参考2」)について 事故調査の目的等は、原子力規制委員会が2023年(令和5年)3月29日に決定したものに基づいているものと思いますが、この内容は幅が狭く、決定の仕方も一方的です。 先ず、内容(調査対象)について述べます。「現場から得られる最新情報云々」はともかく、「事故当時から現在までに実際に起こった事象の内、安全上重要と考えられるものについて」に異議があります。 どうして「事故当時から」と限定されているでしょうか。事故以前の決定や工事が調査対象に含まれないのは何故でしょうか。 又「安全上重要と考えられるもの」と内容を限定しているのも何故でしょうか。決定された文書には「安全上重要」の定義が書かれておらず、しかも、どの組織が「安全上重要と考え」るのか、主語もプロセスも不明です。これでは、調査対象が原子力規制委員会によって恣意的に決定される恐れが無いとは言えません(後段の「検討会」が「安全上重要と考える場」かも知れませんが、「検討会で考える」とは記載されていません)。 現在の事故調査の対象は、発災後のオンサイト、特に、プラントの変化・破壊や放射性物質の挙動に限定されています。大規模な事故・災害であるほど、必ず、そこに至るまでの経緯があります。事故後も、多くの個人・組織が多くの決定に関わり、又、その決定によって影響を受けます(一例として、「避難範囲の決定」や「実際の避難行動」)。 福島第一原子力発電所が立地していた条件や、発災までに東京電力が行っていた安全対策、規制行政の対応や決定のプロセスなど、調査対象の時間軸を発災前まで拡大し、オフサイトの避難計画や実際の避難行動、自治体の対応なども含めて、幅広く調査対象にすべきです。 取り分け、避難計画の策定を含む、発災前までの原子力規制行政の決定とそのプロセスについては、フクイチ事故の反省を踏まえて発足した原子力規制委員会だからこそ、厳しく調査すべきでしょう。 次に、決定の仕方について。 そもそも、事故調査は、誰の為に、何の為に行うものでしょうか。原子力規制委員会が「このように進める」と一方的に決定して良いものでしょうか。 事故(核災害)の影響を受けた人達は少なくとも数十万人だろうと思われます。国策を進めた末に起きた事故(核災害)であり、それによって多くの人達が被害を受け、二度と発災前の暮らしを取り戻せなくなった人もいるのです。 行政には、原発利活用という国策を進めてきたことに向き合う責任があるでしょう。そして、原子力規制委員会・規制庁は公務員であり、全体の奉仕者です。これらの原理原則から考えるなら、事故調査は、先ずは被害者の為、そして、国民全体の為にあるべきではないでしょうか。 被害者を含む国民(主権者)が、何を調査して欲しいと考えているのか、どのような点を「重要な未解明部分」と考えているのか、被害者や国民が「事故調査に望むこと」を、原子力規制委員会は直接聞くべきです。 公聴会か、或いはそれに近い意見聴取会を全国各地で複数回実施し、寄せられた意見を基に、事故調査の対象や時間軸を決めるべきではないでしょうか。 事故調査は、被害者を含む国民(主権者)のものであり、全体の奉仕者たる公務員(原子力規制委員会・規制庁)が、一方的に事故調査の目的や対象を決めたことには国民の一人として承服できません。 令和5年3月29日決定は白紙に戻し、事故調査・分析の目的・対象は、被害者を含む国民の声を聴くことから再検討すべきです。 三点目です。「毎年経過報告として中間とりまとめを行う」事は良い意味で評価できます。 以上の意見は、私個人のものであり、他の如何なる組織・個人とも関係の無いことを断りしておきます。====意見、ここまで====↓ 提出時の画面↓ 2024年案の「参考2」のスクリーンショット(資料全体をダウンロードして閲覧すると、手間なので、この部分のみスクショ)春橋哲史 (Xアカウント:haruhasiSF)